10万の重み 投稿者:OLH
100,000 hit 記念SSです。



=== 10万の重み ===

 それはアルバイトの帰り道。弟の良太が迎えに来たので一緒に歩いていたと
きのことでした。
「姉ちゃん! あれなんだろう」
「ちょっと、良太! 走るとこけるわよっ!」
「姉ちゃんみたいな、どじはしないよ!」
 生意気な弟の言葉ですが、いつもこけてばっかりの私は苦笑するしかありま
せんでした。
 弟が見つけたのは茶色の財布でした。二人で中を確認すると……中には手の
切れそうな1万円札が10枚。わたしと良太は思わず顔を見合わせてごくりと
つばを飲み込んでしまいました。
「ね、姉ちゃん……これ……どうしよう?」
「ど、どうしようって……」
 それだけのお金があれば、どれだけ生活が楽になるか。良太の穴の空いた靴
下も買い替えてやれるし、小さくなった体操着もかえられる。私だって、ぶ、
ぶ、ぶ、ブラジャーを……はっ、いけないいけない。他人様のものに手を付け
るなんて。
「……も、もちろん、警察に届けましょう?」
「……そうだよねっ! こんな大金落としたら困ってるよね!」
 私はにっこり笑って良太の頭を撫でてやると、良太の手をつないで近くの派
出所にむかいました。

 派出所にはちょうど財布を落としたおじいさんが来ていました。
「ありがとうよ、嬢ちゃん、坊っちゃん」
「俺は良太だ」
「そうかい、良太君や。ほんとにありがとな」
「おう、気にするな! 人間として当然の事をしたまでだ!」
「あ、すいません。弟が生意気なことを言って」
「いやいや、かまわんよ。それよりいい弟さんをお持ちじゃな」
「えっへん」
「こら……あ、すみません。そんなことないです。生意気だし、やんちゃだし」
「いやいや。この子は10万の重みを知ってるからの」
「重みですか?」
「そう。一口に10万と言っても1から数えたらとんでもない数になるじゃろ」
「はあ、そうですね」
「そういうことじゃよ。そのことを忘れん限りこの子は立派に育つじゃろ」
「はあ」
「俺は良太だ!」
「そうそう。良太君。これからもこの調子で頑張れな」
「おう! まかせとけ」

 優しい目をしたおじいさんから、ちょっといい話を聞けた気がして、なによ
り良太を誉められたのが嬉しくて。私はその日は幸せでした。

=== 了 ===



なんとなく思い付きだけで書いちゃったのでまとまりきってませんが(汗)
とにかく、10万アクセス、おめでとうございます!