睨み合う理緒ちゃんと良太・・・・、死合う定めの両戦士。
ってほど、大袈裟な場面でもないんだが・・・
二人の貧乏姉弟は、乾いた風の吹きすさぶグラウンドで、睨み合っていた。
俺こと、藤田浩之は、成り行きで立ち会っている。
「季節はまさに、食欲の秋・・・決戦の刻は来た!」
理緒ちゃんが不敵に笑う。
「いくわよ良太! 覚悟はいい!?」
「おう」
理緒ちゃんが飛び出す!
そして・・・・
パン!
強烈な平手!
良太の小さな体は吹っ飛び、くるくる回って地面に激突した。
倒れ伏した良太は、しばらく動かなかったが、やがてヨロヨロと立ち上がった。
「健在だ!」
良太は、涙をこらえて仁王立ち。
迎え撃つ理緒ちゃんは、羅刹の貌。
「きなさい良太!!」
「応!!」
理緒ちゃんに叱咤され、良太はタタタと駆け出す!
「リオネーチャン!!」
どすっ!
「ぶぅおっ!!」
良太の頭が、理緒ちゃんのみぞおちにめり込む!
しかし、理緒ちゃんは両足を踏ん張ってこらえた!
「笑止っ!! この程度の一撃、蚊に刺されたほどでも・・・・」
しかしっ!
「ぐはぁっ!?」
理緒ちゃんは血を吐いて、地面に倒れ伏した。
「リオネーチャン・・・」
「良太・・・・」
ふらふらの姉と弟は、がっしりと手を握り合った。
「良太、痛い?」
「うん、・・・リオネーチャンは?」
「痛いわ・・・」
にっこり笑い合う二人。
・・・・
二人が何をやっているのかというと・・・
「痛いよう・・・」
「うふふ・・・、でも、痛すぎて食欲を感じないわ」
つまり、空腹をまぎらわしているんだな。
なんか、ヤな姉弟だ。
「んじゃ、俺、先に帰るから」