「絶対違うと思うぞ」 「だよね、ちょっと傲慢だよね、勘違いも甚だしいこと狂骨の如し」 「『Leaf Fight97』に『To Heart』のCD−ROMつっこんで、ガディム戦が楽しくなるとか言うやつだからな」 「うわ、最悪」 「早乙女博士を殺したのも俺だとか言ってた」 「そりゃヒデェよ」 「やっぱり初音ちゃんもそう思うか・・・」 「やっぱアレだ、アレだと思う、どろ沼のアレ系!どろ!」 耕一さんと初音の、MIOという人物に対する、いわれ無き誹謗中傷を聞き流し、私は台所にいた。 居間いる二人に、りんごをむいてあげようと思う。 私だってりんごぐらい剥けるということを、知らしめなければ・・・ 何故だろうか、私の作る料理は、 「地質汚染、水質汚染、大気汚染、グリンピースへの挑戦状」とか、 「害虫駆除か、除草剤にしか使えない」とか、 「スプーンの先が溶けるのに、どうして鍋が溶けないのか不思議だ」とか、 「殺意とか、狂気とかを形にするとこうなる」とか、 「世紀末が皿の上に盛られている」とか言われている。 たしかに、私は料理が下手かもしれない。 でもそれは、ほんの少しだけ味付けを間違えた結果であって、そこまでいわれる筋合いはない。 そう、味付け以外なら・・・ 包丁さばきなら自信がある!! 私はりんごを冷蔵庫から取り出し、まな板の上に置いた。 包丁を上段に構え、りんごを見据えて・・・ 「てぇあっ!」 ずだん まな板ごとりんごを二つにする。 それをくりかえして、四等分にしたりんごに爪楊枝を・・・ 「そういえば、塩水につけるといいって言うわね・・・」 何がどういいか知らないが、梓がそう言っていたのを思い出した。 私は、鍋にりんごを入れた。まな板も混じってしまったが、後で取り出せばいいと思う。 「ふんふんふふ〜ん」 鼻歌を歌いながら、塩を振る・・ どばっ 「きゃっ」 ふたが取れて中身が全部・・・ まあ、濃い方がいいかもしれない。 でもこのままでは塩が溶けないので、私は火をつけた。 早く溶けるように強火。 「あら?これ・・・」 塩じゃなくて味の素だった・・・ ・・・ うま味が出て、いいかもしれない。 やっぱり料理の基本は『さしすせそ』ですものね。 ? 味の素は『あ』なのでは・・・・ そうか! 『さしすせそ』があるくらいなんだから、『あいうえお』もあるんだわ! なるほど・・・・、でも『あ』は味の素として、残りは何んだろうか? 『い』・・・きっと芋ね、あの甘みが、味にまろやかさを加えるんだと思う。 というわけで、放り込んだ。 『う』・・・きっと『うつぼかづら』ね、昔から、食べたらおいしそうだとか思ってた。 庭の裏に生えていた。 『え』・・・絵の具で色をつけるというのはどうだろう、きっと奇麗に違いない。 初音の部屋から、絵の具を拝借。 『お』・・・尾張名古屋は城でもつ! というわけで 初音の部屋から拝借した絵の具は、緑が切れていたので、青海苔をふって・・・ 「完成!」 だけど臭い! 猛烈な臭気が漂う! 「でも、果物の王様ドリアンも、とっても臭いし・・・」 なるほど、臭いほど美味しいというわけだ。 近寄った蝿が、ぽとりと落ちた。 これは、ものすごく美味しいに違いない! 私はうれしくなって、鍋にふたをして抱えると、居間に向かった。 「初音、耕一さん、りんごを剥きましたよ〜」