それはお風呂をいただく為に階段を下りようとした時でした。 廊下の角から小さな話し声が聞こえてきました。 「耕一さん、今夜も私の部屋で……」 「あ、ああ……わかってるよ」 「じゃあ、待ってますから……」 あ、あの大人しい楓が…… なんて大胆な…… でも、あんなことが有った二人ですから…… その夜、私は悪いと思いつつとなりの部屋に聞き耳をたててしまいました。 パァン…… 最初に聞こえてきたのはそんな音でした。 「あっ……違う」 パシィン! 「こ、こう?」 「そうじゃなく……今のは痛いだけです。もっとソフトに」 「じゃ、じゃあ……」 ペチッ…… 「んっ……今度はもう少し強く……」 ペシッ 「そうじゃなくて……」 スパァン! 「これくらいです」 「……楓ちゃん……上手いものだね」 「耕一さんももう少し慣れてください……」 もう我慢できません。 翌朝、梓と初音が家を出た後、居間で二人を問い詰めました。 「あ、あなたたち! さ、昨夜いったい何をしてたんですか!」 耕一さんはきょとんとした顔で、 「ツッコンでただけだよ」 少しの間があって、楓が、 「……耕一さん……今のはボケです」 とだけ呟きました。