俺はその日、来栖川に乗り込んだ!! どうしてかだって!?もちろん、先輩を俺の嫁さんにするためだ!! この日のために、高いスーツ買って散髪にも行ったのだ!! 「・・・・」 「わかってる!絶対先輩を俺の嫁さんにしてやるからな!」 俺は、先輩の手を引いて長い廊下を突き進む。 バン!! 俺はブルジョアなドアを力いっぱい開いた! 広い部屋の中央の、やたらでっかい椅子には、鬼瓦みたいな顔のジジィが座っている。 何度か雑誌で見たことがあった。来栖が輪グループの会長、先輩の祖父に当たる人物だ! 「何だ君は」 低く、よく通る声だ。 「藤田浩之です!娘さんと交際している者です!」 「何の用かね」 俺は、がばっと土下座した。 「お嬢さんを僕にくださいっ!!」 「いきなり無茶を言う奴だな」 「若者ですから!!」 「・・・・ふん!」 老人は、椅子から立ちあがると、ゆっくり窓際へ向かった。 その背中は小さいが、圧倒的な存在感がある。 その老人は、俺が今まで見てきたどんな人間よりも、大きな物を背負っているのだ。 再び重い声が響いた。 「君のことは調べさせてもらった」 「た、確かに僕は一般庶民です!ですが芹香さんを愛する気持ちは・・・」 「そんなことは問題じゃない!!」 老人の一喝は、腹の底にズシンと響いた。 「君は・・・」 老人は少しのあいだ逡巡して、そして振り返った。 そして言う。 「君は、ミカンの白いところを、全部取るだろう!」 「は!?」 俺の時間が停止した。 「君はミカンの白いところを、手間暇かけてじっくりと、つるつるになるまで取るんだろう!」 た、確かに俺はそうだけど・・・ 「でも、それとこれと・・・」 「調べはついとる!」 そう言ってて、ジジィは俺に紙の束を投げつけた。 どうやら、俺の素行調査の調査結果らしい。 「さらに君は、プリンのフタを開けたとき、裏側に付いた滴とか、プリンの欠片みたいのを舐めるだろう!!」 こ、このジジィ、気でも違ったのか? 「・・・・」 先輩が、もうやめて、と飛び出した。 「芹香!まだこんな男をかばうというのか!この男は・・・この男はヨーグルトのフタの裏も舐めるのだぞ!」 「・・・・」 先輩は、それでもかまいまいません、と涙ながらに叫んだ。 なんだ!?フタ舐めるのが、そんなに大問題なのか!? 俺が狼狽していると、再びドアがバンと開いた! 「お爺様!」 扉を開けたポーズのままで仁王立ちになっているのは・・・ 「綾香!まさかおまえまでこの男の見方をするのではあるまいな!!」 「そのまさかですわ!」 あやかはそう叫ぶと、ジジィが用意した資料とそっくりの、紙の束を取り出した。 「その資料は、一部の不穏分子によって偽造された疑いがあります!」 「なんと!?」 「こちらが本物」 相違って、あやかは紙の束をめくった。 「これによると、浩之は白いところをキレイに取り去ったミカンを・・・」 「ほれみろ!やはり白いところを・・・」 あのさあ、白いところがなんかダメなわけ? 「最後までお聞きくださいお爺様!浩之は、白いところを取り去ったミカンのうち、一ふさを・・・」 綾香はニヤリと笑った。 「猫に無理矢理食べさせました!!」 「な、なんと!」 今まで仏頂面だった老人が、初めて驚愕の表情を浮かべた。 う〜ん、そう言えば、無理矢理食わせたな。 猫は柑橘系はだめらしいんだが・・・まあ、好奇心だ。 って・・・・、だから何? 「さらに言うなら、彼は、その猫に、さらに玉ねぎを食べさせ、嫌がる猫を水でさんざん洗ったあと、ヒゲを・・・」 「ま、まさか・・・」 「彼は、猫のヒゲを切りました!」 そういや、やったなあ・・・ 我ながら残酷なことをしたもんだ。 すまん!猫よ! 「おお・・・」 老人は一気に老けた。いや、そう見えただけか・・・ どちらにしろ、最初の威厳は、今は見る影もない。 「うふふ、お爺様これだけで驚いてもらっては困ります!」 だからさ、なんで驚いてるわけ? 「まだあるというのか!?」 「ヒゲを切った猫を、彼はどうしたと思います?」 「ま、まさか・・・」 「そう、猫の肛門にカラシを塗ったのです!」 「やめろおっ!!」 老人の懇願。 「そうよね、浩之?」 「え?あ、ああ・・・」 そうそう、あの猫、ロケットみたいに走っていったなあ。 俺、ヒデェやつだな。 でもなんなんだ?この展開はよ・・・ 「もう一つ、プリンのフタにつてですが・・・。彼は舐めたプリンのフタを・・・」 「フタを・・・?」 「燃えないゴミに分別して捨てました!!」 「うわああああああーーーーーーーーーーーーっ!!」 老人が絶叫した。 なんかよく分からんが、綾香はとどめ一言を言ったらしい。 すっかり弱った老人は、ふらふらと立ちあがると、俺の方に歩み寄ってきた。 その眼光は、驚くほど濁っている。 オイオイ・・・ だからさあ、なんでそんなに憔悴してるんだよ。 「すまなかった藤田君・・・」 「は、はあ・・・・」 俺の方があやまりたいくらいだ。 だが、その次の台詞は、なんだかもっと混乱の種だった。 「君と芹香の結婚・・・・許そう」 なんだそりゃあ!? 嬉しいはずだが、なんか、嬉しくない・・・ 困惑する俺の手を、先輩がそっと握った。 「・・・・」 「嬉しいって?ああ、まあ、そうだろうけど・・・」 なんか釈然としない。 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ そうだなあ、やっぱりアレだ、そうしよう。 うん、そうしよう、そうしよう 「なぁ先輩」 「?」 「結婚は、もう少し先にしよう」 時間が、ピターッと止まった。 「なんで!?」 「どうしてだねっ!?」 「・・・・・!?」 全員が立ち上がってそう言った。 いや、普通そう思うんじゃないかなあ・・・ 「だってさあ、あんたら変だし・・・」 「変でどこが悪い!」 自覚してたのか・・・・ ますますタチが悪い。 ヤル気が失せた。 先輩には悪いが、結婚はもう少し先になりそうだった・・・ ===============================================− 優しく、激しく、さりげなく! 私は帰ってきた! どーも!イリスのうなじがセクシーで、ちょっと興奮気味のMIOっス! 今後ともよろしくどーぞ!!