綾香は、隣に座っているセリオを、ちらりと見た。
「・・・」
セリオは、じぃっ・・・と黙って座っている。
それはもう、ピクリとも動かず、まるで彫像のようだった。
セリオは、やる事がないと何もしない。
本当に何もしない。
下手をすると、思考すら止めているのではないだろうか?
「・・・」
綾香は、なんだか恐くなった。
「ね、ねぇセリオ?」
「・・・なんでしょうか?」
妙な時間差で、セリオが反応する。
本当に止まってやがったのか・・・
「・・・・」
「何かご用でしょうか?」
用?
そこで綾香はハッとする、彼女の方こそ何も考えてなかった。
「あーっと、えーっと、その・・・ホラ」
「?」
「...1999年の7月に人類が滅亡するって、本当かしら?」
(もうっ! 何言ってるの、私はっ!?)
綾香の混乱をよそに、セリオはまじめに考え、まじめに返答した。
「私には・・・分かりかねますが?」
「そう・・・」
「詳細なデータを御所望ですか?」
「あっ・・いや、いいのよ。気にしないでね」
「はぁ」
セリオは首を傾げたものの、それ以上何も言おうとしない。
その沈黙がいやで、あやかは話を無理に続けた。
「なんか・・・」
「はい?」
「なんか・・・人類が滅亡しても、あなたたちメイドロボは生き残って、それで、
メイドロボだけの国を作ったりして・・・」
「なにかのSFですか?」
「空想よ、ただの空想」
「・・・」
「でもさ、そういうことって、ありそうじゃない? 人類の代わりに、メイドロボ
が・・・」
「それは・・・ないと思いますが」
セリオは、やけにキッパリと言った。
「どうしてそう思うの?」
「人類が滅亡すると言う事は、綾香お嬢様も、芹香お嬢様も、セバスチャンさんも、藤田浩之さんも・・・みんな死んでしまうという事です」
「そうだけど・・・それが?」
「だから・・・」
セリオは、珍しく逡巡して、それから遠くを見た。
「ウサギは・・・寂しいと死ぬそうです」
「は?」
綾香にはさっぱりだった。
「だから、そうなんです」
セリオは、さも当たり前のように言う。
「だから、どうなのよ」
綾香には、やっぱりわからない。
「死ぬんです」
「私たちがよね?」
「違います、そういう事ではなくて・・・」
「へ? だからどういうこと?」
「・・・・もう、いいです」
セリオ内の綾香ポイント、−10
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
引越し準備だ、大変だぁ〜