たとえば、こんな昔話。 投稿者: MIO
 山の朝は早い。
「ジローエモン、朝ご飯できましたー」
「おう」
 都合、人斬り稼業から足を洗った俺は、美人の妻を娶り、今ではきこりの真似事
をして暮らしていた。
 妻は人間じゃなかったし、なんかいろいろあったが、美人で器量良しだから問題
はない。
 同業の輩には笑われるだろうが、俺は結構幸せだ。

「一生懸命作りました!」
「うむ!」
 エディフェルは料理が下手だった。
 いつか遊びにきた彼女の姉と違って、味音痴というわけではない。
 単に食文化の違いだろう。
 
 膳の上には、魚の形をした炭と、ドロリとした液、たくあん丸々一本と、米が茶
碗一杯。

「エディフェル、この魚の形をした炭は・・・?」
「魚の丸焼きです」
 丸焼き・・・
「このドロリとした液は?」
「お味噌汁です」
 そうか・・・
「たくあんは切らなかったのか?」 
「切って食べるものなのですか?」
「あ・・・いや・・・」
 切らなくても食えるけどな・・・ 
「米は・・・どうして、生なんだ?」
「え? ちゃんと精米しましたが・・・」
 エディフェルは、心配そうな顔で俺を見つめた。
「やっぱり、精米した後、水で洗ったほうがいいんですか?」
「・・・いや、ちょうどいい」
 俺の言葉に、エディフェルは、パッと明るくなった。
「じゃあ、晩御飯もがんばります!」
「・・・」
「ジローエモン?」
「・・・いやあ、楽しみだなぁ!」
「わーい!」  
 では・・・
「い、いただきます・・・」

 都合、人斬り稼業から足を洗った俺は、美人の妻を娶り、今ではきこりの真似事
をして暮らしていた。
 妻は人間じゃなかったし、なんかいろいろあったが、美人でだから問題はない。

 かつての友は哀れむだろうが、やっぱり、俺は結構幸せだ。

 そして・・・

 俺は、楓ちゃんの料理を口に運び・・・
「ぐっはぁっ!!!!!!!」
「きゃあっ!!」
「水を、水をくれぇっ!!」
「コラ楓! 耕一に何を食わせたんだよ!?」
「え? え? あ、朝ご飯・・・」
「楓ったら、お料理が下手ねぇ」
「千鶴姉に言えた義理かっ!?」
「みんな、ケンカはダメだよぉっ!」
「水ぅっ!!」

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 めちゃくちゃ遅くなったが。
 このお話を、永遠の高校二年生、われらのアイドル
 楓ちゃんに捧げる。