『うろ覚え』というのは、木の『うろ』をいちいち記憶する事だ(ウソ) 投稿者: MIO
 歩いていると、背後からよく知る声。
「浩之ちゃ〜ん」
 神岸あかり・・・
 俺は振り向かずに歩調をゆるめ、あかりが追いつくのを待つ。
「ね、浩之ちゃん」
 あかりが楽しそうに話しかけてくるが、俺は振り向かない。
「どうした、あかり」
「浩之ちゃん、ねぇ、ちょっとこっち見て」
 妙に楽しそうに言うあかりに、俺は無言。
「・・・・」
「ど、どうしたの?」

「MGザクから将校専用の証であるツノだけとって、自分の頭につけて『私、将校だよ』とか言うのは、絶対に許さん」

「え・・・」
「さらにツノを真紅で塗りたくり、『しゃあ専用』とか言うのもダメだ!絶対に許さん!そんなことをするあかりを、俺は
絶対に許せない!俺は・・・、お前を殺してしまうかもしれないが!それでもいいのか!?それでもいいなら俺は堂々
と振り向こう!お前がそこまで言うのだから!きっと予想外の楽しいことが待っているんだろうな!?」
「う、ううっ、それは・・・」
「だが!万が一!さっき言ったようなことが起こってしまったのならば!!起こってしまったのならば・・・・・」
「そ、そ、そうなったなら・・・?」
「俺は、お前を殺さなきゃいけない・・・・・・」
「そ、そんな!たかがザクのツノぐらいで!!」

「たかがツノ!!されどツノだっ!!!!」

「!!」
「あかり、俺はな・・・・、許せないものは、どうやっても許せない、俺はそういうポリシーを貫いて生きてきた!いまさら
曲げれるだろうか!?いいや、曲げれないだろう!あかり、俺は信念を曲げるべきか!?どうなんだ!」
「・・・ま、曲げないでいいと思う」
 い良し!
「振り向くぞ・・・」
「え?」
「お前が振り向けと言ったんだ!俺は、幼なじみの願いを一身に受けて振り向こう!全力をもって、死ぬ気で振り向こ
う!俺の全力の振り向き!しっかり受けて立てるんだろうな、あかり!!」
「そ、それは・・・」
「いいのか!?おれは振り向くぞ!さぁ!せーのでいいのか!?」
「あ、ああぁ・・・」
「答えろあかり!俺は振り向いていいのか!ええっ、答えろ!神岸あかりよっ!!!!!!!」
「・・・・」
「ええい、埒があかん!!いくぞあかりっ!!!!せーーーーの・・・」
「やめてぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
 あかりが絶叫し、俺が振り向く。
 俺の見たものは、泣き崩れるあかりと、地面に転がったザクのツノだった・・・
「ごめんなさい浩之ちゃん・・わ、私、なんて事を・・・・」
 あかりが涙で頬を濡らしている・・・
 ・・・・
「ふっ、気にするなあかり」
「え?」
「誰にだって間違いはある・・・」
「許してくれるの?」
 あかりの問いに、俺は笑って答えた。
「ザクのツノに対しての怒りより、お前が一つ学んだということ・・・、俺は今、それが嬉しい・・・・」
「ひ、浩之ちゃん・・・・」
「しかし!これだけは覚えておけよ、あかり!!」

 仏の顔も三度までっ!!!!

「あ、ありがとうございましたぁっ!!!」