梓が張り付く天井は 投稿者: MIO
「梓ーーっ!そろそろ降りてこーいっ!!」
 ゴキブリのように天井に張り付いた梓は、俺から顔をぷいっと背けた。
「誕生日忘れたくらいで、天井に張り付かなくてもいいだろ!?」
 だいたい、何で天井に張り付いてるんだ、コイツは。
「うるさいっ!誕生日忘れたことはどーでもいいんだ!」
「じゃなんでだよ!」
「千鶴ね姉や、初音、楓の誕生日を覚えてて、私の誕生日だけ忘れてるってのが許せない!」
「だから誤ってるじゃないか!ゴメン!な?」
「誠意がない!」
「ブランドもんのバック買わせておいて、『誠意がない』はないだろーがっ!」
「千鶴姉が買ってきたヤツを渡しただけだろ!」
「しょうがないだろ!金がないんだよ!だいたい俺の誕生日プレゼントを気に入らなかったのはお前だろ!!」
「食いかけのミカンを『誕生日プレゼンをやろう』って渡されて喜ぶヤツがどこにいる!!」
「・・・・・猿とか?」
「私は猿かっ!?」
「近いだろ?」
「真顔で言うなっ!!」
「じゃあ、どーすりゃいいんだよ!」
「お前、それ、本気で言ってるのか!?」
「俺はいつだって真面目だ」
「ウソつけっ!」
「あのなあ、お前は俺に何を望んでるんだよ!言わなきゃわからないだろ!」
「とりあえず『俺はいつだって真面目だ』ってのは取り消せーーーっ!!」
「事実だろ?」
「お前が真面目なら私はおひゃらりょむりょくりょあちょあああっ!?」
 何だ、何だ?
「初音!下をウロチョロするな!寝癖が当たる!」
「ごめーん」
「わかればおりょひらぱむりょくれはえひゃわああああっ!?」
 う〜ん、少し色っぽいぞ。
「梓!俺はもう寝るからな!」
「ええっ!?」
「これ以上つき合ってられるか!お前は一生そこに張り付いて、天井の一部と化すがいい!」
「あっ!ちょっと・・・・」


 耕一が行ってしまった・・・・・
 何だよ!耕一のヤツ!人の気も知らないで・・・・
 私はため息をついて、冷たい天井にほおを押し当てた。
「ちぇっ・・・・、このまま天井で寝よ」
 そうだ、耕一のヤツが反省するまで、ずっと天井に張り付いてやる!
 私が決意を固めたそのときだ。

「梓姉さん・・・・・」
 
 声!?
 楓の声だ!
「楓!?」
 向きを変えると、目の前に楓がいた。
 私と同じように天井に張り付いている。
「梓姉さん、そこ、私の場所・・・・」
「え?」
「降りて・・・」
「ダ、ダメだ!私は・・・」
「そう、降りないのね・・・」
 みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「!?楓?」
 楓の目が光って・・・
 みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ぼたっ・・・・・・
「」