イタい、いろんな意味で・・・ 投稿者: MIO
 夕暮れの街を歩いていると、見知った顔を見つけた。
 瑠璃子さん、沙織ちゃん、瑞穂ちゃんの三人娘だ。
 三人は、仲良く三人並んで歩いていた。
「これは結構、珍しい光景かもしれないぞ」
 僕は、早速声をかける事にした。
「お〜い! 瑠璃子さん! 沙織ちゃん! 瑞穂ちゃん!」
 僕が名前を呼ぶと、三人はくるりと振り返った。
 正確に言うなら、横一列に並んでいた三人が、瑠璃子さんを軸に、グルリと回
転してから、こちらを向いたのだ。
 なんだか、とても奇妙な動きだった。
「あっ、祐君だ! お〜い!」
 沙織ちゃんが、元気に手を振った。
 そして、三人並んで駆け寄ってくる。
 三人が近づくに連れ、僕は、奇妙な事に気づいた。
 串・・・
 それは串だ。
「長瀬ちゃん、こんにちわ」
「あ、ああ・・・こんにちわ」
 瑠璃子さんは相変わらずだ。
 彼女がいると、どんな異常も正常に思えてくる。
 まさに瑠璃子マジック。
「あのね、あたしたち、三人でカラオケ行ってきたんだ!」
 沙織ちゃんの言葉に、僕は少し引っかかるものを感じた・・・
「カラオケ? 何を歌ったの?」
「もう! 見れば分かるでしょ! 今大ヒットのアレだよ!」
 今大ヒット・・・
 見れば分かる・・・
 見ると、三人娘の頭を、巨大な『串』が貫通している。
「あ、ああ・・・あの曲ね」
「うん! あの曲!」
 いや、それはいいんだけど・・・
「その串・・・」
「ああ、これ? 気分を盛り上げようと思って!」
「痛くないの?」
 僕の質問に、沙織ちゃんはケラケラと笑った。
「あははは、そんなワケないよ!」
「でも・・・」
 そう、でも・・・

「血が、出てるよ・・・」
 
 瑠璃子さんも、沙織ちゃんも、瑞穂ちゃんも・・・・真っ赤だ。
「へーきへーき!」
「で、でも! 瑞穂ちゃんがぐったり―――」
「あぁ、みずピーは真面目だから・・・」
 真面目!? 
 真面目に串を刺したって事!?
「あ、あのっ! 病院に行った方が・・・!」
「ばいばい、長瀬ちゃん」
 えっ!?
「ばいばいって・・・」
 困惑する僕をよそに、瑠璃子さんは僕に手を振って歩き出した。
「それじゃ、また明日!」
 当然、沙織ちゃんも、歩き出す。
「・・・」
 真ん中にいる瑞穂ちゃんは、二人にズルズルと引きずられていった。
 ・・・
 夕焼けが、とても赤い。
 僕の頭の中で、『あの曲』が流れ出す。
「串・・・」

 なぜか、ちょっとうらやましかった。

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 キンキより強い、団子三兄弟。
 SPEEDを阻止する、団子三兄弟。
 その串に刺さった姿に、私は軽い爽快感を覚える。
 がんばれ・・・