もう一つの「ToHeart」(第二話) 投稿者:kurama
第二話:「あかりの決心」

−−あらすじ−−
突然あかりの前からいなくなった浩之。悲しみに沈むあかり。
志保と雅史の必死の説得よってあかりは浩之が帰ってくるのを待つことに。
そして・・・

−−四月上旬−−
  夕方。学校の正門。下校の時刻を知らせる放送。志保と雅史、そして
  あかりの三人が一緒に下校している。
志保  「だんだん暖かくなってきたね。」
あかり「うん。そうだね。」
志保  「・・・それにしても、こうして一緒に帰るのってなんか久しぶりねぇ。」
  雅史、ちょっと考えて、
雅史  「そういえば・・・そうだね。確かその時って、浩之もいたんじゃなかっ
        ・・・!?」
  あわてて口を押さえる雅史。バカッと言わんばかりの表情の志保。
志保  「あかり・・・・・・?」
  心配そうにあかりの顔を覗き込む志保。
あかり「ううん。気にしなくてもいいよ。私は大丈夫。」
  笑顔のあかり。しかし、どことなくぎこちない。
志保  「そう?  ホントに大丈夫?」
あかり「大丈夫だって!」
  明るく振る舞おうとするあかり。志保、それ以上は追求しない。
あかり「あっ、そうだ!  お母さんに買い物頼まれてたんだ。私、先に帰る
        ね。」
  走っていくあかり。
志保  「あっ、あか・・・・・・」
  慌てる志保。あかりが見えなくなるなり雅史に向き直り、
志保  「雅史!  せっかく立ち直ったのにどうしてくれるの?」
雅史  「ゴメン・・・・・・」
  雅史、バツ悪そう。
志保  「あぁっ!!  もういいっ!!」
  志保、やり場のない怒りを覚える。

−−あかりの家−−
  あかり、「ただいま」の挨拶も言わずに自分の部屋に入って行く。心配そ
  うな顔をする母。

−−あかりの部屋−−
  部屋に入るなり入り口の扉を背に寄りかかり、うつむくあかり。さっき言
  った自分の言葉を思い返す。
  ・・・気にしなくてもいいよ。私は大丈夫・・・
あかり「大丈夫なわけ・・・・・・ないじゃない・・・・・・。」
  そのまま体育座りになって声を押し殺して泣くあかり。

−−昼休み−−
  学校の屋上。志保、雅史が二人で校庭を眺めている。
雅史  「ねぇ、志保。」
志保  「ん〜?」
  ぼ〜っとしたまま聞き流す志保。
雅史  「休み時間に見かけたんだ・・・」
志保  「あかりを?」
雅史  「うん・・・・・・」
  志保、校庭を見るのをやめて雅史のほうを向く。
雅史  「なんか・・・元気なかった・・・やっぱりあの時の・・・・・・」
志保  「まだそんなこと言ってるの!?」
  いきなり怒鳴る志保に雅史が一瞬凍り付く。
志保  「過ぎた事を今更言ったって始まらないでしょ?  それとも時間を戻
        せるって言うの?  だったらやってみてよ!!」
  一気にまくしたてる。
雅史  「・・・・・・ゴメン・・・・・・そうだよね・・・・・・」
  落ち込んで学校内に戻っていく雅史。
  その背中を見ながらため息をつく。
志保  「・・・できるんだったら、とっくの昔にあたしがやってるよ・・・」

−−同日夜、あかりの家−−
  家族三人の夕食。会話もなく進む。
父    「あかり。元気が無いみたいだけど、どうしかしたのか?」
あかり「・・・・・・・・・・・・」
  答えずに食事する。
母    「あかり、お父さんが聞いてるんだから答えたらどうなの?」
あかり「・・・・・・・・・・・・」
  それにも答えない。
母    「あかりっ、ちゃんと聞いてるの?」
  あかりが突然箸を置いて立ち上がる。
あかり「そんなことどうでもいいじゃないっ!  私の勝手でしょう?」
  そのまま飛び出すように部屋を呼び出していくあかり。
母    「待ちなさい、あかり!  まだ話しは終わってないのよ!」
父    「母さん、そっとしておきなさい。」  
  追いかけようとする母を父が制止する。
父    「あかりだっていろいろ悩んでるんだ。一人にさせてあげなさい。」
母    「そんなこと言いますけど・・・」
  母、心配そうに二階のあかりの部屋を一階から見上げる。

−−あかりの部屋−−
  駆け上がって部屋に入ったあかり。扉を閉めてゆっくりと机に向かう。椅子
  に座って窓から外を見る。月明かりがあかりの部屋に差し込む。
あかり「ヒロちゃん・・・・・・」
  浩之のぶっきらぼうな顔を思い出す。そのうちに目から涙がこぼれ落ち、
  頬を伝い、落ちていく。
あかり「みんな・・・みんな、大っ嫌い!!」
  腕に顔を埋め、大声で泣く。

−− 半月後  ゲームセンター −−
  あかり、志保、雅史の三人でゲームセンターに遊びに来ている。
  幾分元気は取り戻したものの、どこか元気がなさそうに見えるのは事実。
志保  「さぁ〜て、最新ゲームは・・・っと。」
  志保、二人をおいてゲームに夢中になっている。
  それを見てあかりと雅史、
あかり「志保、やけにはしゃいでるけど、どうしたの?」
雅史  「さぁ?  久しぶりだからうれしいんじゃない?  ただでさえ女らしく
        ないんだから。まったく、もっとおとなしくしてくれないかなぁ・・・」
  志保、一瞬動きが止まり、雅史の方を向く。
志保  「な・ん・か・い・っ・た・か・な・ぁ?」
  笑顔だが引きつっている。
雅史  「・・・な、なんでもないよ・・・」
志保  「あら、そう?」
雅史  「・・・・・・・・・・・・」
  しばらくして、占いゲームの前にやってきた三人。コインを入れ、各人Playする。
  そして、その結果を三人がそれぞれ見てみる。
志保  「う〜ん、まぁまぁ・・・かな?」
雅史  「・・・・・・最悪・・・・・・」
あかり「私は・・・・・・!?」
  ちょっと驚いているあかりを志保が見に来る。
志保  「どうだった?」
  あかり、慌てて結果用紙を懐にしまい、
あかり「う〜んとね・・・内緒!!」
  笑顔で走っていく。
志保  「あっ、ずる〜い!  見せろ〜!!」
  追いかける志保。
雅史  「あんなにうれしそうな顔するあかり、見るの久しぶりだな・・・・・・って、あれ?」
  一人取り残されたことに気が付き追いかける雅史。あかりの胸には、
  「あなたの恋愛運、最高潮!  きっと願いはかなう!」とプリントアウトされた結果用紙
  があった。

−−二ヶ月後−−
  梅雨のせいか、雨の日が多くなる。
  最近はやや落ち着きを取り戻したかに見えるあかり。しかし実際は「元気なあかり」
  を演じているに過ぎないのである。

−−夜、あかりの部屋−−
  いつものように部屋に帰ってきたあかり。ふと机の上にあった写真立てを手に取って
  見る。浩之、志保、雅史、そしてあかりの四人が一緒に写っている。
あかり「(ヒロちゃん・・・・・・どこにいるの?  約束、覚えてるよね・・・忘れちゃったの?
      もしかして・・・嫌いに・・・なったの・・・?  ねぇ・・・応えてよ・・・・・・)」
  目をぎゅっと閉じ、歯を食いしばり、肩を震わせ、
あかり「そんな顔してないで教えてよぉ!!」
  そう叫ぶと、写真立てを抱いてその場に泣き崩れるあかり。しばらくして、
あかり「・・・そう・・・だよね・・・。自分から・・・行動していかなくちゃ・・・ダメだよね・・・」
  涙を拭くあかり。写真立てを元の所に戻し、雨の降り続く外を見る。
あかり「ヒロちゃん・・・会いに・・・行くから・・・待っててね・・・。」

−−続く−−

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
志保、あんなに情熱家だったかなぁ・・・雅史、あんなにおいしい役だったっけ・・・

■今回はこれだけ
アルルさん
  とにかく、お疲れ様です。お仕事、頑張ってください。
  余裕ができましたら、また投稿してください。