そろそろ次のを作ろうか? 投稿者:MIO
 集まった開発室のメンバーを眺めて、長瀬は満足げに頷いた。
「え〜・・・と、いうわけで」
「質問!」
 いきなり手を挙げた男を見て・・・長瀬は不満気に唇を歪める。
 こっちがいろいろ、これから、なんか、かっこよく演説をぶとうというのに、いきなり、なにを意見するのだ、若造め。
 若はげのくせに
 と、長瀬は思った。
「なにかな?」
 できるだけ優しく聞いた。
「というわけで・・・なんて言われても、よくわかりません」
「いちいち説明しても、行数が無駄でしょうが」
「ああ」
 なるほど、と若はげは頷いた。
「というわけで」
「どういうわけで?」
 今度は、あからさまに無視した。
 ほとんど小学生のそれだが、誰もそのことに気づいてない。
 思ったのだが、大人に少年法を適用するというのはどうだろうか?
 ダメだろうか?
 ダメか・・・そうか・・・
「・・・え〜、本日は、そろそろ、次のメイドロボを作ろうかなって話です」
「DC作っても結局PSに止めを刺されそうな感じですが」
「何の話ですか?」
「さぁ?」
「・・・・それでですね、今度はどんなメイドロボ作りたいか、開発室の皆さんに、意見を聞きたいと・・・」
「そういうのは、上が決めるんじゃないですか?」
「はぁ、まず技術屋の意見を聞きたいというのが、方針みたいですが」
「マルチのパターンっすね」
「ありゃ楽しかったな。久しぶりに、楽しい仕事だった」
「好き勝手やってましたもんね」
「角付けようとか言ったヤツがいただろ? たしか」
「あ、それ俺・・・だって、かっこいいじゃん」
「空気抵抗がなぁ」
「いいんだよ、マルチは遅いんだから」
 なんだ、この緊張感のない雰囲気は。
 ダレてるな。
 利益を追求する会社なんだぞ?
 まあいいか・・・
 しかし、放っておくと、町内会の寄り合いと同じノリになってしまう。
 あれか、きたむらさんのところのむすめは、えらいあしがはやかじゃなかね、なんね、あれはたべとるもんのちがうと
ね、なんばたべさせよっとね、にくね、ごはんね、なんね、まあよか、うちのむすこは、うんどうがぜんぜんだめたい
 ほっとけ、バカ
「セリオは、完璧主義のクールなメイドロボ。マルチはドジで一生懸命なロボット三等兵」
 ふぅ・・・
「じゃ、次は?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あの・・・」
 若はげめっ!
「なにかな?」
「自分は、セリオに一晩中叱られていたいです」
 聞いてねえよ。
「あ、でも俺、メイドロボに叱られてるぞ」
「叱られたことあるのか!?」
「うん、個人的に改造とかしてる」
「違法だぞ」
「だって、普通のメイドロボって、人間叱らないJAN」
「うん・・・で? どんな風に叱ってくれるんだ?」
「あなたって、どうしてそうなの? とか、もっとしっかりしないと! とか、きちんとしないと、あとでこまりますよ! 
とか・・・」
「あ、いいな、それ」
「それでな、必ず最後に、もう、わたしがいないとダメなんだから・・・って言うんだ」
 おお・・・
 ざわめきが起こった。
「それ、一応候補な!」
 長瀬は、興奮しながらホワイトボードに『しかってくれる』とかいた。
 漢字は使わなかった。
「砕けた性格のセリオってのはどうスか?」
「それ、絶対途中で飽きるぜ、あたりまえになるよ」
「じゃあ、時々笑うセリオ」
「!!」
「時々微笑むセリオとか」
「それいただき! よし、セリオの変形ってことで、後で煮詰めよう・・・」
 『せりおのへんけい』
 カタカナも使わんのか・・・
「じゃ、マルチの変形でドジだけど努力家じゃないとか」
「なんの役にも立たないじゃないか」
「ドジだけど高飛車とか」
「んなもん、誰が喜ぶ」
「M」
「マジで答えるなよ」
「じゃあドジじゃないマルチ」
「誰も喜ばんぞ」
「そうですかね?」
「一生懸命な だけ のマルチ」
「微妙だな」
「努力するけど、実を結ばないという・・・」
「結構いいけど、売り物としてはどうだろう?」
「じゃあ、努力が必ず実を結んで、どんどん偉くなって、最終的にはドジとか全然しなくなって、んで、俺がドジすると
あなたはいっつもそう、とか言うんだ! 最初は俺に頼ってたくせに、結婚したとたんこれだ! ちくしょう、詐欺じゃ
ないかっ!」
「泣くなよ」  
 なんかあったらしい・・・
「まぁいい、他に意見は?」
 すると、若はげが再び手を挙げた。
「はい、君」
「あの、メイドロボの性格云々よりも、もっと機能面を重視した方がいいんじゃないでしょうか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「なぁ、君」
「は、はい」

「もっとボケようよ・・・」

 ボケてどうする。


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 なんか、影響受けてるな・・・
 誰の?
 秘密・・・