よく食べる子供は、元気っ子! 投稿者: MIO
 沙織ちゃんは、テスト前でバレーの練習がお休み。
 瑞穂ちゃんも、今日は、生徒会のお仕事がない。
 太田さんも、今日は暇らしい。
 瑠璃子さんは・・・、まぁ、いつもどおり。

 ってワケで、珍しく人五人ろった僕たちは、一緒に下校することにした。
 楽しい会話が続き、話題は、好きな食べ物の話になった。
 話題をふられた沙織ちゃんは、元気に言った。

「あたしはね、ぎゅーどん!」
 そ、そりゃまたパワフルな・・・
「あの香り、歯ごたえ、ボリューム・・・ああ、よだれがでちゃう」
 そう言った沙織ちゃんは、本当に口元をぬぐった。
「やだっ、ホントによだれ出てるのっ!?」
 太田さんが、ぱっと飛びのく。
「エンガチョ!」
 そこまでしなくても・・・
 相変わらず、容赦のない人だ。
 手加減とか、思いやりとか、そういうのとは無縁で生きてる人だよなぁ・・・
 太田さんは、言葉をオブラートに包もうともしない、痛快な女の子だ。
 この間も
『ホント、長瀬君って根暗よね。なんか感染しそう・・・エンガチョ』
 とか言われたし・・・
 あ、でも、僕は基本的に『M』だから平気さ。
「あの・・・祐介さん、どうして笑ってるんですか?」 
「あ、あぁ、いや、なんでもないよ瑞穂ちゃん」
「あーっ! ゆーくんHなこと考えてたでしょっ!」
 ギクッ
「か、考えてないよ」
 ああ、太田さんが睨んでる。バレバレか・・・
 仕方なく、僕は無理矢理に話題を逸らした。
「そ、そう言えば、瑞穂ちゃんって、どんな食べ物が好きなの?」
「えっ、わたしですか?」
 瑞穂ちゃんは、なぜかビックリして、それから少し考えて・・・

「ぷ、ぷ、ぷりん・・・」

 そ、そんなに恥かしがらなくてもいいのに。
「瑞穂って、あいかわらず、お子ちゃまね」
 イガイガのセリフを吐き出す太田さん・・・
 こ、この人って・・・
「あ、あたしもプリン好きだよー」
 たぶん、沙織ちゃんはフォローしたんじゃないな。うん。
「ねーねー、るりるりはどんな食べ物が好きー?」
 沙織ちゃんは、ハートをポワポワ飛ばしながら、瑠璃子さんに聞いた。
「私も興味あるわね」
 太田さんは、鋼鉄製の言葉を吐き出した。
「あ、わ、私も・・・」
 瑞穂ちゃんは、太田さんの顔色をうかがいつつ、発言する。
「僕も興味あるな」
 僕のは本音だ。
「瑠璃子さんの好きな食べ物って何?」
 瑠璃子さんは、みんな顔をゆっくり見回して、にっこり笑った。
「わたしが好きなのは―――」
 時間が、ゆるゆると流れ出す・・・

「枯れ葉剤」

 かれはざい?
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
 硬直する僕たちの中で、最初に口を開いたのは、意外にも太田さんだった。
 太田さんは、ぎこちなく言った。


「・・・・エンガチョ」