(無題) 投稿者:OLH
以下の話は痕のネタばれを含む可能性があります。
そういうのが嫌な方はすっ飛ばして下さい。

また、この話は以前書いた「お赤飯」の分岐シナリオですので、まずはそちらから
お読みください。
なんですが、ずいぶん過去の方にいっちゃってるので、もし消えちゃってて、かつ
読みたい方がいらしたらメールください。



=== お赤飯 追加シナリオ1 初音のさいしょ!! ===

(初音エンドの後の場合、強制分岐)

「あ、今日は初音ちゃんのお祝いなんですか。でもいったいなんの?」
 誕生日でもないよなあ、とか考えつつ聞いてみると千鶴さんはクスっと笑って
「あの娘もやっと一人前ってことですよ」
 とこたえた。
 それを聞いて俺はなんとなく気恥ずかしくなってしまった。
 そして照れ隠しにつぶやいた。
「そっかー、初音ちゃんもようやく一人前…」
 ここまで言って俺はあることに思い至り硬直してしまった。
「それじゃ呼んできますね」
 と言って立ち上がろうとする千鶴さんを俺は慌てて腰を浮かしながら呼び止めた。
「あ、ち、千鶴さんっ。俺が呼んできますよ」
 あんまりにも慌てた俺の態度にちょっと不審そうな顔をしたが、それでもすぐに
にこっと笑うと
「そうですね、その方があの娘も喜びそうですし。お願いしますね」
 そう言ってくれた。

 俺は初音ちゃんの部屋の前まで来たが、部屋の中からかすかにうめき声みたいな
音が聞こえてしまい、なんとなく声をかけづらくなっていた。とはいえ、いつまで
もそうしているわけにもいかないので、思い切ってドアをたたいてみた。
「初音ちゃん、ご飯の支度ができたってよ」
 すると中から
「え? あれ? お兄ちゃん?」
という声がして初音ちゃんが顔を出してきた。
「久しぶり」
 そう声をかけてよく見たら、初音ちゃんの目は少し赤くなっていた。
「わあ、お兄ちゃん来てくれてたんだね。嬉しいな」
 初音ちゃんはほんとに嬉しそうな表情で俺にそう言ってくれた。しかし、その中
にほんのわずか苦しみのようなものを感じてしまい、俺はあの時の事で初音ちゃん
が泣いていたのだと確信してしまった。
「ごめんっ」
「え?」
 突然謝った俺を初音ちゃんは、きょとんとした顔で見た。
「その、この前の洞窟で……、初音ちゃんがまだ…だなんてあの時は知らなかった
もんだから。ほんとにごめんっ」
「え、そんな。いいんだよ。だって、大好きなお兄ちゃんとだったんだから…」
 『あの時』の事を思い出したのか初音ちゃんが顔をぽっと赤らめながら言った。
「いや、それじゃ俺の気がすまないんだ。おわびに俺ができる事なら何でもするか
ら言ってくれ」
「ううん、ほんとにいいんだよ」
「いや、よくない。初音ちゃんが死ねって言うなら俺は死んだってかまわない」
「え、でも…」
「なあ、初音ちゃん、俺にお詫びをさせてくれ」
「じゃあ…」

 次の瞬間に起こった事を俺は覚えていない。ただ
「お兄ちゃんがわたしのさいしょの獲物になってくれたなんて…」
 という幻聴だけが、何故か俺の耳に残っていた。

=== 了 ===



おもいっきり蛇足な話ですが、前回の自分の後書きを読みなおしていて妄想が暴走
したもんで、うっかり書いてしまいました。(ど外道のあたり)

ちなみに当然のことながら耕一はこれしきの事では死んでません。ただ、『柏木家
の女性に関する秘密』を説明がてら手当をしてくれている千鶴さんの前でうっかり
『あの時』の事を匂わしてしまい、例によって『あなたを殺します』になって惨殺
されかけたりしました。
なんてのも妄想したんですが、蛇足にさらに尻尾をつけるのもなにかなってんで、
ここで終わらせました。
(というのは表向きの理由で、本当はそこまで書く能力が無かっただけ)



でもって、さらに別の妄想。



=== お赤飯 追加シナリオ2 柏木家の掟 ===

(2回目以降出てくる分岐)

 一旦座った自分の席から初音ちゃんはすっくと立ちあがると、おもむろに縁側に
向かった。ふと気がつくと・・。

A、初音ちゃんの手には、いつのまにか鶏がつかまれていた。
B、いつのまにか中庭にクマがいた。

---

B、いつのまにか中庭にクマがいた。


「く、くまっ!? は、初音ちゃん、あぶないっ!」
 いつのまにか中庭にクマがいた。
 びっくりして叫ぶ俺を尻目に初音ちゃんは中庭に下り、クマの方に向かっていっ
た。慌てて初音ちゃんを止めようとした俺に鋭い声がかかった。
「待って下さい、耕一さん!」
 ふり返るとわずかに厳しい表情をした千鶴さんが俺の腕をつかんでいた。
「これは柏木家に代々伝わる掟なんです」
「掟だって?」
 そして千鶴さんは何とか振り切って初音ちゃんの方に向かおうとする俺を必死に
押さえながら、掟について説明をしてくれた。
「柏木家の者は皆、ああしてクマの試練に立ち向かわねばならないのです。鬼の血
を引くものは素手でクマを倒せるようでなければ一人前ではないのです」
 あまりの事に何もいえなくなっている俺に千鶴さんは説明を続ける。
「正々堂々と名乗りを上げクマと一騎打ちをし、見事打ち倒した者だけが柏木家で
は一人前とみなされるのです。もちろん不意打ちや武器を使う事は許されません。
そしてクマを倒さないうちはこの隆山から出る事はできないのです」
 あまりのことに頭がパニクってるうちに、戦いは始まっていた。

「うるああぁぁぁぁぁーーーーー!」
「ふごごふぬぅーーーーー!」

 まずは相手を見据え威嚇をしながら、ゆっくり円を描くように移動する2人。

「さあ、いよいよ始まりました。世紀の対決、柏木家恒例成人の儀式、クマとの一
騎打ちっ! 実況は私、柏木梓が勤めさせていただきます」
 いつのまにか準備された放送席で梓が実況を始めていた。
「解説は柏木千鶴さん、柏木楓さんのお二人です。さらに今回は特別ゲストとして
柏木耕一さんもお招きしております」
「よろしくお願いします」
「……」(ぺこ)
「おい、ちょっと待てぃっ。いつのまにそうなったっ!?」

 バシィ!

 俺が文句を言おうとしたその瞬間、リングですさまじい音がした。
「おおっと、これはいきなり両者激突だぁっ!」
 慌ててそっちを見ると、いっきに間合いをつめたクマが斜め上から腕を降りおろ
したのを、左手一本で初音ちゃんが受け止めているところだった。

「ふっ、あまいんだよ」

 余裕の笑みを浮かべる初音ちゃん。

「これは既にセイカクハンテンタケの影響が出てますねぇ」
「はい、いつもの初音のままでしたらクマの試練は受けさせないところなのですが、
セイカクハンテンタケのおかげでかなり乱暴になる事がわかりましたから。この際
これを逆手にとって試練を受けさせる事にしたんです」
「武器使うのはだめなのに、薬物使うのはいいのかよ」
 そうつぶやいた俺の言葉が聞こえてしまったらしく、
「はい、掟には書いてありませんから」
 千鶴さんはにっこり笑ってそう言った。
 あ、なんか肌寒い。
「ああ、なるほどぉ、でしたらかなり有効な手段ですねえ」
 慌てて俺は相槌をうった。

 そうこうしてる間にリングでは状況が一変していた。
 受け止めた腕を逆手にとり、そのまま初音ちゃんは関節技をかけようとしたが、
さすがにクマと見た目*学生な初音ちゃんでは体格差がありすぎ、これが不発に終
わってしまっていた。

「ああ、いけませんねえ。いっきに逆転を狙った初音、これが不発に終わってしま
いました」
「持久戦になると初音の方が不利になってしまいますね」
「……」(こく)

 しかしクマは持久戦を望まなかった。

「ふごごおおおぉぉぉぉぉーーーーー!」

 クマは、また同じように斜め上から腕を降りおろした。

「ふ、そんな攻撃じゃ役に立たないのがわからねえのか」

 と、これも同じように余裕で受け止める初音ちゃん。
 しかし今度はこれを反動に逆に回転してヒールキックを食らわすクマっ!
 さすがにこれは受けきれず、初音ちゃんはリングの端まではじき飛ばされてし
まった。

「ちくしょおおぉ、油断したっ!」

 慌てて起き上がり体勢を立て直そうとした初音ちゃんだったが、クマの方が一瞬
早く初音ちゃんにのしかかった。思いっきりあがいていたが、さすがに体重差があ
りすぎるのか初音ちゃんはなかなか抜け出せそうに無かった。

「くそぉ、ならばっ! おねがい、ヨ…」
「だめっっ!」

 なにか理不尽な技を使おうとしたらしい初音ちゃんを千鶴さんは制止した。

「自分の力だけで試練をはたさなければ、一人前とはみなされないのよっ」
「ちっ」

 舌打ちをした初音ちゃんがパワーを集中し始めた。そして

「うるあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」

 なんとクマを持ち上げ始めた。

「あのクマと変身した千鶴さんとどっちが重いのかなぁ」
 何故かそんな疑問が浮かんだ。
「やっぱり…」
「……」(ちらっ)

「あ な た た ち、 な に か 言 っ た か し ら ?」

「いえ、何も言ってませんっ」
「そう、何も言ってないって、うん、言ってないっ」
「……」(ふるふるふる)

 そんなお約束なやり取りをしてるうちに、初音ちゃんはクマを頭上に持ち上げ、
そのまま空中高く飛び上がった。そして瞬時に体勢を入れ替えクマの両足をがっし
とつかみ、両足で脇のところを踏みつけるようにしながらリングにたたきつけるっ!

「こ、これは、キン○ドライバーっ?」

 俺が驚いているうちに、すばやくレフェリーの服に着替えた梓がカウントを取る。

「1、2、3!!」

 カンカンカンカーン!
 どこかで鐘が鳴った。
 なんてこったい。あの初音ちゃんが、ほんとにクマを倒しちゃうとは。
 これは驚いてばかりじゃいられないな。
 初音ちゃんにお祝いの言葉をかけなきゃ。

 俺はリングに向かうと・・。

A、初音ちゃんに「よくやったな」と声をかけた。
B、慌ててリングから下り、目をそらした。

---

A、初音ちゃんに「よくやったな」と声をかけた。


「よくやったな」
 と初音ちゃんに声をかけた。しかし初音ちゃんは
「あれ、わたし?」
 と、きょとんとした表情だった。
 どうやら最後の大技のショックでもとに戻ったらしい。

「いや、気にしなくていいんだ。それよりご飯にしようぜ」
 というと初音ちゃんは
「うん、なんかしらないけど、おなかぺっこぺこ」
 と天使の微笑みでこたえた。

[ENDING]


---

B、慌ててリングから下り、目をそらした。


 リングの上で行われているあまりにも凄惨な光景を目にして、俺は慌ててリング
から下り、目をそらしてしまった。

「…く、食ってる…」

 おもわず吐き気が込み上げてくる。
 しかし、そんな光景を目にしながら千鶴さん達は

「やっとメインディッシュのくま鍋の支度ができたわね」
「よし、初音に全部食べられないうちにこっちも食べよう」
「……」(こくこく)

 妙に楽しそうだった。

[ENDING]

=== 了 ===



これも「お赤飯」の後書きを読みなおしていて、さらに妄想した結果です。
ひたすら勢いだけで書きました。

「獲物にはリーフって事考えるとクマが良かったかなぁ」
「クマだとプロレスになりそう」
「クマを倒すってーと、某魔獣戦士の某一族みたい」
と連想が働いた結果、こーゆー話ができたわけです。

最後が見えてない状態で書き始めたため、ひたすら暴走しまくってます。
そのため予想してたよりかなり長くなったくせに、インパクトに欠ける話になって
しまいました。
ただ個人的には、なぜか予定外の「…く、食ってる…」が使えたので満足してます。

さらに後から思い付いた(クマA)の裏設定。
・「掟」は、実はクマに八つ当たりしてるところを「おじさま」に見られた千鶴さ
 んがごまかすために作ったでたらめで、今回の対決は、そのあおりをくらって修
 学旅行に行けそうもなくて悲しんでいる初音ちゃんのためにしくまれたもの。

でも、修学旅行って、いったいなんのだろ(笑)

感想とか、レスのお返事とか遅れまくってます。すみません。
で、これはとっとと書いとかなきゃならなさそうなので、

>久々野さん
お早い復帰をお待ちしております。