第三話:「暗闇の向こう」 −−あらすじ−− 浩之が突然いなくなったことに動揺を隠せないあかり。 一度は待つ決心をするが、「会いたい」という力に負けて、 会いに行こうとするのだが・・・ −−七月中旬−− 生徒A「いやっほぉ〜、明日から夏休みだぁ!」 生徒B「ねぇ来週の旅行、集合場所って何処なの?」 生徒C「そういえば、鶴来屋って旅館の社長さん、すごい美人なんだって〜。」 生徒B「え? それって、私たちが泊まる旅館じゃない!」 終業式が終わり、生徒達はこれから始まる長い長い自分たちの 時間に思いを馳せている。 −−学校の帰り道−− あかり、志保と一緒に歩いている。 あかり「明日から夏休みだね。」 志保 「そうだねぇ。」 あかり「そういえば・・・」 志保 「雅史?」 あかり「うん。どうしたの? 今日は部活、なかったんじゃなかった?」 志保 「そうなんだけど、先生に呼ばれて職員室に行ったよ。」 あかり「ふ〜ん。」 しばらくして、 あかり「あっ そうだ志保、私、決めたの。」 志保 「えっ? 何を?」 聞き返す志保。 あかり「この夏休み使って、ヒロちゃんに会いに行ってみる。」 志保 「へぇ〜・・・って、えぇ〜!?」 驚く志保。 志保 「どうしたの? 急に。」 あかり「自分なりに考えてみたんだけど、どんな結果になっても、会って いなくなった理由をどうしても聞きたいの。」 困惑の表情をする志保。 志保 「それで・・・居場所はわかってるの?」 首を横に振るあかり。 あかり「ううん、けど、ヒロちゃんのお父さんが何か知ってるんじゃない かな・・・。」 志保 「浩之のお父さんって、今仕事の都合で家にいないよ。」 あかり「えぇ? そうなの!?」 あかりの表情が曇る。 あかり「・・・どうしよう・・・」 志保 「あたしも居場所までは知らないからなぁ・・・。夏休みなんだから、 帰ってくるかもしれないよ。」 あかり「・・・うん・・・」 志保 「無理に会いに行かなくてもいいじゃない。行って会えるとも限ら ないし・・・」 何とかして引き止めようとする志保。 あかり「けど、もう待ってるのは嫌なの・・・。」 うつむくあかり。志保、説得を諦めたのか、 志保 「わかった。何か手伝える事あったら行ってね。志保ちゃんの情報網 は伊達じゃないんだから!」 あかり「うん。ありがと。」 −−夕方、あかりの家−− これからの行動目標が決まったせいか、明るさを幾分取り戻したあかり。 それを見た両親は安心したようである。 −−同時刻、雅史の家−− 雅史 「ただいま。」 雅史母「おかえり。手紙が来てるよ。」 そう言われた雅史、テーブルに置かれた手紙を手に取る。 雅史 「誰からだろ・・・・・・!?」 裏の差出人に「藤田 浩之」と書かれている。 雅史、自分の部屋に駆け込んでいく。 雅史母「ご飯は〜?」 雅史 「まだいい!」 −−雅史の部屋−− 急いで手紙を開け、内容を読む雅史。 雅史 「そうか・・・・・・」 手紙を自分の机に置き、足早に居間へと向かう。 −−居間−− 電話の受話器を取り、番号を押す。 雅史 「もしもし・・・あ、志保?」 −−夜、あかりの部屋−− あかり、ベッドに入り天井を見つめながら、 あかり「探すって言っても、どうやって探そうかな・・・」 不安はありながらも、どこか楽しそうなあかり。そのうち眠りにつく。 −−翌日夕方、あかりの部屋−− 志保、雅史が遊びに来ている。 志保 「それで、何かわかったの?」 あかり「ううん、何も・・・」 首を横に振るあかり。 あかり「誰も知らないみたいなの。ヒロちゃんの行きそうなところ・・・」 志保 「そう・・・やっぱり、待ってようよ。」 雅史 「そ、そうだよ。きっと帰ってくるよ。」 雅史、志保に相づちを打つ。 あかり「うん・・・・・・」 ちょっと落ち込むあかり。 −−その帰り道−− あかりの家から帰ってくる二人。 志保 「絶対に言わないでよ。知ってるのは私達だけなんだから。」 雅史 「でも・・・・・・なんだか、かわいそうだよ。見てる方が辛いよ。」 志保 「書いてあったんでしょ? あかりには絶対に言うなって。 それに、今はきっと会わない方がいいような気がするの。今は・・・。」 そのまま黙り込む二人。 −−それから2・3日経って−− 雅史、一人であかりの家に行く。 あかり「あっ、どうしたの?」 雅史 「実は・・・・・・。」 浩之から手紙があったこと、そして、浩之の居場所をあかりに伝える。 あかり「どうして? どうして教えてくれなかったの?」 雅史 「志保が今は会わない方がいいって言うから・・・。でも、辛そうな 顔見てるの、耐えられなかったんだ・・・。」 あかり「・・・ありがとう。」 微笑むあかり。 −−夜、あかりの部屋−− いつになくうかれているあかり。そのままベッドに潜り込む。 コンコン。 部屋をノックする音が聞こえる。 あかり「は〜い。」 父 「父さんだけど、ちょっといいか?」 あかり「? いいよ。」 父があかりの部屋に入ってくる。 父 「あかり・・・」 あかり「ん? なに?」 父 「浩之くんの所に行くのか?」 あかり「!? え・・・なんで?」 自分の考えを当てられ、動揺するあかり。 父 「やっぱり・・・なんかうかれてるからもしかして、と思ったんだ。」 あかり「私、反対されても絶対に行くから!」 父 「あぁ、行ってこい。」 あかり「え?」 意外な答えに驚くあかり。 父 「もうちょっと良い顔すると思ったんだけどな。」 あかり「でも・・・。」 父 「あかりがそうしたいと思ったんだろう? だったら、後悔の無い ように行動すればいい。父さんが言いたいのはこれだけだ。」 あかり「お父さん・・・」 それを聞いてうつむくあかり。 父 「・・・それで、いつ行くんだ?」 あかり「・・・明日・・・。」 父 「そうか。じゃぁ、ゆっくり眠らないとな・・・」 そのままあかりの部屋を出て行く。 あかり「(お父さん・・・ありがとう・・・)」 −−その次の日、早朝−− 誰にも気づかれないように家を出ていくあかり。 それを家の中から見る父と母。 母 「本当に良かったんですか? 今なら止められますけど・・・」 父 「いいんだよ。それに母さんにも今のあかりの気持ち、わからないわけ でもないだろう?」 母 「フフッ、どうでしょうかねぇ・・・」 −−数時間後、都内某所−− メモと地図を頼りに電車に揺られ、何度も交番に立ち寄り、道に迷いな がらも、あるマンションにたどり着く。 あかり「ここだ・・・。ここにヒロちゃんがいるんだ・・・。」 マンションの入り口に立ち、上を見る。 あかり「会ったら、何を話そう・・・やっぱり、出ていった理由・・・だよね。」 そのままマンションの中へ入っていく・・・。 あかり「後悔したくないもの・・・」 −−続く−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−次回予告−− ついに浩之の居所を突き止めたあかり。その先にあるものは一体何か? 希望か? それとも絶望か? 浩之! 一体何やってるんだ? 次回、「もう一つのToHeart」第四話、”題名未定”近日公開。 >皆様方へ まず、ごめんなさい。感想、書きたいのですが、作品書くので精いっぱいの 状態なんです。途中で終わっちゃうのって嫌だから、完結させます・・・。 本当にすみません。