暗闇から・・・ 投稿者:MIO
 今日も今日とて柏木家でボンヤリしている俺・・・・
 日は沈み、今は、山の稜線だけが、オレンジ色に滲んでいる・・・
 ああ、秋やねー・・・・
 と、脳みそを弛緩させていると・・・・
 
 ばたっ

「?」
 玄関のほうで物音が聞こえた。
「なんだろ」
 気になった俺が、玄関で見たものは・・・

「初音ちゃん!?」

 初音ちゃんが、玄関で倒れていた。
「初音ちゃん!オイ!大丈夫か!」
 俺は駆け寄った。
 だが、近寄ってみると、別に大事無いことが解る。
「ハァ、ハァ、・・・あ、お兄ちゃん」
 なんだ・・・、病気か何かと思ったら、どうやら、疲れて倒れ込んだだけらしい。
 顔を赤くして、息を切らしている・・・なんかエッチだ。

「初音ちゃん、ビックリさせないでくれよ〜。心配しちゃったじゃないか」
 俺の言葉に、初音ちゃんは、ごめんね、と申し訳なさそうにした。
「足まですりむいて・・・。一体どうしたんだ?」
「うん・・・。追いかけられたんだ。・・・すごく恐かった」
 追いかけられた―――
 つまり・・・、変態に?
「ゆ、許せん!」
 許せーーーーーーーーん!
「きゃっ!」
 いきなり立ち上がった俺に、初音ちゃんが驚く。
「ど、どうしたの、お兄ちゃん?」
「どーしたも、こーしたもない!!こーんな可愛い初音ちゃんを追いかけるなんて―――」
 その時だ
「どうかしたんですか?」 
 現れたのは楓ちゃん。
 どうやら、俺が騒いでいるのを聞きつけたらしい。
 俺は、興奮したまま言った。
「初音ちゃんが、どっかの変態野郎に追いかけられたんだってさ!まったく!最低だな!万死に値する!」
 許せん!
 たとえ天が許しても、俺が許さん!
「変態・・・ですか?・・・・そうなの初音?」
「ううん、違うよ。」
 え?
「お兄ちゃん、誤解だよ。私、変態に追いかけられたんじゃないよ」
「え?あ・・・・」
 誤解か!?
「じゃ、じゃあ何に追いかけれたんだ?」 
 初音ちゃんは、少し困った顔をして言った。
「黒い全身タイツを着た―――」
「やっぱり、変態じゃないか!」
 俺がそう言うと、
 初音ちゃんは、首を横に振って、違うよ、といった。
「私が追いかけられたのは、黒い全身タイツを着た―――」
 ごくり・・・


「オスマン・サンコン」

 
 ・・・・・・・
「え?」
「だから、全身黒タイツのオスマン・サンコンに、追いかけられたの」
 サンコン?
「サンコン!?なんで?どうして?ええっ!?」
 ひどく混乱する俺。
 初音ちゃんが、再び困った顔になって、楓ちゃんを見た。
 楓ちゃんは表情を変えない。
「・・・・・」
 楓ちゃんは、俺の顔をじっと見た後、冷徹な声で、

「この時期は、よく出ます」

 と言った。
「よく出るって・・・。サンコンが!?」
「サンコンが」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・サンコン?」
「はい、サンコンです」

 もう二度と、
 この時期に柏木家を訪れまい・・・・

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 えらい昔、
 『暗闇からサンコン』ってコーナーを、某番組がやってたのを思い出しまして・・・

どーでもいーけど・・・
 『西村雅彦のさよなら20世紀』は、面白かったな。
 あんまり馬鹿馬鹿しくて、爆笑してしまった。
 しかし
 二度と見ることはあるまい。