幼なじむ 投稿者: MIO
あ、はるか見っけ。
「お〜い、はるか」
「?」
 大声を出した甲斐があり、はるかは自転車を止めて振り返った。
 俺は駆け寄る。
「おはよう、はるか」
「誰?」
「この間は代返を・・・・、なに?」
「誰?」
 ・・・・・
 いや、ぼうっとしてるヤツだとは思ってたけど・・・・
「幼なじみの顔を忘れるな!」
「幼なじみ・・・・」
 はるかは少し考えて(考えないでほしい)、ポンと手をたたいた
「ああっ!」
「思い出したか!」
「彰?」
「冬弥だっ!」
 俺が叫ぶと、はるかは思いきり訝しがりって、挙げ句の果てに俺を指差し
「嘘吐き」
「な、なにぃ!」
「本物の冬弥は、そんな変な顔じゃない」
「俺は昔からこんな顔だ!」
「本物は、眉毛が濃くて、目と鼻が大きくて、口に締まりがなくて、なまず髭を・・・・」
 想像した。
 人間と言うより、珍獣である。
「そりゃどんな顔だ!そっちの方がよっぽど変な顔じゃないか」
「だって、冬弥はそんな顔だし」
「違うって!」
 くそっ!こいつ俺を馬鹿にしてるのか!?
 それとも本気か!? 
「オイ!一体どうしたら俺が冬弥だと信じてくれんだよ!」
「裸で町内一周」
「お前は鬼か!」
「鬼と言えば・・・美咲先輩が脚本を書いた・・・」
「そうそう、あれは面白かった・・・・って、話を逸らすなぁ!」
「何の話だっけ?」
「俺が、藤井冬弥か、そうじゃないかって話だろ!」
「冬弥じゃないよ」
「だからなんでそうなるんだよ!」
「んー」
 はるかはしばらく考えた後、ぴしりと俺を指差した。 
「本物は、右肩に野球ボールの形をしたアザがある!」
「ない!」
「じゃ偽者」
「本物だぁっ!」
 俺が半泣きで言うと、はるかは妥協案を提示した。
「おしりに大きなほくろが・・・・」
 おおっ!?
 それならあるぞ!
「よおし!見てろよ!」
 俺はそう言って、ズボンを下ろし・・・
 はっ!?
「そ、その手にはのらんぞ!」
「ん、気づいた?」
「当たり前だ!」
「でも、もう遅い」
「なぬ?」
 俺は、いやな予感がして後ろを・・・・
 げ・・・
「ゆ、由綺?」
「と、冬弥君・・・・」
「ち、違うぞ!誤解しちゃダメダメだ!これは性悪はるかが仕組んで・・・」
 だが由綺は聞こうともしれない
「さ、さ、さ、さ・・・・」
「さようならっ!!」
 うわあ
「ま、待ってくれ!」
 俺は彼女の腕をつかんで引き止めると、はるかの方へと向き直った。
「はるか、俺の無実を証明してくれよ!」

「ん、誰?」

 うわあ
「不潔博士っ!」
「あああああああああっ!?」
「冬弥君の鬼畜大臣!!」
「うわあああああああああっ!?」
 
 ちりりぃん
 はるかは自転車で去っていった。
 おれは、その背中をぼんやりと見送った。

「冬弥君のオゲレツ大魔王!!!」