正義の味方とマルチ 投稿者: MIO
 マルチは最近、あるアニメに夢中だ。
 『それいけ!乾パンマン』
 という、子供向けアニメである。
 甘いお菓子ばかり食べている子供の前に現れ、
『昔はなぁ、これしかなかったんだぞ、非常食に持ってこいなんだぞ』
 といって、子供が泣き出すまで乾パンを食わせる正義のヒーローだ。
 お菓子を食べる子供を一週間ストーキングし、食べたお菓子と、お菓子に含まれる化学調味料などをリストア
ップして、親に送り付けたりもする。
 かなり陰気臭いヒーローだ。

「かっこいいですねー!」
 どこがだよ
「歌を聴いてくださいご主人様!とっても、かっこいいですー!」
 愛と勇気だけがマブダチさぁ〜
「ね?」
「なにが、『ね?』じゃ」
「かっこよくないですかぁ?」
「単に寂しいやつじゃないか、愛と勇気だけが心の拠り所なんだろ?」
「ちがいますぅ!」
 マルチは珍しく憤慨して、乾パンマンの過去を話し始めた。
 マルチ曰く
 日夜正義のため、子供たちをストーキングしている乾パンマン。
 彼にもかつては信頼できる仲間達がいた、育ての親の南無おじさんや、アバタさん、愛犬のスチーム・・・・
 仲間達に助けられ、乾パンマンはいつだって張り切ってストーキングしていた。
 だが、悲劇は起こった!
 ストーキングも終わり、疲れた乾パンマンは乾パン工場へと帰ってきた、そこで彼が見たものは!
「アバタさん!?」
 変わり果てたアバタさんと、胡乱な表情でたたずむ南無おじさんだった。
「これは一体!?」
「違うんだ乾パンマン!」
 そこで何が起こったのか、アバタさんの様子を見れば一目瞭然だった。
 すでに冷たくなっているアバタさんの衣服ははだけ、乱暴された様子がうかがわれる。
「ワシは悪くないんじゃ!ワシは本気でアバタのことを!アバタがワシを『ジジィ』などと罵るものだから・・・」
「南無おじさん・・・」
「ワシは!ワシはなんてことを!おしまいじゃ!乾パンマン、お前をもう雑菌マンと戦わせることは出来ない!町
の平和も守れんのじゃ!」
 崩れ落ちる南無おじさんに、乾パンマンはかける言葉が無い。
 そこへ現れたのは、乾パンマンの戦友である、短パンマンだった
「やぁ乾パンマン、一体何をやって・・・・、うわぁ!?」
「た、短パンマンこれは・・・」
 なんとか短パンマンに事情を説明しようとする乾パンマン。
 その時、南無おじさんが信じられないことを口走った!
「こいつじゃ!この乾パンマンがアバタを殺したんじゃ!ワシは見た!」
「な、南無おじさん!?」

「ちょっと待ったマルチ!」
「はい?」
「こ、この番組は子供番組じゃ・・・」
「そうですー」

 乾パンマンは法廷に立っていた。
 罪は、婦女暴行と殺人。
 情状酌量の余地なく、判決は終身刑だった。
「鬼!」
「悪魔!」
「正義の味方面しやがって!」
 どこからか石が飛んできて、乾パンマンの額を打った。
「痛っ!」
 痛みをこらえながら乾パンマンは思う
(これでいい。南無おじさんはきっと、僕に負けない新しいヒーローを生み出してくれるだろう・・・、僕はこれで
いい、僕の犠牲で町の平和が守られるなら、これでいいんだ。たとえ地下百尺の捨て石で終わろうとも、我、
微塵の憂いもなし!)
 だが
「面会だ」
 三年の後、彼にはじめて面会人が現れた。
 かつての戦友、食間マンである。
「ひでぇ面だな乾パンマンよ・・・、無精ヒゲだらけじゃねぇか」
「・・・・何のようだ」
「南無おじさんのことだがな・・・」
「・・・・」
 獣じみた目で、食間マンを睨む乾パンマン。
「まぁ聞けや」
 食間マンは、周りの気配を気にするように、乾パンマンに顔を近づけた。
「南無おじさんなぁ、アバタに多額の保険金かけてやがったのよ」
「!?」
「保険金元手に工場拡張してな、今じゃ町一番の金持ちさ」
「う、嘘だ!いくら貴様でもあの人の侮辱は・・・」
「嘘なもんか、嘘だと思うなら看守にでも聞いてみな。あのジジィは警察にも名前が知られてる」
「ど、どういう意味だ」
「雑菌マンと手を組んだのよ。いまじゃ麻薬の密売にも手を出してる」
「・・・・・」
「騙されたんだよお前は・・・・。そうだ、いいことを教えてやるよ、俺も今じゃ雑菌マンの手下の一人だ」
「・・・・・」
「ボスからの伝言だ『間抜けなヒーローに乾杯』だとさ」
「・・・・っ・・・・」
「可哀相になぁ。お前さん、アバタさんに惚れてたんだろ?」
 そこまで言って、食間マンは乾パンマンの頬を伝うものを見た。
 涙ではない
 ぽたっ・・・・
「血!?」
 乾パンマンは血涙を流していた。
「乾パンマン、おめぇ!?」
「ぐぅおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 一ヶ月後、血走り刑務所から、一人の永久囚人が脱走した。
 それから三日後
 ある大規模な麻薬密売組織が壊滅する。
 関係者270人が一人残らず惨殺されるという、犯罪史上希に見る壮絶な事件である。
 そして
 乾パンマンの行方だけは、いまだ不明のままであった。


「と、このようなきさつで、乾パンマンは人を信用できなくなったんですー」
「笑って言うな」
「かっこいいですねぇ」
「・・・・・」
「ご主人様も、乾パンマンみたいに・・・・」
「絶対嫌だ!!」 

==============================================
ええっと・・・・・、ええもう、これは、うん・・・・
思いっきり趣味に走ってしまいました。
俺、普段からこんな事ばかり考えている男なんですよ。
ああ、でも
この話って、何もTo HeartのSSでやらなくてもいいような内容ですね。
俺の胸のうちにしまっとけばいいような話です。
すごく反省。
う〜ん・・・・
思うんですが、アン○ンマンの主題歌って、格好良くないですか?
え?格好良くない?
そ、そうですか・・・・・
ま、まあ、この次はちゃんと・・・・ね?