冬の季節 投稿者: MIO
 あーーーーーーさーーーーーーーーっっ!!
 朝だ!朝、あさ、あさ、あさ・・・・・・・あさだみよこ!!

 というわけで。

 朝だ。
 それは十分承知している。
 ただ・・・・、スゲー寒い。 
 冬だしなあ。
 こんな寒い朝は、あかりも学校を休みたいに違いない。
 あかりが休みたいんだから、学校のみんなも休みたいだろう。
 ということは、今日は学校は休みなわけだ。
 もちろんあかりも起こしに来ないし、俺もベットから顔を出す必要がない。
 やったあ・・・・
 「ぐー」

 「ひっろゆっきちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」

 「・・・・・」
 どちくしょう。
 やっぱり来るのか。
 俺は泣く泣くベットから出て、着替えて、のろのろと階段を下った。
 んだよう、また、1時間も早いぞ。
「もう、遅刻しちゃうよ」
「あかり、今日は学校休みなんだぞ」
「ええっ!?ウソでしょうっ!」
「ウソ」
「やっぱり」
 チッ、バレバレか。
「さ、行こう!」
「あかり・・・・、何でそんなに元気なんだよう」
「さあ?」
 あかりは笑って、玄関の外に飛び出していった。
 
 犬は元気に庭駆け回る・・・・・
 
 なるほどなあ・・・
 とすると、今頃楓ちゃんはコタツで丸くなってるのかな?
「浩之ちゃん!早く早く!」
 ちっ!キャラが違うぞ、あかり。

「それで志保がねえ・・・」
 俺はますます元気になるあかりの話を聞き流しながら、いつもの坂をのぼる。
「聞いてる?」
「聞いてない」
「うそ?」
「これはホント」
「がーーーーん」
「おまえさあ・・・」キャラが違うって
 と、言おうとした俺は、言葉を飲み込んで立ち止まった。

 行き倒れだ。
 
 今時行き倒れ、しかもうちの学校の制服を着てる。
 女生徒だ。
「浩之ちゃん!」
「おうっ!」
 俺は、雪に埋もれる女生徒に駆け寄る。
「おいっ!大丈夫か!」
 抱き起こすと・・・・
「理緒ちゃん!?」
 そうだ、間違いない。
 俺の腕の中でガチガチと震えているのは、同情よりも金が欲しい理緒ちゃんだ。
「がちがち・・・・」
「やべっ!早く温めないと!」
「火にくべよう!」 
「くべてどうするっ!」


 学校の給湯室。
 お湯に浸して解凍された理緒ちゃんは、ジャージに着替えて、保健室のベットで寝かせられていた。
「ごめんね、迷惑かけて・・・・」
「何言ってるんだよ、このくらい何でもないって」
 俺の言葉にあかりが頷く。
「そうだよ、それよりなんであんな所に?」
「じ、実は・・・」
 理緒ちゃんは話し始めた。


「おかあさん!もう薪がないわっ!」
「な、なんだって!?」
「リオネーチャン、寒いよう・・・」
「ああっ!しっかり!」
「リオ・・・・、父さんはもうダメだ」
「寒いよう」
「ああっ・・・・・幻が見えるよ」
「お母さん!?」
「うふふふ・・・・、これだけお金があれば、美味しいものがお腹いっぱい・・・・」
「しっかりしてったら!!」
「りおーーーーっ!見ろ!百万円だぁ!」
「寒いよう」
「ああっ!!トタンが、最後の防衛線がっ!!」
「見てごらん理緒、夢にまで見たステーキだよう」
「百万あれば田園調布に家が建つぞう!」
「寒いよう」
「みんな!マラソンよ!走って体温を上げないと!」
「寒いよう」
「さ!みんな走って!生きるために走るのよっ!!」
「寒いよう」

「で、家族で一晩中走ってたのか?」
「うん」
 なんて家族だ。
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだよ、あかり」
「他の家族の人は!?」
 あ・・・・
「いけない!忘れてた!!」
 おいおい・・・

 場所は変わって

「でさあ、ちょームカついた私は、電光の如き志保ちゃんキックを・・・・ちょっと聞いてるレミィ」
「聞いてるヨ」
「松原さんは!?」
「え、あ、ああ、えっと・・・・」
「姫川さん!?」
「え!?・・・・ああ、『レッツゴー三匹』の真ん中の人の名前が、わからないって話でしたよね?」
「違うわよ!・・・・でも、なんて名前だったかしら・・・・・」
 考え込んだ志保は、いきなり何かに足をとられる。
 ぐきっ
「きゃああああっ!!」
 ずべしっ!
 頭から雪の中につっこむ志保。
「大丈夫ですか!?」
「シホ、ダイジョーブ?」
「いたたたた・・・・、誰よっ!こんな所になんか置いたのは!」
 そう言って、志保は足元に転がっている塊を雪の中から引っぱり出す。

「寒いよう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「寒いよう」
 
「っきゃあああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」  
 悲鳴が響いた。

「寒いよう」