「うそ」 投稿者: OLH
TH、志保の話です。
季節ネタですね。



=== うそ ===

ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる…

 はぁ。アタシってば、なんでこんなにどきどきしてるんだろ。たかがヒロに電話
するだけだっていうのに……
 な〜んてね。どきどきしてるのは本当だけど、理由なんてわかりきってるもんね。
 ちょっと乙女チックな夢をたまには見てみようかと思ったけど、そんなのあたし
の性分じゃないわね。

がちゃ

「もしもし、藤田ですが」
「あ、ヒロ〜〜。あ・た・し」

がちゃ
つー、つー、つー…

……あいっかわらず、いい根性してるわね、アノヤロ。


ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる…

「もしもし、藤田ですが」
「いい、今度用件も聞かずに電話切ったら、アンタが女の子をもてあそんだあげく
ゴミのように捨てたって話をばらまくわよっ!!」
「……おまえ、よくそんなガセ、流す気になれるな」
「あら、あながち嘘じゃないわよ。アタシが握ってる情報だけでも、アンタの事を
あきらめきれずに泣いてるって娘が複数いるって話よ」
 例えば、ここにね。
「へっへーんだ。そんな娘がいるなら紹介して欲しいもんだね」
「なによぉ。全然信じてないわね」
「たりめーだ。誰がお前の話を信じるってんだよ」
「むっかー。腹たつわね、そのセリフ」
「それより、用件ないんだったら、もう切るぞ」
「だから、用事があるんだってば」
「だったら早く言え。3秒以内に言わなければ切る」
「小学生並みな事、言ってないでよ。まったく」
「じゃ、切るぞ」
「だーかーらー、用事があるって言ってるんでしょうがっ」
「だーかーらー、早く言えって言ってんだっ」
「まったく、せっかちなんだから。ま、その事はいいわ。あのね、ちょっと買い物
に付き合って欲しいのよ」
「買い物? なんで? だったらあかりにでも頼めばいいじゃねーか」
「ちょっと従兄弟の男の子にプレゼント買わなきゃいけないのよ。で、その見立て
をアンタにやって欲しいってわけ」
「なんで俺なんだよ。雅史でもいいじゃねーか」
「そいつの趣味が結構アンタに似てるのよ。だからアンタに見立ててもらうのがい
いかなと思って」
「めんどくせーなー。じゃ、昼飯そっちのおごりなら付き合ってやってもいいぜ」
「う。しかたないわねぇ。そのかわり、ヤックよ」
「うーん。ま、いいか。じゃ、いつもどーり駅前に行けばいいんだな?」
「そ。じゃ、待ってるから」

がちゃ

 ふぅ。まさか電話するだけでこんなに疲れるなんてね。
 やっぱり、どっか気負ってるんだわ。
 ま、何はともあれヒロを呼び出すのはうまくいったんだし、本番はこれからね。

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「で、プレゼントって、どんなのが良いんだ?」
「あ、任せるわ。あんたが貰って嬉しいやつ選んでよ」
「なんだよ、随分アバウトだな」
「言ったでしょ。趣味なんかがアンタにそっくりなんだって。だからアンタが貰っ
て嬉しいやつなら、なんでもOKなのよ」
「うーん。予算は?」
「あんまり高くないやつ。できれば2、3千円で収めてくれると嬉しいんだけど」
「ま、そんなもんだろうな」
「で、アンタ、どんなものが欲しいわけ?」
「そーだなー。どうせならシンプルな実用品がいいかな」
「例えば?」
「……思い付かん」
「アンタねぇ……」
「ま、そこらへんうろつきながら見てれば、何か見つかんだろ」
「はいはい、じゃあまずは歩きまわりましょ」

 それに、買うものが決まってて、すぐにこの時間が終わるってのも寂しいしね。

---

 買い物も済んで、ヤックに到着。
 さぁ、いよいよ、本番中の本番ね。
 気合入れなきゃ。

「で、そいつ、どんな奴?」
「へ? そいつって?」
「だから、そのプレゼント渡される奴」
「あ、ああ。それならさっきから言ってるじゃない。アタシの従兄弟で、趣味なん
かはあんたにそっくりなの」
「で、なんで、そいつにプレゼントなんだ?」
「入学祝いなのよ。今度、高校に入る」
「なんだよ。そーゆー事は先に言えよな。そしたらもう少し他の物だって考えられ
たかもしれないだろ」
 言える訳ないじゃない。今、思い付いたんだから。
「あ、ごめ〜ん。忘れてたわ。アタシは最初っからそのつもりだったから」
「まったく、うかつなやつ」
「なによぉ。アンタだって、その事聞いたの今じゃない。アンタだって十分うかつ
よ」
「普通はそっちから言っとくもんだ」
「今更気がつくアンタだって同罪よ」

 う〜っ。
 ハンバーガー食べながらにらみ合う、いつもと同じ楽しい時間。
 でも、それもそろそろ終わっちゃう。
 買い物が終わった以上、もうヒロはアタシに付き合う義理なんかないもんね。
 今日はいつもと違う時間にしたかったからヒロの奴を呼び出したってのに。

「でさ、アンタの誕生日、これと同じ物でいいわね?」
「なんだよ、いきなり? まさかそんなリサーチのために俺を呼び出したのか?」
「どうだかね」
「はっはーん。実はオマエ、俺に惚れてんだろ」
 アタシの事をからかってる、って態度がミエミエね。
「そうよ」
「へ?」
「アタシ、ヒロの事、好きなの」
「おいおい、止めよーぜ、そーゆー冗談は。志保には似合わねーよ」
「冗談じゃないから」
「止めろって」
「ヒロの事、本気で愛してるの」
「……」
「ヒロの事、誰にも渡したくない」
「……」
「ヒロ……」
「……」
「……なんてね☆」
「おいっ!」
 あはは。怒ってる、怒ってる。
「どう、少しはどぎまぎした?」
「するかっ」
 それが嘘だってのは、態度に出てるって。
「ふっふっふ。アタシの演技力も大したもんね」
「大体、『冗談じゃないから』なんて言っておいて」
「そう、冗談じゃないけど嘘よ」
「オマエなぁ」
「さて、今日は何月何日?」
「……4月1日」
「というわけで、志保ちゃんのどっきりカメラでした〜」
「……たち悪いぞ、その嘘」
「やっぱりどぎまぎしてたんじゃない」
「だぁーーーっ、してねーしてねーしてねーーーっ!!」
「へっへーんだ」

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 そう。
 今日はエイプリルフール。
 うそをまぶしたアタシの本心。
 本心をまぶしたアタシのうそ。

 ちょっとは気付きなさいよね、まったく。

=== 了 ===



てなわけで。
いや、今日中に出せそうで良かったです。
なにせ、この話思い付いたの4/1に入ってからですから。

でまぁ、宣言しときます。
絶対、誰かとネタかぶってます。かなりありがちな話ですから。
まあ、見せ方とかで自分の色が出せてればいいんですけど。


あと、メールアドレスを変えました。
(いや、今までと一緒なんですけどね)