もう一つの「ToHeart」第五話 投稿者: kurama
「神の鉄槌」

−−あらすじ−−
浩之の謎の失踪に周りの人たちは動揺する。そして何より動揺したのがあかりだった。
悲しみに沈むあかり。そして一生懸命励ます志保と雅史。その甲斐あってか、元気を
取り戻したかに見えた。しかし、実際は浩之に会いたい、という気持ちでいっぱいだった。
会いたくても会えない、そんな微妙なバランスが数日続いた・・・。その均衡を崩した
のが1通の雅史宛てに届いた浩之からの手紙だった。雅史は志保の忠告を無視してあかり
に浩之の居場所を伝える。そして、浩之のいるマンションにたどり着くが、中からは知ら
ない女性の声が・・・。絶望と悲しみに打ちひしがれるあかりを見た志保と雅史。2人は
真実をつきとめるために行動に移る。そしてその第一歩は学校だ、と言う志保。その言葉
を受けて学校に向かう雅史。果たして、志保の考えは・・・?

−−学校内−−
  志保、雅史を引き連れて校舎内を歩いていく。
雅史  「ねぇ、どこに行くの?」
志保  「すぐにわかるって。」
  そして、ある部屋の入り口で立ち止まる。
雅史  「?  ここって・・・」
  入り口の上には「職員室」と書かれていたプレートが付いている。
  コンコン
  志保、ノックをする。
???「おぅ、入っていいぞ〜。」
  中から男性の声がする。それを聞いて志保、ガラガラと扉を開ける。
志保  「長瀬先生すみませ〜ん。お呼び立てして〜。」
  その長瀬と呼ばれた教師は部屋の一角でお茶をすすっていた。
長瀬  「おいおい、長岡。何だってんだ〜?  学校のことで臨時教師の俺に聞きに来たのか?」
志保  「そんなんじゃありませんよ〜。」
  軽くパタパタと手を縦に振る。
長瀬  「じゃぁ、何だ?  単位のことは他の先生に頼めないぞ。」
志保  「もう、そんなんじゃありませんよ!  臨時教師ってところにポイントがあるんですよ。
        それに情報によると、親戚に私たちと同じ年の女の子がいるとか・・・?」
長瀬  「臨時教師ってところにねぇ・・・ま、いいか。ちなみに親戚には女の子はいない。
        同じ年の男ならいるがな・・・あ、お茶飲むか?」
  と言いつつ、職員室の奥に消えていく。
雅史  「・・・・・・ねぇ。」
志保  「ん?  何?」
雅史  「言ってた参謀って、長瀬先生のことなの?」
志保  「そうだけど、なんで?」
雅史  「大丈夫なの?」
志保  「大丈夫よ!  私の勘がそう言ってるんだから!」
雅史  「でも、”情報”の性別の違いはすごいから勘なんか・・・。」
  そんな事を言ってるうちに奥から長瀬が出てくる。
長瀬  「ほれ、お茶が入ったぞ。ん〜、どっか適当なところに座れ。」
志保  「あ、すいませ〜ん。」
  志保、遠慮無しに近くの椅子に座る。あとから雅史も志保の隣に座る。
長瀬  「んで?  話しってなんだ?」
志保  「そのことなんですけど・・・」

−−十数分後−−
長瀬  「ふむ。事情は大体分かった。」
  さっきのにやけた顔も幾分引き締まったように見える。
長瀬  「それは大変なことだが・・・これって言ってもいいのかなぁ・・・?」
  それを聞いたとたん、
志保  「何ですか?  それって?」
  長瀬に食らいついてくる。
志保  「先生!  教えてください!  早く!」
長瀬  「おい、長岡、落ち着け。落ち着くんだ。」
  必死に落ち着かせる長瀬。雅史も一緒に手伝う。
長瀬  「あのな、藤田のことはいろいろ話を聞いてるんだ。」
志保  「それで、何なんですか?」
長瀬  「実はだな・・・しっかり聞いてなかったからよくは知らないけど、
        藤田は今、公欠扱いになってるんだ。」
志保  「!?  なぜですか?」
長瀬  「それが・・・え〜と、どこだったっけな・・・え〜・・・」
志保  「先生!  早く!!」
長瀬  「そんなにせかすなって・・・確か・・・くる・・・す・・・」
志保  「来栖川ですか?」
長瀬  「おぉ!  そうそう!  来栖川がどうとかって言ってたけど・・・」
志保  「う〜ん・・・それだけじゃな・・・」
  志保、腕を組んで考え込む。
雅史  「やっぱり、事実を確かめに行った方がいいかな・・・」
  長瀬、それを聞いて、
長瀬  「なんだ。お前達、藤田の居場所知ってるのか?  だったら本人から聞くのが一番だと思うが。」
  志保、さらに考えて、
志保  「・・・・・・。わかりました!  ありがとうございました!!」
  志保、そう言うなり雅史の手を引っ張って職員室を出て行く。
長瀬  「あ、おい!  後な、って・・・行っちゃったよ・・・」
  長瀬、ため息を吐くと自分の湯飲みを持って窓の外を見る。
長瀬  「若いな・・・それにしても祐介はあの娘さんとうまくやってるのかねぇ・・・」

−−帰り道−−
  志保が足早に歩いている。それを必死になって追いかける雅史。
志保  「よし!  決めた!」
  いきなり立ち止まって叫ぶ志保に驚く雅史。
雅史  「うわっ!?  びっくりした。いきなりどうしたの?」
志保  「雅史、私たちも行ってみるわよ。」
雅史  「え?  浩之のところに?」
志保  「そうよ。こうなったら浩之に直接会って話を聞かなきゃね。」
雅史  「・・・そうだね。行くのはもしかして、明日?」
志保  「当たり前でしょ?  よく分かってるじゃない。」
雅史  「で、何時にどこ?」
志保  「7時に駅前集合!  いいわね?」
  そう言うなり志保は走り去っていく。その後ろ姿をみながら、
雅史  「ホント、思い切った行動するよ・・・」
  ちょっと笑いながらため息をつく。

−−翌日−−
  志保と雅史、手紙に書いてある住所を頼りに電車に乗る。
  そして数時間後、二人はあまり迷うことなくマンションの入り口までたどり着く。
志保  「・・・ここね。」
雅史  「うん、間違いない。ここだよ。」
志保  「さ〜て、会ったら何から聞こうかしら〜?」
  志保、指の骨を鳴らしながら入っていく。
雅史  「(・・・腕でものを聞こうとしてる・・・)」  

−−マンションの中−−
  志保と雅史、エレベーターに乗り込み、五階に昇っていく。
ELV「五カイデス・・・」
  無機質な音声とともに扉が開かれていく。
志保  「それにしてもよくこんな所にいられるわね〜。」
  きょろきょろしながら通路を歩く。
志保  「こんなマンション、普通のサラリーマンじゃまず住めないわ。一体何やっ
        てるんだろう?」
雅史  「・・・それを聞きに来たんじゃなかったっけ?」
  それを聞くなり振り向き、
志保  「もう!  うるさいわねぇ!  そんなのわかってるわよ!」
  志保、スタスタと歩いていく。

−−扉の前−−
  志保と雅史、ネームプレートに「藤田」と書かれている扉の前に立っている。
雅史  「ここだね。」
志保  「えぇ。ここね。」
  志保と雅史、お互いの顔を見てうなずき、雅史がインターホンのボタンを押す。
  しばらくして、
浩之  「はぁい。どちらさんですか?」
  インターホンから浩之の声が返ってくる。すかさず、鼻をつまんで、
志保  「あの〜。月島宅急便ですが、お届け物です。」
浩之  「あ、ちょっと待ってください。」
  志保が不敵に笑う。その笑みの意味を悟ったのか雅史、一歩後ずさる。
  扉の奥から人が近づいてくる気配がしてきて、ガチャガチャと鍵を開ける音がする。
浩之  「どうもごくろうさ・・・」
  浩之がそう言ってドアをあけた瞬間、志保がスッと入っていく。
浩之  「!?  な・・・?」
  志保、そのまま浩之のむなぐらを掴み、
志保  「地獄へ行けぇ−−−−−−−−−−−−−−!!!」
  志保が右ストレートを繰り出す。
  バキッ!
  志保のストレートは浩之の頬に見事に当たり、2m後ろまで吹っ飛ぶ。
志保  「・・・(ふふっ、滅殺・・・てか?)・・・」
  そのまま部屋に入ってくる。
浩之  「ててててててて・・・ったく、痛ぇじゃねぇかよ!」
志保  「当たり前でしょ!  本気で殴ったんだから!」
浩之  「んだと?  なんでお前に殴られなきゃいけないんだよ!」
  それを聞いた志保が呆れ顔になる
志保  「そんなこともわからないわけ?  いいわ、これから教えてあげるわ!」
  そういってこぶしを振り上げた瞬間、
???「いったいどうしたんですか?  浩之さん?」
  奥にある台所から一人の女性が出てくる。
志保  「!?  あんたね?  浩之と同棲してるのは?」
浩之  「!! お、おい!  志保!  待てよ!  そいつは・・・」
  つかつかとその女性の所に歩み寄っていく。
志保  「だいたいあなた一体誰なの?  浩之とは一体どういう関係・・・・!?」
  そこまで言うとあることに気づいた志保。
志保  「え・・・?  これって・・・。浩之!  いったいどういう事?」
浩之  「・・・そういうことだ。おい、雅史。いるんだろ?  説明するから入って来いよ。」

−−浩之の部屋−−
  志保、雅史、そして浩之の三人がテーブルを囲んでいる。そして浩之の脇にはさっきの女性が
  浩之の怪我を治している。
志保  「さて、私たちが納得行くような訳ってのがあるんでしょうね?」
  志保、出された紅茶を飲みながら浩之に聞く。
浩之  「当たり前だろ。だからこうして話そうとしてるんじゃないか。」
雅史  「で、一体その理由ってなんなの?」
浩之  「あぁ、実は・・・」

−−続く−−

−−次回予告−−
  とうとう志保と雅史の前に出てきた浩之。そして問題の女性とも対面した。
  しかしその時、志保はこの女性のある事に気づいた。その事実とは?
  次回「もう一つのToHeart」第6話、「帰れぬ理由(仮)」近日掲載。  

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−−あとがき&いいわけ−−
  なんか、久しぶりのような気がするです。kuramaです。
  前にも書き込んだとおり、PCの不調で大変でした。そのおかげで書きかけの物まで
  消えてしまって、また書き直すというハプニング付きでした。
  
−−レス−−
>UMA(うま)さん
>パソコンが復調したら帰ってきてね。
帰ってきたです。ありがとうございました。ほんとにわがままです。うちのPC。

>無駄口の人さん
>PCって、Pika Chuで合ってますでしょうか?(謎笑)
いやぁ、もう光って光ってたまりませんでした(笑)。

それでは、これから6話に取りかかります。あぁ、ミューズの神は降りているだろうか・・・?