初音ちゃんが、大きなバックに手折るやら着替えやらを詰めている・・・ 家出って事はあるまい。 「初音ちゃん、なにやってるの?」 初音ちゃんは、バックのファスナーを、ちーっと閉めてから俺を見上げた。 「部活の合宿があるからね、その準備だよ」 部活の合宿・・・ 楓ちゃんの部活については良い思い出がない・・・・ 「部活って・・・なに?」 「芋洗い部」 「・・・・なに?」 「だから、芋洗い部」 な、なんだそりゃ・・・ 「な、なにする部活なのかな・・・」 俺の不安をよそに、初音ちゃんはニコニコと続けた。 「鶏をね」 にわとり!? 「鶏の羽根をね」 はね!!? 「むしるの!ブチブチブチブチ・・・・」 「それだけ!」 「うん!」 ・・・・・・ 「楽しいよ!」 初音ちゃんはそう行って、バックの中から鶏を・・・・ 「ホラ!」 こけーーーーーーーーーーーーーーっ! 「うわーーーーー」 「落ち着いて耕一お兄ちゃん!心を静めて鶏と一つになるの!そしておもむろに・・・」 ぶちぶちぶちちちちちっ! 「ね?」 嫌だ! 「嫌だ・・・」 「お兄ちゃん?」 「こんなの初音ちゃんじゃなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」 輝く涙が一粒、俺の頬をつたった。 さようなら柏木家!さようなら俺の青春! さようなら俺の初恋!!