不治っぽい病 投稿者: MIO
「すまないあかり・・・、俺には、別に好きな人がいるんだっ!」
「そんなっ!!」
 あかりは、絶望しきった顔で崩れ落ちた。
 すまない、本当にすまない!
 んだが、俺は、おまえを幼なじみ以上には見れないんだ!
「ねぇねぇ浩之、好きな人って僕のこと?」
「・・・・」
「ねぇってば」
「ええい、うるさいっ!!」
  ばきっ!
「あ、愛が痛いよ・・・」



「ということがあったんです・・・」
 ここんとこ調子が悪かった俺は、病院に来ていた。
 長瀬という医者は、俺に、最近あったことを話せという・・・
 俺はしぶしぶ、ここ一週間の間にあったことを話していた。

 俺の話に、長瀬は神妙な顔で頷いた。
「よくわかったよ・・・」
「俺・・・なんか病気なんスか?」
 不安げに問う俺に、長瀬はまじめな顔で言う。
「藤田くん、この際ハッキリ言おう、君の病名は―――」
 ゴクリ・・・病名は?

「神岸あかりちゃん病だ」
「神岸あかりちゃん病だって!?」
「そうだ、神岸あかりちゃん病だ!」
「神岸あかりちゃん病・・・」
「神岸あかりちゃん病・・・一万人に一人の、不治の―――」
「因果っ!!」

 ばきっ!!

「ぐあっ!?」
 俺の自己流パンチを食らって、長瀬は部屋の隅まで吹っ飛んだ。
 ぐるぐるまわって棚にぶち当たり、落ちてきた注射が頭に刺さる。
 それを合図に、大量の鼻血が、年寄りの小便みたいににダラダラとこぼれた
「い、いいい、いきなり何をするっ!!」
「うるせぇっ! 素人と思ってなめるなよっ!!」
 なぁにが、『神岸あかりちゃん病』だ!
 寝言は寝て言えっ!
「このアル中! 不良ヤブ医者っ!」
 俺は、鼻血まみれの長瀬を置いて、病院を後にした。


「ったく、ヒドイ目にあったぜ・・・」
 金だけは取られたからなぁ・・・
 ブツブツ言いながら歩いていると、商店街に差しかかった。
 福引きをやっているらしく、やけに人が多い。
 見れば、子供たちに風船を配るぬいぐるみのクマが―――
 クマ?
「きゃぁっ! くまちゃん、可愛いよぉっ!」
 ぬいぐるみのクマに抱きつく俺!
 ああっ! くまちゃん! フワフワだよぉ、モコモコだよぉ!
 可愛いなっ!
 可愛い、可愛い、くまちゃん可愛い―――

「はっ!?」

 突然、俺は夢から覚めた!

「お、俺はいったい何をやっているんだ!?」

 俺が愕然としていると、ぬいぐるみのクマが頭をはずした。
 中から出てきたのは・・・

「やぁ浩之! やっぱり僕のことを―――」
「天誅!」
 
 ばきっ!

 雅史を一撃で沈めた俺は、がっくりと膝をついた。
「まさか・・・本当に『神岸あかりちゃん病』だったとは・・・」
 ちくしょう・・・
 不治の病だって? くそったれめ・・・

「浩之、辛いことがあったのなら、僕の胸で泣くが―――」
「螺旋!」

 ばしっ!

「おぶぶぶぶっ」

 風船みたいに膨れていく雅史は置いといて・・・
 俺は絶望のどん底にいた。
「うううっ・・・俺の人生おしまいだ・・・」
「浩之、だから僕が・・・」
「秒殺!! 大儀!! 輪廻!!」

 どすっ、ごきっ、ぶわっ!!!

「雅史・・・生まれ変わるその時まで立ち上がれまい・・・」
 南無!
「うぎゃあああああっ!」
 雅史はこの世から消えた。
 それはどうでもいい・・・
「あぁ、俺はこの先、いったいどうすれば・・・」
 その時俺は、ブティックのショーウィンドウに移った、俺の顔を見た!
 俺の顔・・・・浩之ちゃんの顔だ!

 ドキッ!

 なんだ、この胸のときめきは!?
 切ない!
 狂おしいほどに想う!
 俺は!

「浩之ちゃんが好きっ!」

 ああ、なんということだろう!
 あかりが、これ程に俺のことを想っていたなんて・・・
 あかり、あかり、あかり、あかりっ!!
「ふふっ・・・」
 俺は一人で苦笑した。

 どうやらこの病は、俺に真実の愛を教えてくれたようだぜ・・・
 よおしっ!

「あかりちゃんに、カレー作ってあげちゃおっ!」
 俺は家路についた。


 スキップしながら・・・


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 図書館の方に書いたんだけど、なんかダメだったので、こっちに移します。
 ハッピーバースデイ、俺。
 さみしい大人(社会不適合者)の誕生だ。
 
 ・・・俺、二十歳になったのかぁ・・・・はぁ
 やれやれだね。