マルチというのは、そりゃあもう可愛いヤツで、俺が何かプレゼントすると、健気に、いつまでも大事に持ってたりする。 いつだったか、夜店でペンダントを買ってやったら、 「あ、あ、あ、あああ、ありがとうございますっ!」 とかなんとか言って、踊り出しそうなほど、喜んだ。 もちろん、今でもそれを持っていて、ことあるごとに眺めてはニヘニヘ笑っている。 試しに、ビールビンの王冠を、 「いつも頑張っているマルチにプレゼントをあげよう」 と言って渡したら、やっぱり、 「わぁーーーーっ! ありがとうございますっ!!」 とか言って喜んだ。 今でもマルチの服のポケットには、王冠が入っているはずだ。 他にも色々プレゼントした。 過疎レンジャーのサインとか、使い終わった使い捨てカイロとか、サロンパスを水でふやかしたやつとか、消しゴムの消しカスを練って固めたやつとか・・・ とにかく、それらのガラクタを、マルチは後生大事にしている。 がしゃっ、ずしゃっ、がしゃっ、ずしゃっ・・・ 「ご主人様ぁ、朝ご飯の用意ができましたー」 戦国時代を思わせる、大げさな甲冑に鎧われて、 マルチが俺を起こしに、寝屋に入ってきた。 俺は、 「へいへい・・・今起きる」 適当に返事をして、着替えを始める。 一階に降ると、既に朝食の用意ができていた。 最近気づいたが、やはり、日本人なら米を食うべきだ。 トーストはいかん、ありゃあ、一人暮らしの時だけだ。 ずしゃっ、がしゃっ、ずしゃっ、がしゃっ・・・・・ 「おいしーですか?」 「おう、また料理、上手くなったんじゃねえの?」 がしゃっ 「ありがとうございますー」 2週間ぐらい前、酔っ払った俺は、骨董品や出甲冑を買ってきた。 銘品らしく、えらく値が張った。 「んじゃ、大学行ってくらぁ」 がしゃがしゃがしゃがしゃっ! 「いってらっしゃいませー!」 ばたん・・・・ わたしは・・・、ご主人様を、玄関先まで見送りました。 「・・・・お掃除しましょー!」 るるり、るるりら、るるりるりらり〜♪ がしゃ、がしゃ、ずしゃがしゃずしゃっ! がしゃしゃ、ずしゃがしゃ、どしゃどしゃがしゃぁっ! がしゃどしゃ・・・・・・・・・・・ 「るる〜るりるりるら・・・・・・・・・・・」 がしゃどしゃがしゃがしゃ・・・・・・・・ 「・・・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ま、前々から思ってたんですが、 この鎧――― 「・・・・・・むちゃくちゃ蒸れるがな」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モ○ラですらっ! モス○ですら鎧いを纏うこのご時勢! 危険に満ちた現代社会! あらゆる危険から、無垢なマルチを守るためには、 鎧を着せるしかあるまいっ! そうだ・・・・・ ハッピバースデイ、トゥーユ〜♪ ハッピバースデイ、ディア俺〜♪ ハッピパースデイ、トゥ〜ユ〜〜♪ 今年の誕生日は・・・・・一人で祝おう。 おめでとう、俺・・・・・ お祝いに、テッカマンの歌を送るよ。 一筋流れる〜涙ぁ星ぃ〜♪ ううっ・・・・・