「もう一つのToHeart」第四話 投稿者:kurama
第四話  「許されざる存在」

−−あらすじ−−
浩之の突然の失踪に周囲が動揺する。そして一番動揺したのがあかりだった。
待つことを一度は決意したものの、浩之の事がどうしても待ちきれず、一人
会いに行く。そして・・・

−− マンションのエレベーター −−
  音も無く開く扉。その中に入っていくあかり。そして「5」のボタンを押す。
  スゥーっと上昇していく。それと同時にあかりの気持ちもだんだんと高揚していく。
  「・・・5カイデス・・・」無機質な音声と共に扉が開く・・・。

−−部屋の前−−
  あかり、扉の前に立つ。
あかり「(ここに・・・ここにヒロちゃんがいるんだ・・・)」
  ドキドキしながら、ゆっくりとインターホンを押す。
ピンポーン・・・ピンポーン・・・
  少し経ってからインターホンからガチャガチャと音がする。そして、
???「はい。どなたでしょうか?」
  女性の声がして、あれ?  となるあかり。
あかり「?  ・・・ここって、ヒロ・・・藤田さんのお部屋ですよね?」
???「はい。そうですけど。」
  愕然とするあかり。
あかり「(なんで?  なんでなの?)」
???「ちょっと待ってください。」
  そんな声も聞こえるはずもなく、呆然と立ち尽くすあかり。
  そのうちに扉の向こうからこちらに近づいてくる気配がする。
あかり「!?」
  あかり、その気配を感じてハッとなり、扉から走り去ってしまう。

−−電車の中−−
  どこを歩いて、どこを通ったのか、気が付いたら電車の中だったあかり。
あかり「(まさか・・・どうしてなの・・・?)」
  頭の中が真っ白で何も考えられない。

−−夜遅く、あかりの部屋−−
  家に帰ってきてからは一言も話さず、部屋に戻ってベッドに座り込むあかり。
あかり「ヒロちゃん・・・私のこと・・・嫌いになったのかな・・・・・・もう・・・
        帰ってこないのかな・・・」
  両手で顔を覆い、泣くあかり。

−−翌日−−
  雅史があかりの家を訪れる。
  出てきたあかりの表情から、予想と反した結果になってしまった事がわかる。
雅史  「それで、浩之は何だって?」
あかり「それが・・・会ってないの・・・。部屋に女の人がいて・・・それで・・・・・・」
  さらに落ち込んでしまうあかり。
雅史  「・・・・・・・・・・・・」
  慰めの言葉も思い付かず、ただ黙っていることしかできない雅史。
  あかり、少し微笑んで、
あかり「もういいの。ヒロちゃんの気持ち、良く分かったから。」
  そう言うと雅史に背を向ける。
あかり「・・・もう・・・ヒロちゃんのこと・・・忘れるから・・・」

−−次の日、学校の屋上−−
  部活動する雅史を志保が屋上に呼び出す。
志保  「ねぇ雅史。昨日、あかりに会った?」     
  その質問にちょっと動揺する。
雅史  「え?  な、なんでそんなこと聞くの?」
  志保、校庭を見ながら、
志保  「うん、昼間に遊びに行ったんだけど、どこかに出かけてるみたいだから・・・」
雅史  「え?  そ、そうなんだ・・・」
  うつむく雅史。
志保  「ねぇ、なんか知らない?」
雅史  「え?  なにも・・・。」
志保  「ふ〜ん・・・」
  疑いの眼差しを雅史に向ける。しばらくして、
志保  「ねぇ、一昨日あかりと遊びに行ったんだけど・・・」
雅史  「え?  何時ごろ?」
志保  「そ〜ねぇ・・・三時頃かな?」
雅史  「ふ〜ん、帰ってたんだ・・・」
  志保、聞き逃すはずなく、
志保  「(ニヤッ)・・・どこから帰ってたって?」
雅史  「!?」
  誘導尋問に引っかかる雅史。
志保  「何か知ってるみたいね・・・どういう事か説明してちょうだい。!?・・・まさか・・・」

−−数分後−−
  雅史、志保に”あかりに浩之の居場所を教えたこと”を打ち明ける。
志保  「どうして喋ったりしたの?  絶対言わないでって言ったでしょう?」
  志保の迫力に一歩あとずさる雅史。
雅史  「あかり、すごく辛そうだったから・・・それに、教えなくてもここから飛び出して
        いきそうな雰囲気だったから・・・」
  志保、半ば呆れてため息をつく。
志保  「ハァ・・・それで?  あかりは浩之に会えたの?」
雅史  「それが・・・」
  雅史の表情が曇る。
雅史  「浩之の部屋に女の人がいたらしいんだ・・・。」
志保  「えぇ〜!?  それって本当なの?」
  志保、思いっきり驚く。
雅史  「あかりが言ってた。実際見たわけじゃないけど・・・」
  怒りに肩を震わせる志保。
志保  「・・・何やってるんだか・・・まさか、このまま帰ってこないつもりじゃ・・・」
  その言葉にを聞いて、
雅史  「まさか・・・。そんなことないでしょ?」
  動揺する雅史を見ながら、
志保  「そんな事は後でいいのよ。問題はあかりの方よ。それで、何か聞いてる?」
雅史  「うん・・・浩之の事、もう忘れるって・・・。」
  志保、ため息ついて、
志保  「そんなことできるわけないでしょう?  あれだけ浩之のことを・・・。」
  しばらく沈黙する二人。
雅史  「もう少し・・・様子見てみようよ・・・」
志保  「ハァ・・・それしかないか・・・」
  志保、空を見上げる。どこまでも続く青い空が広がっていた・・・

−−8月1日(登校日)、通学路−−
生徒A「あぁ〜、かったりいなぁ〜。」
生徒B「ホント。なんでこんな日に学校行かなきゃいけないんだ?」
生徒C「そういえば知ってる?  来栖川エレクトロニクスの新作。」
生徒B「あぁ、あれだろ?  HMシリーズ。もう発売するらしいじゃない。」
  まだまだパワーのある生徒達。その中を志保と雅史は登校している。
志保  「あと1ヶ月ね。」
雅史  「そうだね。」
志保  「どうする?  あいつ。夏休み中になんとかしないと・・・」
雅史  「うん・・・」
  そんな会話を交わしていると、
あかり「おはよ!」
  後ろからの突然の挨拶に驚く二人。
雅&志「あ、あかり!」
あかり「どぉしたの?  二人とも。」
  クスッと笑うあかり。
あかり「最近遊びに来ないじゃない。一体どうしたの?」
志保  「そんなことないよ。何度か遊びに行ったけどいつもいないから・・・。」
  志保、ここまで話してハッとする。
あかり「志保、別にいいよ。聞いてるんでしょ?  ヒロちゃんのことは忘れること
        にしたから。」
  ちょっと寂しそうに微笑む。
雅史  「本当にいいの?」
  そう聞かれて、一瞬躊躇するあかり。
あかり「え?  ・・・うん・・・」
志保  「あかりがそう言うなら、いいんだけど・・・。」
あかり「大丈夫。だから、志保ももう私とヒロちゃんの事で悩まないで。」
  三人は校門をくぐっていく・・・。

−−午後、ヤクドナルド内−−
  学校が終わるとすぐに集合した志保と雅史。
雅史  「・・・けど、本当に忘れられるのかな・・・」
志保  「ふぇ?」
  志保、ハンバーガーをほおばっている。
雅史  「・・・・・・」
  ちょっとして、
志保  「あかりがそんな事出来るわけないでしょ?  私たち、何年の付き合いだと
        思ってるの?」
  オレンジジュースを一気に飲む。
雅史  「そうなんだけど・・・おかしいと思わない?」
志保  「なにが?」
雅史  「ホラ、浩之の部屋に・・・」
志保  「あぁ、女の人ね。」
雅史  「どうなんだろう?」
志保  「浩之、あかりの気持ちに気づいてると思ったんだけどな・・・。」
  頬杖ついて外を眺める志保。
志保  「こりゃあ、いっちょ私たちが行ってみるか!」
雅史  「え?  今なんて・・・」
志保  「浩之のところに乗り込むのよ。私たちが。」
雅史  「乗り込むって言ったって・・・」
  志保、雅史の方に向き直って、
志保  「住所知ってるんでしょ?  なら話は早い。早速帰って作戦を立てる!」
  雅史の手を引っ張って行く志保。
  ドン!
志保  「あっ!  ごめんなさい!」
雅史  「ごめんなさい。」
男    「あぁ、こっちこそ。ぼぅっとしてたから・・・ほら、行くぞ千歳。」
千歳  「あぁ〜ん、待ってよ〜。お兄ちゃ〜ん。」
  二人はそれを見ながら出口に向かう。
志保  「(お兄ちゃんか・・・仲良さそうだな・・・)」

−−その帰り道−−
  志保と雅史の帰り道が違う交差点。
志保  「じゃぁ、また。あとで連絡するから。」
雅史  「うん、わかった。」
  そのまま別れる。

−−志保の家−−
  志保、帰ってくるなり、自分の部屋に入る。
  そして、電話をかける。
志保  「・・・・・・あっ、もしもし?  私、長岡と・・・あっ、どもども・・・」

−−二日後−−
  雅史が志保に呼ばれて学校に向かう。
志保  「遅いぞ〜!」
雅史  「ゴメン。でも、学校に何の用があるの?」
志保  「作戦参謀がここにいるのよ。」
雅史  「え?  誰?」
志保  「それは会ってからのお楽しみ〜っと。」
  二人は校舎に入っていく。

−−続く−−
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<次回予告>
謎の女性の出現により、あかりの心に追い討ちをかける。そんなあかりを見ていた
志保と雅史が遂に行動を起こす。そして志保の言う「作戦参謀」とは?
次回、「もう一つのToHeart」第五話 ”真実(仮)”近日掲載予定。

<インターミッション>
どうも、kuramaです。
なんか何話まで書いたのかわからなくなってきてます(ダブったらすみません)。
はっきり言ってしまうと、展開が自分で描いていたものとだんだんズレてきています。
このままズレていくのでしょうか・・・。まぁ、どうなっていくのか書いてる本人も
わかりません。とにかく、浩之は殴っときますか(笑)?

>感想書いてくださる方々
本当にありがとうございます。この一言に尽きます。