結末選択式SS 柳川編 投稿者: MA
俺はとどめの一撃を柳川に加えようとした。だが、その時俺の予想だにしなかったことが起こった。

梓が怒りだしたのだ。
「こら〜、耕一。何であたしの話じゃなくて柳川の話なんかを選ぶんだ」
俺は呆気にとられていた。今までのシリアスな展開は何だったのだ。柳川も怒っていた。
「おい、そこの小娘。柳川の話なんかとは何だ。聞き捨てにできんな」
柳川は怪我のことも忘れて、梓に襲いかかった。俺は呆然としてそれを見ていた。
「うるさい、てめえなんか所詮悪役じゃないか。引っ込んでろ!」
「言ったな小娘。お前の方こそ、四姉妹中で一番人気ないんじゃないのか!」
柳川は梓に決して言ってはいけない言葉を言ってしまった。柳川のその言葉を聞いた瞬間、梓の力は怒りのエネルギーで何倍にも膨れあがった。
「はぁ、はぁ、ヒロインの意地ってやつを見せてやるよ」
梓はそう言うともっとも強力な攻撃、ヒロインの意地を使った。

柳川は一撃でノックアウトされた。

梓はこちらを振り返ると、微笑みながら、俺に問いかけた。
「こ〜う〜い〜ち〜。まさか、あたしの話より柳川の話を選んだりしてないよね」
梓の目は笑っていなかった。いや、怒りに燃えていたと言った方が適切だろう。だが、俺も引き下がる訳にはいかなかった。このコーナーには、一つ前の選択肢に戻る、という便利な機能はないからだ。俺は梓を説得しようとした。
「梓、落ち着け、落ち着くんだ」
俺はこういう場合の定番の文句で時間を稼いだ。さらに、梓をなだめるために話し続けた。今はそうするしかなかった。今の俺では梓に勝てない、俺の狩猟者としての本能はそう告げていた。
「お前は立派なヒロインじゃないか。ちゃんとHシーンもあるし、主人公とのハッピーエンドだってある。それに比べで、俺達の次回作で出てきた某財閥の姉妹の妹なんか、消し忘れた一枚のHCGしかないんだぞ。お前と比べりゃ、雲泥の差じゃないか」
俺のその言葉を聞いた梓は顔を引きつらせた。あれ、俺なんか悪いこと言ったっけ、と思った瞬間、梓が話し始めた。
「確かにあたしの方が出番は多い。でもね、耕一、あんたは大事な事を忘れてるんだよ。分かるかい、耕一」
梓はそう言うと俺を睨みつけた。俺は何の事か分からず、首を横に振った。次の瞬間、梓の力はそれまでより更に数倍に膨れあがった。
「あの娘には、人気があるんだよ。最近行われた人気投票でも、一位になったりしてるんだよ。分かるかい、耕一。出番が少なくっても人気があれば良いんだよ。あたしなんか、Hシーンとかで結構ひどい目に会ってるのに、人気が無いんだ。分かるかい、あたしの気持ちが。いや、あんたたちみたいな主人公には決して分からない気持ちさ。あたしだって、ほかの女性キャラに負けるのならあきらめもつく。だけど、あのただの悪役にまで負けたとあっては、我慢できないんだよ。耕一、あんたには死んでもらうよ」
梓はそう言うと、またしても最凶の攻撃であるヒロインの意地を使った。俺はその攻撃を防ごうとしたが、失敗し壁に叩きつけられた。
俺があまりの衝撃に気絶する寸前、梓の声が聞こえた。
「こうなったら、ほかの女どももみんな狩ってやる。そして、人気投票で一位になってやるんだ!」
どうやら、梓の中の狩猟者が目覚めたようだった。

<柳川編? 終>