はるかな海賊 投稿者: MIO
 前世で・・・俺とはるかは、海賊船の船長と、その部下だった・・・

 うちのハルカ船長は、七つの海に名をはせた、伝説の海賊だ。
 だが・・・これが、どうやっても小娘にしか見えない。
 しかも、いつもボーッとしている。
 その瞳は、目の前に広がる大海原ではなく、ネバーランドを見つめている。
 部下としては、恐ろしく不安な気持ちになる。
 船長よりは、船長の肩にとまっているオウムの方が信頼できる。
 ちなみに、オウムの名前はトーヤと言う。
 なぜ・・・
 なぜ俺の名前をオウムに付ける。

「ハルカ船長、本当に宝があるんでしょうね」
「宝?」
 船長が首をかしげた 
「『宝?』じゃないでしょーがっ!」
 俺は、わざわざ船長の真似をしてから、怒鳴った。
「どこぞの貴族が隠した、秘密の財宝を探すんでしょ!」
「そうだっけ?」
「あのなぁっ!!! 宝捜しじゃないなら、なにしにココまできたんだよっ!」
「泳ぎに」
「沖合い300キロまで、わざわざ泳ぎに来るかっ!」
「じゃ、何しに来たの?」
「だから、宝捜しじゃぁっ!!!!!!!」
 ハァ、ハァ・・・
「ん、宝捜し?」
「そうっ! 宝捜し!」
「んー・・・あるの?」
「知るかっ!」
「じゃあ帰ろう」
「なんでだよっ! 船長が宝捜しに行きたいって言うから、こうやってここまで来
たんでしょうがっ!」
「そうだっけ?」
「そうなのっ!」
「宝はドコ?」
「・・・知ってりゃ苦労しないんだっ!」
「ん、ここに宝の地図が・・・」
「あるんならとっと出せよっ! なんなんだよっ! いままで西へ行けとか、東へ行けとか・・・適当だったのか!!!?」
「違う」
 ・・・やけにキッパリ否定するな。

「実は、当てずっぽうでした」

「それを適当というのだっ!!!」
「そうなの? ふうん・・・メモメモ」
「ええいっ! メモるなぁっ!!!」
 つ、疲れるよぉっ! 
 港に残してきた恋人に会いたいよぉっ!
 こんなことなら、あの白髪の紳士についていくなと、クギをさしておくんだっ
た!!
「ん・・・地図に暗号が書いてある」
「暗号だって?」
 本格的だな・・・
 もしかして、本当に、本物の宝なのか?
「ハルカ船長! 一体、どんな暗号が?」
「ん、『S』とか『W』とか『N』とか・・・」
「そりゃ方角だっ!!!」
「あれ?」
「あれ? じゃないだろっ! ちゃんとやってくれよっ!」
「やってる」
「ウソ言うなっ! 頼むから、ちゃんと指示してくれぇっ!!!!!」
「指示? んー・・・」
 船長はしばらく逡巡すると・・・
「指で示す」
 ぴっ、と北を指差した。
「あのなぁ・・・」
「?」
「だいたい! その方角で合ってるのか!?」
「ん」
 本当かよ・・・
「で?」
「ん?」
「だからさ、距離だよっ! どれくらい進めばいいんだっ!?」
「北に三百歩」
「歩数で言うなっ!」
 ここは海だぞっ!
「おおよその目分量で三百歩」
「だから、歩数で言うなというのだぁーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「んじゃ、馬車で1分の距離・・・」
「だから! ・・・あれ? 近いじゃん」
「ん」
「なんもないぞ!」
「・・・海がある」
「当たり前だ!」
「そして、夢と希望が・・・」
「いやだっ! そんなまとめ方は嫌だぁっ!!!」
「あははははははは」
「何がおかしい!?」
「これ、海図じゃなくて、地図」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「う、うがぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 一ヶ月後・・・

 おれたちは、ジャングルを進んでいた・・・
「ハルカ隊長っ! 本当にこっちでいいでしょうねっ!?」
「ん」
「本当に!?」
「左へ1歩進み、後ろへ1歩進み、右へ1歩進んだら前へ一歩」
「元の場所じゃないかっ!!!!」
「ボックス」
「うああああああああああああああああああああああああああっ!!!?」


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 それは、決して良い事ではないけれど。
 人によっては、人生に船長が必要なんだ。
 もし君が、船長を必要とするならば、

 紹介しよう、彼女のような船長を・・・