俺の友人は、某アルプスの少女を元ネタに、バイオレンスを書いている 投稿者: MIO
 今日も今日とて、俺は歩いていた。
「ヒロ!」
 ん、志保か・・・
 俺の目の前に滑り込んできた女性とは、長岡志保と言う。
「志保ちゃんにゅーーーーーーーーーーーーすっ!」
 うむ、これを聞くのも日課だな。
「ねぇ知ってる?」
「知らん」
「もう!つまらない冗談はどうでもいいのよ!それよりも、け・・・」
「今朝、雅史が水溜まりでこけてドロドロになった」
「・・・・」
「・・・・」
「じゃ、じゃあこれ知ってる?や・・・」
「矢島が、またあかりに振られた」
「く・・・」
「来栖川先輩が遅刻」
「あ・・・」
「あかりは昨日、調理実習で塩と砂糖を間違い、しかも自分で食ってぶっ倒れた」
「・・・・・・・あ」
「明日は休校」
 志保は俺の顔を忌々しげに睨む。
 どうやら、弾切れらしい。
「どうした志保、それだけか!?」
「な、なにを・・・・」
「おまえが青春を賭けて行っているゴシップ集めは、その程度のものかと聞いている!」
「ちょ、ちょっとヒロ!アタシをバカにすんのも・・・」
「では!俺の知らないことを言ってみろ!」
「そ、それは・・・」
「ならば俺は、志保ちゃんニュースなどに・・・・、用はない!!」
「!!」
「さらばだ!」
 俺は志保に背を向け、歩き出した・・・
「ま、待ちなさいよ!」
 ふっ、それでいい、それでこそ志保だ・・・・
「なにか用かな?」
「ヒ、ヒロの知らないビックニュースがあるわ・・・」
「ほほう」
 志保は、意を決したように話し始めた。
「わ、私は昨日・・・」
 俺の突っ込みが入らないか、ビクビクしながら言う志保。
「私は昨日家の階段から転げ落ちたわ!」
「・・・・」
「ふっ、どうよヒロ!さすがのアンタでも知らなかったでしょう!」
「ああ・・・、知らなかったな」
「ふふん」
「だが」
「?」

「嬉しいのか?」

「え?」
「そんな事で俺に勝ったつもりになって、お前は増長しているのかと聞いている!!」
「な、なにを言って・・・」
「ニュースはお前のライフワークのはずだ・・・、そうだろう志保?」
「そ、そうよ・・・」
「それが『私が階段から落ちたのよ』だぁ?ふざけるな!俺はなぁ、正直言って、お前のニュースなんか信用
してなかったさ・・・」
「ヒロ、あんたねぇ・・」
「ええい、良いことを言うから最後まで聞けっ!」
「・・・」
「信用してなかったけどな、羨ましかった・・・」
「え?」
「ニュースを追いかけるお前は輝いていた、青春してたぜ!」
「せ、青春!?」
「そうだ、青春だ!ニュースはお前の青春のはずだ!!」
 俺の台詞に、志保はガクガクと震えだした・・・
 気づいたか・・・
「そ、それを私は・・・、その青春を私は・・・・」

「そうだ!お前は『勝利』という名の美酒に酔うという一時の快楽のために、青春を汚しちまったんだ!人生
でたった一度の素晴らしい時間を、お前は汚しちまったんだよ!お前は青春を汚すと言う大罪を犯した人間
だ!言うなれば、人生における罪人だっ!!!!」

「ま、待って!さっきのは取り消すから!私の負けでいいから・・・」
「もう遅い!!もうお前の青春は汚れちまったんだよ!それは人生の汚点だ!!」
「汚点!?」
「お前がこれから先、どんな人間になっても!俺はこれだけは言える!お前は青春という人生で最高の舞台
で、とり返しのつかないミスをおかした人間だ!」
「あ、ああぁ・・・」
「いいかよく聞け!お前は人生の落伍者だっ!!!」
「うわあぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」
 志保が絶叫して崩れ落ちた。
「ううっ、私は・・・私はどうすればいいの!教えてよ、ヒロ!!」
「それは自分で考えるんだな、そのくらい、今のお前でもわかるはずだろ?」
 突き放すような俺の台詞に、志保が悲壮な顔をする。
「だが・・・」
「?」
「俺達はまだ若いじゃないか、志保・・・」
「ヒ、ヒロ・・・」

「青春で犯したミスも、また青春!!!!!!」

「青春で犯したミスも、また青春!?」
「そうだ!いいか志保!俺がこれから言うことを、よおく覚えておけ!」

 人生楽ありゃ苦もあるさ!!!

 俺の言葉に、志保は深々と頭を下げた。
「あ、ありがとうございました・・・・」