その日、俺はオカルト部部室へ駆け込んだ。 「先輩〜っ! 先輩の力を貸してくれっ!」 そう、他ならぬ来栖川先輩に用があったのだっ! 「・・・」 「落ち着いて? あ、ああ・・・ごめんな、少し取り乱しちまった」 俺が息を整えるのを見計らって、先輩は切り出した。 「・・・」 「何かあったのか? い、いや、実は先輩の魔法の力を貸して欲しいんだ!」 「?」 首をかしげる先輩に、俺は事情を説明した。 「先輩の力で、委員長を関西人じゃなくして欲しいんだ!」 これには、さすがの先輩も驚いたようだ。 ほんの少しだけ、目を見開く先輩に、俺は続けた。 「詳しい事は、この図を見て欲しい!」 俺は、かばんからノートを取り出して、先輩の前に広げた。 数学のノートだ。 「今日の授業中に、突然ひらめいたのさ!」 委員長(道頓堀)→ 保科智子(忠犬ハチ公前広場) 「どうだ?」 「・・・」 先輩は、逡巡すると・・・やがて小さくうなずいた。 「・・・」 「え? 今日の晩に早速実行する? サンキュ先輩!」 「・・・」 「食い倒れ人形のキーホルダーと、東京タワーのペナントを用意して下さい? わかった! それくらい、お安い御用だぜ!」 快く承諾してくれた先輩に、心から感謝して、俺は部室を飛び出した! 嬉しい! めちゃくちゃ嬉しいぜ! 委員長が、関西人じゃなくなるなんてっ! 次の日・・・ 珍しく早起きした俺は、教室に一番乗りした。 「・・・」 ドキドキしながら委員長の到着を待つ。 早く来ないかな・・・ その時だ! ガララララッ・・・ 静かな教室に、ドアを開く音が響く。 入ってきたのは・・・ 「あれ、藤田君?」 委員長! いや、まだ喜ぶな、藤田浩之・・・まだ、関西人かもしれないぞ!? 教室に入ってきた委員長は、俺の隣の席に腰を下ろすと、薄く、クールに微笑 んだ。 「どうしたの? いつもは遅刻常習犯の藤田君が、一番に教室にいるなんて・・・」 お、おおっ!? 「ねぇ、どういう風の吹き回しなの?」 「い、委員長っ!」 「?」 「口調が・・・口調がぁっ!」 「え? 口調って? 私、なにか変かな?」 やった! これで・・・これで・・・ 「そうだ、藤田君は野球って好き?」 これで、委員長は関西人じゃなくなり・・・ 「私、めっちゃ阪神タイガースのファンやねん」 失敗だぁーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!!!