あかりは走っていた。 「ハァハァハァ・・・・・・・」 足元もろくに見えない暗い路地裏を、何度もつまづきそうになりながら走っていた。 (助けて浩之ちゃん!!) 声にならない叫び。 彼女が助けを求める藤田浩之という青年は、彼女の恋人であった。 しかし 『あかり、俺はチベットで爪切りの修行をするぜ!!』 そう言って旅立ったきり、消息不明だった。 だが、それでもあかりは待っている。 浩之との再会を信じ、ただひたすらに待っているのだ。 「でも、もう・・・・」 もう会えないかもしれない、立ち止まれば、追いつかれて終わりなのだ。 (そんなのいや!!) 心の叫びとは裏腹に、疲れた足はもつれる。 「きゃあっ!」 倒れたあかりは必死に立ち上がろうとするが、後ろから聞こえた奇怪な音に、自分が追いつかれたことを知った。 「ひっ・・・・」 思わず息を呑むあかり。 そこにいたのは・・・・ しゃあああああああああっっ!! ハブ!! 日本最強の毒蛇!!!! あかりピンチ!! そのとき!! う゛っぎいいいいいいいいいいいいっっっっっ!!!! 「!!」 あかりは見た、一匹のヒヒが、疾風の如きスピードでハブに飛びかかるのを。 う゛ぎっ!う゛っっぎぃぃーーーーーーーーーーっっ!! しゃああああっっっ!!! 呆然とするあかりの目の前で、ヒヒとハブの壮絶な死闘が始まる。 やがて・・・・ う゛っぎっぎぃーーーーーーーーーーーーーーー!!! ハブの首を噛みちぎり、ヒヒが勝利の雄叫びをあげた。 そして、ヒヒがあかりの方を振り返る。 「あ・・・・」 見つめ合うあかりとヒヒ。 そして、唐突にあかりは理解した! 「浩之ちゃん!?浩之ちゃんなんでしょ!?」 う゛ぎぃ・・・・・・ 「浩之ちゃん!!」 感極まったあかりは、ヒヒの胸に飛び込む。 抱き合う二人。 あかりが大粒の涙をこぼし、ヒヒが大きく口を開けた。 「浩之ちゃん!私とっても寂し・・・・・・」 がりっ・・・・・ 「という夢を見たの」 というセリフを真顔で言うあかりに、俺は嘆息した。 「さいですか・・・・」 いや、夢の内容は別にいいんだけどよ・・・・ 「それより、お前、また頭にヒヒが・・・・・」 「いいのっ!!」 いいのか!? 「だって、このヒヒは浩之ちゃんの生まれ変わりだもん」 「俺はここにいるだろうがっ!」 「あれ?」 「人を勝手にヒヒにするなっ!」 俺はいつものように、あかりの頭を軽くぶった。 ぽくっ う゛ぎっ!? あかりの頭に乗ったヒヒが、突然俺にぶたれて驚いている。 そして・・・・ う゛ぎいぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!! 「うっわあああああああああっっっっっっっ!!!!!?????」