俺は今、動物園に来ている。 由綺がどうしても白熊が見たいというので、せっかく予定を空けたのだが・・・・ 『ごめんね冬弥くん、急に仕事が・・・』 というわけで、由綺は来れなくなってしまったのだ。 そして、変わりといっては何だが、俺の隣には 「ん」 はるかがいた。 「はるか」 「?」 「あんまりウロウロすると迷子になるぞ」 「だから気をつけるように」 「俺はお前に言ってるんだよ」 「はあい」 「大体お前は、いつだってフラフラと・・・」 「ん、猿山だ」 「人の話を聞けよ!」 「冬弥がいっぱい」 「おまえ・・・、本人を前にして、よくもまあ、しゃあしゃあと・・・・」 「どれが冬弥かな?」 「俺が冬弥だ!!」 「あっ、猿」 「誰が猿だ!!失礼にもほどがあるぞ!」 「猿猿猿〜♪」 「歌うな!」 「猿〜」 「踊るな」 「ぱく」 「食べるんじゃない!」 「・・・・」 「・・・・」 「あはははははは」 「唐突に笑うなぁっ!!」 「猿だ」 「俺を指差すな、俺を!!」 「猿がしゃべった」 「猿じゃない!!」 「じゃあ何?」 「真顔で聞くな!!」 「もしかして・・・冬弥?」 「いくらなんでも、しまいにゃ怒るぞ!」 「まあまあ」 「・・・・」 「バナナ食べる?」 「うがああぁぁぁぁっ!」 「吠えた」 「俺を猿に例えるなぁ!!」 「だって似てるから」 「だから、どこがだよ!」 「ん、猿っぽいところ」 さ、猿っぽい? 俺が? 「・・・そ、そうかなぁ?」 「由綺も・・・」 「由綺も言ってたのか!?」 ショックだ! 「由綺も猿に似ている」 ・・・・・似てないぞ。 「あのなぁ、どんな色眼鏡掛けりゃ由綺が猿に見えるんだ!!」 「常識という眼鏡・・・・」 「んなアホなこと言う口はこの口か!!」 「ふぇふぇふぇ」 「こ・の・く・ち・かぁっ!」 「いふぁひ」 俺は、はるかの頬を思い切り真横に引っ張った。 「反省しろ!でないともっと引っ張るぞ!!」 「学級うん・・・・」 「遊ぶなっ!」 「・・・・文庫」 「なんで言えるんだよぉっ!」 「ふぁふぁふぁふぁふぁふぁ」 どうやったら、口を真横に引っ張ったまま、学級文庫と言えるんだ!? 「・・・・・な、なんか知らんが、もう怒ったぞ!」 「ニシン」 「そのネタはやめろ!」 「ん、猿が怒った」 「俺が猿ならお前はマンボウだっ!このボンヤリ娘!!」 「あははははははははは」 「何がおかしい!」 「私、マンボウ」 「・・・・・・・」 「クイズ私は誰でしょう?」 「なにぃ?」 「答え、マンボウ」 「・・・・・・」 「あははははははは」 「・・・・も」 もう嫌だ。 こいつの相手はもう嫌だよう・・・・・ 「帰って由綺に言いつけてやるぅっ!!」 ・・・・・・・ その夜、由綺に電話をかけた。 「というわけなんだよう」 由綺、俺を慰めてくれ。 「へぇ、楽しそう」 「楽しかないわい!!!」 と、思わず怒鳴って、 可愛い恋人を泣かしてしまう、秋の夜であった・・・ 「ん」