さおりん爆弾 投稿者: MIO
 僕は、相変わらずつまらない授業にうんざりして、妄想を始めた。
 いつもなら、ここで爆弾を描くところなのだが。
 今日は別のものを描こう。
 ひらめいた!!
 
 さおりん爆弾!
 
 我ながら、何というインスピレーション!!
 この爆弾が爆発すると、世の中が沙織ちゃんだらけになると言う、非常に恐ろしい・・・・
 能書きはいい!
 僕は早速描き始めた。
 かきかき・・・・
 出来た!
 そっくりだ!
 う〜ん、まるで、デッサンでもしたかのようなリアルな沙織ちゃん。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 うなじをもっとこう・・・・・
 おおっ!
 ふ、服をはだけさせるのはどうだろう・・・・
 おおおおおっ!!
 む、む、む、胸を描いてみようかな?
 カキカキ・・・・
 上手くいかないな。
 そういや、あんまり見たことないもんな。
 ま、いいや、想像で補おう。
 カキカキ・・・・
 おおっ!?これ以外といいかも・・・・・
 出来た!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 おおおおおおおおおおっっ!? 
 これは、すごい!
 もちょっと、下まで描いてみようかな?
 いや!やめろ祐介!そこまでいったら、もはや犯罪!立派なセクシャルハラスメントだぞ!!
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 でも、ちょっとならいいかも。
 どうせ、誰も見てないしな。
 よしっ!僕の才能の全てをこの絵につぎ込む!!
 どおりゃあああああああっっ!!
 
 カリカリカリカリ・・・・・・・
 
 できた・・・・・・・・・・・・うをおおおおおっっ!!?
 あ、改めて全体像を見ると!これは!スゴイ!
 むむむっ、すごすぎる!僕の右手はまさにゴットハンドといえよう!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 横に吹き出しを描いて・・・
『ゆーくん、私、カラダがとっても熱いのよ』っと・・・
 うはああっっ!!!!!

「おいっ!長瀬!お前鼻血出てるぞ!」
 げっ!
 先生の言葉に、僕は鼻を押さえる。
 うわっ!手のひらが真っ赤だ!
 押さえた手のひらの間からも、真っ赤な血の雫がぽたぽたと落ちる・・・
 うへえ!スゴイ量だぞ!
 人体の神秘に、ちょっと感動。
「保健委員!長瀬を保健室へ連れってってやれ」
「は〜い」
 クラスの笑い声を聞きながら、僕は教室を出た。
 笑いもんになりながらも、なぜか僕の心は満たされていた・・・・
 ああ、意識が遠くなるなあ・・・・
 うつろな気持ちの中で、僕は呟いた・・・・
「おそるべし、さおりん爆弾」
 と。

き〜んこ〜んか〜んこ〜ん
 がららっ!
「ゆーーーーーーくんっ!今日も元気かニャ〜〜!!」
 あれれ?
 ゆーくん、いない。
「あら、長瀬君なら保健室よ」
 太田さんが教科書を机にしまいながら言った。
「ゆーくん病気なの!?」
 私の言葉に、太田さんは
「ふっ」
 と鼻で笑うと。
「そうかもね」
 と言った。
 あいまいだなあ・・・
 あれ?
 ふと見ると、ゆーくんの机の上に赤い血のあと。
 血のあと!?  
「太田さん!あれあれあれっ!」
「ああ・・・・」
 太田さんは、再び鼻で笑うと。
「拭いといてね」
「私が!?」
「他にいないもの」
 う〜ん
 私はしぶしぶ、雑巾を持ってゆーくんの机へ向かう。
「あれ?」
 開かれっぱなしのノートに、何か書いてある。
 ペンケースで隠れてたけど・・・・何だろ?
 私はペンケースをのけた。
 そして見た。
「・・・・・・・・・」
 な、な、な、な・・・・・・・・
 ぶっ殺す!!
「祐介ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!」


 がららっ
 保健室のドアを開ける音に、僕は目を覚ました。
 どうやら寝ていたらしい。
 スゴイ夢だった。
「・・・・・・・・・・・」
 どすどすと歩いてくる人影。
 カーテンを乱暴に開けて、現れたのは・・・・
「あれ?沙織ちゃん?」
「・・・・・・・」
「お見舞いに来てくれたんだ」
「・・・・・・・・・・・・」


「ねぇ、香奈子ちゃん?」
「なに?」
「さっき保健室で変な音が聞こえたの・・・・・」
「どんな?」
「ゴキゴキゴキッって音と、動物の雄叫びと、男の人の悲鳴」
「そう」
「うん、そうなの・・・・」
「・・・・・・」
「そうだ、今度の日曜プール行かない?」
「いいわね、でも水着買わなきゃ。瑞穂も買うでしょ?」
「わ、私は前のでも・・・・」
「去年買ったサイズの大きかったヤツ?」
「う、うん」
「だめだめ、多分今年も着れないよ、大きすぎて」
「も、もう!香奈子ちゃん!!」
「アハハ、冗談よ」

 ごきゃごきゃっっ!!
「ごめんなさいごめんなさーーーーいっ!!」
「まだまだーーーーーーーっ!!」
 ごきごきごきぃっっっ!!!
「どひーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!」
 僕は、薄れゆく意識の中で、この話のオチになるであろうセリフ呟いていた。

「お、おそるべし、さおりん爆弾・・・・」

 ごきゃああっ!! 
「ぐはあああっ!!!」
 がくっ