レミィとおひな様 投稿者: MIO
 それは、放課後のことである。
「ネー、アカリ?」
 金髪の美少女が、神岸あかりに、ぴとりと寄り添う。
 その碧眼は、何かを懇願している様子である。
 実際、何か頼みごとがあるのだろう。
「どうしたの宮内さん?」 
「アカーリ!私オヒナサマが見たいデース!!」
 おひな様・・・・
 ひどく時期外れな話だ。
 まあ、まるっきり無理な話でもない・・・
「でも、どうして?」
「ワタシ、オヒナ様見たこと無いのネ。ヒロユキに聞いたら、アカリ、持ってるって」
「うん、飾るのは無理だけど、見せるくらいなら出来るよ」
「見ていいデスカ!!」
「じゃあ、今日うちに来る?」
「行っきマース!!」
 レミィというのは、こんな風に必要以上に無邪気な少女であったから、元々が母性本能過剰なあかりには、これはも
う、色々と世話してやりたい気がするのである。

 家に帰ると、あかりはさっそく押し入れに潜り込み、人形の仕舞ってある桐の箱を取り出した。
「これだよ」
「いい仕事してますネ」
  ジョークだろうか。
「シカーシ」
「?」
「オヒナ様は人形じゃないのデスカ?これ、四角いデース」
 当たり前だ。
 まだ箱から出していない。
「み、宮内さん、これ箱だから・・・、この中に」
「Oh!そーだったのデスカ!?コレハ一本取られたネ!」
 HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!
 ・・・
 どうにも、あかりはやりづらい。
「弘法も筆の誤りネ」
 違うと思う。
 まあ、それは別いいだろう。
「じゃあ私、お茶用意してくるから。好きに見てていいよ」
「オーウ、お構いナーク」
 社交辞令だ。
 それは分かっているのだが、もう少し感情を込めて欲しい。
 言ってることと、表情が反比例している。
「日本茶がよろしおすナー」
「う、うん、わかった・・・」
 何か釈然としないものを感じながら、あかりは退室した。
 さて、レミィは・・・

「ふん、ふふ、ふふ〜ん♪」(鼻歌)
 ごそごそ
「オーーーーーーーーウ、ぐれいつネーーー」(感動)
 ごそそそそそ
「じゃぱにいず、チョベリグッ!!」(再感動)
 じぃーーーーーーー
「びゅーてぃほーーーーー」(感涙)
 くいくい
「この顔の造詣がなんとも・・・、いい仕事してますネー」(喜)
 くいくいくい
 ぽき
「・・・・・・・・・」(思考停止)
 ・・・・
「・・・・・・あーーーー」(思考再開)
 ・・・・
「取れてマース」(発汗)
 ・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・」(脳細胞フル回転)
 ・・・・
「くっつくデース!」(精一杯のアイデア)
 ぐい 
 ・・・・・ぽろ
「うりゃ」(ヤケ)
 ぐい
「うりゃうりゃうりゃ!」(ヤケ)
 ばき
「・・・・・」(半笑い)
 おひな様、重傷。
「アハハハハハハ」(大笑い)
 とにかく、重傷。
「・・・・・・・」(笑い事でないことに、やっと気づく)
 かなり、重傷。
「・・・・・」(とりあえず、糊で固定してみる)
 べちょ
「これでOKネ!」(至福)
 ・・・・・
「・・・・・・・・」(何か違うことに気づいた)
 おひな様は、すでに人の形をしていない。
「・・・・・・・・」(発汗)
 ・・・・
「・・・・・・・・」(焦る)
 ちょいちょい
 ・・・・・ 
 ぽろ
 おひな様、再び損壊。
 再起不能。
「・・・・・・・・」(大量発汗)
 ・・・・・
「ウーー」(とりあえず、箱に仕舞ってみる)
 ごそごそ
「・・・・・・・・・・・」(選択肢)

1.ささっと逃げる
2.こっそり逃げる
3.どんどん逃げる
4.やっぱり逃げる

「・・・・・・」(転がったオヒナ様を見る)
 ・・・・
「あーーーー」(よーく考える)
 レミィは、ぽんと手を叩くと、
 窓を開けた。
「オジャマシマシターーーーーーーー!」

 がしっ
 レミィの肩を、誰かが掴む。


「・・・・ちょっと待て、このニセ外人」

 
 あかりだった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
MIO 「ネェネェあかりお姉さん。おひな様って、なあに?」
あかり「おひな様はね、かさばって、何の役にも立たない割に、値の張る代物なんだよ」
MIO 「ふーーーん、解ったよお姉さん」
あかり「・・・・・・・」
MIO 「・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・」
MIO 「・・・・・・・」
あかり「・・・・・・・」(イラッ)
    げしっ!
MIO 「ぐはぁっ!!」(出血)