教えて悪いこと! 投稿者: MIO
「初音ちゃんって、本当にいい子だよなあ」
 俺の言葉に、千鶴さんは頷いた。と同時に、表情を曇らせる。
「でも、反対に心配になってしまいます」
「どして?」
「だって、あの子ったら反抗期の片鱗すら見せないし・・・」
 なるほど
「そうだね、そりゃ心配だ」
「でしょう」
「反動がきたりして」
「反動?」
「たまった鬱憤が、ある日前触れもなくドカン!」
「ドカン!ですか?」
「そ、いきなりグレる」
 初音ちゃんは、『いい子』すぎる。
 ある意味、それは健全とはいえないかもしれない。
 俺がそう言うと、千鶴さんは、そうですよね、と言って
「ちょっと、変ですよね」
 と結んだ。



「き、聞いてしまった」
 偶然、私は千鶴お姉ちゃんと、耕一お兄ちゃんの会話を聞いてしまった。
「私、変だったんだ・・・」
 知らなかった。
 すごくショック。
 しかも、しかもしかもしかもっ、このままだと、私はグレちゃうらしい。
 非行に走って、お姉ちゃんたちに迷惑をかけちゃうらしいの。
 それはダメ!
 そんなの絶対よくないよ!
 と、いうわけで・・・・
「初音は悪いことをします!」
 でも・・・
 悪いことって、何をどうすればいいのかな?


「で、何でのアタシのところに来るわけ?」
 梓お姉ちゃんが、半眼でそう言った。
「だって」
「だって?」
「梓お姉ちゃんって、千鶴お姉ちゃんに怒られてばかりだし、耕一お兄ちゃんは梓お姉ちゃんのこと『粗野で
乱暴で凶悪な野猿で、しかもレズっ気があるド変態』とか言ってるし、それに・・・」
 私が口篭もると、梓お姉ちゃんが不自然な笑顔で促した。
「それに、なに?」
「私も、梓お姉ちゃんって素行が悪そうだなーって・・・・」
 はっ!?
 梓お姉ちゃんすごい顔!
 そうか!
「梓お姉ちゃん、今の顔、どうしようもない悪党って感じがするよ!」

「出てけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」



 ううっ、梓お姉ちゃん、何も蹴らなくてもいいのに。
 私はお尻をさすりながら途方に暮れた。
 梓お姉ちゃんが駄目となると・・・・

 耕一お兄ちゃんは?
 う〜ん、お兄ちゃんは助平だから、悪いこと教えてなんていったら何されるか・・・
 千鶴お姉ちゃんは?
 ダメ!
 何故かわからないけれど、それだけはいけない気がする!
 じゃあ・・・・、楓お姉ちゃん?
 でも、楓お姉ちゃんは悪いことなんて・・・・・
「初音・・・」
「きゃあっ!」
 びっくりして振り返った私の目の前には、楓お姉ちゃんがいた。
 楓お姉ちゃんは、私の顔を見ながら。
「初音は・・・」
 いいながら私の横に回り込む。
「悪いことが・・・」
 後ろに回り込んだ楓お姉ちゃんは、耳元で
「したいのかにゃ?」
 と、囁いた。
「え、えっと・・・・」
「悪いことしたいのかにゃ?」
「し、したいにゃ」
 思わず言った私を見て、代えでお姉ちゃんはくすくす笑った。
 そうして、懐から小さな紙の箱を取り出し、私に
「初音にあげる」
 と言った。
 箱には、マジックで

『全自動悪いことましーん在中 取り扱い注意』

 赤いマジックで

『ワレモノ』

 と書いてあった。
 全自動悪いことましーんって、一体・・・・
「初音、開けてみて」
「う、うん・・・・」
 私は、恐る恐る蓋に手をかける・・・
 そして、そおっと開ける。
 その時!
 ビカーーーーーーーーーーーーーッ!!

「眩しい!」
「初音、目をそらさない」
「楓お姉ちゃん!眩しいよ!」
「ちゃんと見るにゃ」
 私は、眩しいのをこらえて箱の中を覗く
 あっ!

「か、楓お姉ちゃん!これは!?」


つづく