「今ごろ楓も困ってるでしょうね……」
千鶴はひきつった顔でテーブルについていた。
「……そりゃそうだろ……」
言う梓の顔も泣きそうだった。
そこに初音がげんなりした顔でやってきた。
「……またか……いいかげんにしろよな」
食卓にはご飯やおかずの代わりに、腐った豆が並んでいた。
「ちっ! もう納豆はいいじゃねえか!」
初音は盛大な舌打ちをもらすと、自分の部屋から持ってきたキノコを食卓(自分の前)に並べた。
「しょうがないじゃないの!! どれだけあると思ってるのよ!!」
千鶴は睨み付けながら叫んだ。
睨み付けたのは初音ではなく、その庭に山ほど積まれたものをだった。
ゆうに2tトラック一個分の量はある。
しかもご丁寧にダンボール箱などには入っていない。いろいろなスーパーの袋に入っていた。普通に発泡スチロール(?)に入ったものや、藁で包まれたものもある。どうやら自分で買ったらしい……
「……捨てるか、そろそろやばいしな…………食事は楽だったけどな……」
梓はここ3日の食事を思い出して呟いた。
捨てるといっても、どこへ……
こんなものを大量に捨てるのは、あきらかにあやしいし……
3人ともいっそ楓のところに送り返そうと思ったが、これ以上耕一に迷惑をかけるのは……
それに、三人は馬鹿な事をしたと思っていた。
今現在、向こうには楓が2人いるようなものだからだ。
「で、どうするんだよ……」
初音はその言葉で今日もまた静かな食事を演出させた。
『2 of 2?』
「で、大学は行かないの?」
「行くわよ。あなたが家を出てくれたら安心して行けるもの」
エディフェルはほぼ毎日のように来栖川重工にメンテを受けに行っていた。
それというのも、楓との争いのせいなのだが……
最近では耕一もわかってきたのか、なるべくどちらかだけとは会わないようにしていた。
そうしないと、アパートに住めなくなるからだが……
そのおかげで最近では周りの苦情も減ってきているようだった。
(というか、人が減ってきているのかもと、耕一は少し嫌な考えを浮かべる事もあったが……)
そんな耕一の基本的な一日はこうだ。
朝、耕一はバイトにでかける。
その後を追うように二人も家をでて、楓は大学に、エディフェルは来栖川に向かう。
夕方過ぎには家に戻る耕一だが、そのおかげで友達付き合いは減ってきてた。
そして、就寝まで二人の些細な争いを抑えるのだった。
ただ、耕一は知らないだろう、夕方前にその日の料理を争っている二人がいる事を……
「今日の私は凄いわよ……料理の○人、道○六三郎よ」
「甘いわね……私は中華の大御所、周○徳よ」
そうやって日々生活費が不自然なほど減っている事を、耕一は知らない。
ただ、不思議な事に、楓の実家のお金もそれにもまして減っている事も……
と、そんな生活に慣れたころだった。
TVを見ていた耕一は愕然となった。
隣りにいる二人の同居人も、遠く離れた三人の姉妹たちも同じだった。
『え、この度、来栖川から低価格な新型メイドロボットが発表されましたが……』
同時に4タイプ発売されるそうだが……
『家事全般をそつなくこなす黒髪のお姉さんタイプ』
『女性らしい気遣いの出来るボーイッシュタイプ』
『寂しがりやで甘えんぼうで、純真無垢な妹タイプ』
そして、
『あなたの良き相談役になってくれる才色兼備タイプ』
それから半年とたたないうちに、柏木四姉妹は日本中で有名になるのだった……
(終わり)http://www3.osk.3web.ne.jp/~mituji/