手品ってくれるか? 投稿者: MIO

「駐車場の猫が〜♪」
「ひ〜ま〜〜〜」
「・・・・」
「ひ〜ま〜〜〜」
「・・・・」
「ひ・・・」
「うるさい!」
「だって、ヒマ」
「俺だってそうだわい!」
 今日も今日とて俺の部屋に遊びに来ているはるかは、のべつこんな感じだった。
 自分はぼうっとするのが好きなくせに、俺がはるか以上にぼうっとするのは気に
食わないらしい。
 変なライバル意識である。
「冬弥、手品やって」
「お前はなんでそう、いつも唐突なんだ」
「高校のとき、冬弥がやった手品がいい」
「はぁ?」
「やった後、由綺に怒られたやつ」
「ありゃ、腹芸だ!」
「そうなの?」
「どこが手品だよ」
「タネが・・・」
「腹芸にタネがあるかっ!!」
「へそに・・・」
「そりゃゴマだっ!」
「お風呂に入りなさい」
「ほっとけ!」
 つ、疲れる・・・
「手品しないとオリンピック行けないよ」
「手品が出来るなくても、オリンピックには行ける!」
「冬弥、オリンピック行けるんだ、スゴイ」
「あ、いや・・・見に行くだけなら」
「じゃ失格」
「何にだよう!!」
「いいから手品見せて」
「出来ないと言っている!」
「またまたぁ」
「ええい!出来んと言ったら出来ん!!」
「ん、じゃあ大脱出ね」
「なにぃ?」
 はるかは大きなフタ付きの箱を取り出した。
「ちょっと待て!それ、どこから出した!」
「最初からここに」
「嘘言うな!」
「これと同じ物が六個、さらに小さいものを四つで・・・」
「ずばり一万円!」
「ん、十万」
「高いわっ!」
「半透明で中身が解る」
「だからどうした!」
「死体を隠すのに最適」
「隠すな!っつーか、丸見えじゃ役に立たんだろうが!!」
「冗談に決まっている」
「がぁぁぁぁっ!」
「ハワイ旅行もサービス」
「あ、言ったな!!俺、買うからな!絶対連れて行けよ!ハワイ!お前の金で・・・」
「いいよ」
「ホントか!?」
「ん、これ、スケジュール」
 俺ははるかから紙切れを受け取った・・
 なになに・・・
『現地集合 自由行動 現地解散』
「なんじゃこりゃー!」
「ハワイ旅行」
「旅費は結局俺持ちか!」
「私持ちでもいいよ」
「はぁ!?」
「高校のとき作ったイカダが・・・」
「遭難するわっ!っていうか、なんでイカダ作った!」
「ん?」
「質問に答えろ!」
「ん、いいから箱に入れ」
 ぼんやりとキレたはるかは、予想以上に強い力で俺を箱に押し込む。
「いででででででっ!コラ!やめろ!むぎゅ」
 俺を箱に押し込んだはるかは、箱を鎖でぐるぐる巻きにすると
「ん」
 妙に嬉しそうな顔をして、箱の前にちょこんと正座した。
「出せー!」
「出て」
「出してくれー!」
「出て」
「・・・」
「出て出て」

 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ・・・・・・・・・・

「・・・・」
「・・・・」
「もう7時だ」
 ううっ、あれからもう、五時間も経過したというのか・・・
「私帰る」
 はるかは淡々とそう言って、そのまま玄関へ・・・って、ちょっと!オイ!コラ!
「バイバイ」
「待て!俺を出してけーーーーーーーーーーっ!」

 次の日、俺は由綺に助けられた。
 ありがとう、本当にありがとう由綺!
「ん、めでたし、めでたし・・・・」
「二度とくんなっ!」