核武装 投稿者: MIO
 ―――マルチは、他人をやさしくする、不思議な魅力を持っている。

 
 国連の決定により、地球上にある核爆弾の起爆スイッチは、一つに統合され
た。
 んで、マルチの体内に組み込まれた。
 マルチの気分次第で、国一つが消滅するし、ヘタをすれば地球は壊滅だ。
 でも、マルチが怒るなんて、ほとんど有りえないことだし、
 良く考えたら、マルチが怒ってしまうような事件を起こす国なんて、消滅
して然りだ。
 うん。
 実に、素晴らしいアイデアだった。

「ご主人様、今日お買い物に行ったら、お金を払わずにすみましたぁ」
「そうか・・・ま、そうだろうな」
「どうしてでしょうか?」
「そりゃあ・・・怒らせたくないからだろ」
「誰をですか?」
「誰って・・・俺は、お前をだと思うぞ」
 俺の言葉に、マルチはしばらく考えて
「店員さん、優しい方ばかりなんですね」
 と嬉しそうに言った。
「う〜ん、都合のいい解釈だよなぁ」
 ま、それでいいか・・・
 優しい、優しい・・・うん、みんな優しいな、いいことだな、素敵だね。
 地球万歳。
「次から、毎日、あのお店でお買い物をすることにしますぅ」
「そうか、そうか」
「はい!」
「んじゃ、つぎに行った時は、その店の権利書を買ってくるんだぞ」
「けんりしょですか? はい! わかりました!」 
 ふふっ・・・
 今のマルチに逆らえるのは、俺ぐらいのもの―――

「―――はっ!」

 へらへら笑っていた俺は、突然ひらめいた!
 神様からの、特別緊急指令を受信したぜっ!
 俺は、たった今、気づいたのだが―――

 マルチを使えば、世界征服も可能だっ!

「マルチを使って、各国を脅すのだ、世界中が俺にひざまづくのだっ!」
「せかいせーふく?」
「その通りっ! 手伝えマルチ!」
「良く分かりませんが、はいっ!」
「んじゃ、手始めに・・・お向かいの田中さん家から始めるぞっ!」
 その時、意気揚々と外に飛び出そうとした俺の服のすそを、マルチがつかん
だ。
「―――聞いてください、ご主人様」
「おうっ! どうした!?」
「今日、お買い物の途中で犬さんに会ったんですが・・・」
「ふむふむ」
「犬さんに、眉毛が書いてあったんです」
「まゆげ?」
 ああ、俺も昔よくやったな。
「犬に眉毛を書くと、とんでもなくおかしい面になるんだよな」
「ひどいです」
 他にも、猫の尻にからしを縫ったり、セミに爆竹くっつけたりしたぞ。
 猫は、猛烈な勢いで走り出し、セミは空中で散華するんだ。
「そんなの、みんなやってるって、それよりも世界征服・・・」
「犬さんに眉毛を書くなんて、許せません!」
「え?」
 初めてマルチの怒った顔を見た、その日・・・
 

 日本は世界地図から姿を消した。 
 

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あけましておめでとうございまーす!
MIOでぇす!
しばらくペースがガタ落ちしてましたが・・・
これからも続きまぁす!
ちくしょうっ!
就職してぇっ!