楓と『か』 投稿者: MIO
 ぷうぅぅぅぅぅぅん
 ああ、うるさい。
 パン!
 ぷぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅううううぅぅぅん
 柏木家には、いまだに蚊が飛んでいる。
 緑が多いせいか。
 もう秋だというのに、いっこうに弱まらない日差しのせいか。
 鬼の血を吸いすぎて体質変化でもしたのか・・・・
 とにかく
 パン!
 柏木家では
 ぷうううぅぅぅぅぅぅううううぅうううぅぅぅぅん
 いまだに蚊が飛んでいる。
「ああもうっ!」
 昼寝を中止して、俺はガバリと跳ね起きた。
「ううっ、どうして耳のあたりを率先して飛ぶんだよ〜」
 おちおち昼寝も出来ないじゃないか。
 そう言う俺に、お茶を楽しんでいた楓ちゃんが言った。
「蚊帳をはりましょうか?」
 まさか昼寝のためだけに、そこまでする必要もないだろう。
「いや、それはオーバーだって。蚊取り線香とか虫除けスプレーとか・・・」
「でも、我が家の蚊には、どれもあまり効きません」
 やはり体質変化してるのか?
「やれやれ・・・」
 俺はばったりと倒れ伏した。
 ぷううううぅぅぅぅん
「・・・・・・」
 こうなったら。
「・・・・・・」
 ぷうううううぅぅぅうぅぅぅぅぅん
「・・・・・・」
 根くらべだ。
 蚊が俺の睡眠を妨害するのならそれも良かろう!
 んだが!
 俺は絶対寝てやるからな!!!
 ぷうううううぅぅぅぅぅぅぅううううううぅぅぅうううぅぅぅぅぅん
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ぷうううぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅん
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 そういえば、こんなに蚊が飛んでるのに
 ぷううううううぅぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅん
 楓ちゃんはちっとも刺されてないな・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ぷううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅパクッ・・・・・
「!?」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「???????????????????」
 ぷうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅうううううパクッ・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「????????????????????????????」
 俺は再び跳ね起きた!
 馬鹿な!
 そんな馬鹿な!!
 あんなに可愛い楓ちゃんが・・・
「もぐもぐ・・・・・」
 楓ちゃん!?
「・・・・・・・・・・・・う、う、う、う、嘘だぁ!!!!!」
「?」
「わああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 俺は
 なんかメチャクチャ恐くなって逃げた
 こんな場所に、一瞬だって長居したくなかった
 荷物も持たず、財布も持たず、靴さえ履かずに
 サ○エさん状態で
 俺は、住みなれたアパートの一室に逃げ帰った
 やっぱり


 そこにも『蚊』はいた。