その日の俺は、バイトもなくて、暇だったので、公園を散歩していた。 そよそよと吹く風は、まだ少しつめたいものの、春のにおいを・・・ 「ん、冬弥発見」 背後からかけられた声は・・・あんまり合いたくないヤツの声だった。 そいつの名は・・・ 「・・・はるか」 「おおっ?」 「なんだよ・・・」 「なぜ私の名前を知っている?」 「・・・」 こういうやつだ・・・こいつは! 「あのなぁ・・・曲がりなりにも幼なじみじゃないかっ!」 「そうだっけ?」 「そうだよっ!」 「ああ」 はるかはポンと手を叩いた。 「両親をベトナム戦争で亡くしたんだよね」 「誰がじゃっ!」 「だから床村くん・・・」 「誰だそれはっ!」 「じゃ、冬弥の両親がベトナムで・・・」 「俺の両親は健在だ!」 「ん? じゃあ、これから亡くなる?」 「なにげに失礼なヤツだな! 両親はピンピンしてるよ! それにベトナム戦争はもう終わった!」 「へぇ」 「んだよ、そのあっさりとした返答はよっ!」 「ん、どうでもいい」 「俺だってそうだ!」 なんで、こんな話をしなきゃ・・・ 「さ、行こ」 「どこへだよっ!?」 「墓」 「はか?」 「兄さんの・・・」 「な、何で俺がいかなきゃならないんだ・・・」 「冬弥・・・兄さんに好かれてる」 「俺が好かれてた? そこまで親しくしたつもりは・・・」 「ん、生前ではなくて・・・」 「生前じゃない?」 というと・・・ 「ん、現在進行形」 「う、うわぁぁぁぁぁっ!?」 「良かったね」 「良かないわっ!」 「冬弥・・・肩重くない?」 「そう言えば最近・・・って、これって霊障か!?」 「れいしょー」 「ええいっ! ふざけてる場合か!」 「あはははははははははははは」 「い、いきなり笑うなようっ!」 「恐い? 恐い?」 「めちゃくちゃ恐いわっ!」 「あはははははははははははは」 「その読経のように単調な笑いは、何とかならんのかっ!?」 「ん」 ならんらしい・・・ 「あはははははははははははは」 「ああぁっ! その鼓膜にこびりつくような声っ!」 「・・・兄さん?」 「俺の後ろに向かって話し掛けるなっ!」 「だって、兄さんが・・・」 「あーーーーっ! あーーーーーっ! 聞こえないいいっ!」 「墓参りは?」 「嫌だ! 今は絶対に嫌だぁっ!」 「ん、じゃあ、行かない」 「ほ、本当か!?」 やった! よかった! 助かった・・・ 「ん、行く必要が無い」 「? それはどういう・・・」 「本人がここにいるから」 『冬弥くん、妹をよろしく・・・』 「う、うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 思い出してみると、アンドロイドアナは、地方とか関係ないんだった。 こいつは春からうっかりだ! テヘッ!