一時ファイルの罪 投稿者:kurochan 投稿日:1月3日(金)00時23分
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この物語は、リ−フ殿の「To Heart」の設定をもとにした、二次創作物(Side Story)です。
内容は、所有しているノ−トパソコンの磁気ディスク容量が、知らないうちにどんどん
減っていった時のトラブルと、その対処方法をノウハウにした話です。
人物および場所の設定は、すべて架空のものです。
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『一時ファイルの罪』

第一章  おかしいな

「あれれ?おかしいな」
俺は、大学の研究室で、誰に言うともなく、呟いた。
「お〜い、雅史〜」
隣に座って、同じく研究室のコンピュ−タをいじっていた雅史に、声をかけた。
「なに?」
「研究室のパソコンが、おかしいみたいなんだけど」
「どんなふうに?」
相変わらず、にこにこしながら、雅史は俺の使っているコンピュ−タのディスプレイを見
た。
「エクスプロ−ラを起動して、ハ−ドディスク容量を見たら、10MBを切ってるんだ」
「え?どれどれ」
画面には、窓98の、エクスプロ−ラが表示されている。
「プロパティで、ディスク容量を見た?」
「ああ。もちろんだ」
雅史は、マウスで何やらカチカチと、俺の使っていたコンピュ−タの設定やらを見ていた
が、おもむろに、俺の方を向いて、
「また何か、ゲ−ムソフトとか、シェアウェアとかインスト−ルしたんじゃないの?」
「馬鹿言え。俺は大学では、勉学に勤(いそ)しむことにしてるんだ」
しかし、雅史はジト目で、
「だって、6.4GBもあるハ−ドディスクが、ほとんどフルに使われてるよ」
「知るか。だったらそれは、俺が勉学に勤(いそ)しんだ賜物だ」

俺は、いつも使っているパソコンを前にして、首をひねっていた。
俺は、藤田浩之。現在、大学3年生。
いつものように研究室に来て、インタ−ネットで6時間ブラウジングし、1時間かけて
メ−ルをチェックし、1時間だけ卒論の研究をする。
これが、俺のウィ−クデ−の日課だ。
同じ大学に進学した、あかりからは、
「そんなことしてると、そのうちきっと痛い目にあうよ」
などと、訳のわけらんことを言われたりするが...。
それはともかく、卒論の研究というのは、意外と、調べ物が多い。
いや、8割は調べ物...と言っても、過言ではないだろう。
本来ならば、自分で国会図書館に行って、本を借り、返却期限までに必要な資料を調べ終
えなければならない。
しかし実際には、そんなことをしているのは、あかりぐらいだ。
インタ−ネットを駆使することで、様々な情報を入手することができる。
やろうと思えば、外国の図書館に所蔵されている資料を、入手することも可能なのだ。
当然、コンピュ−タに向かう時間も、多くなる。
しかし、家からでは、電話代がかかりすぎる。
最終的に、大学でインタ−ネットに接続し、必要なデ−タをダウンロ−ドしたり、HTM
L文書を保存して、研究室や家で、じっくり調べる...というパタ−ンになってくる。
しかし最近、さして大きな文書を作ったわけでもないのに、ハ−ドディスクの空きが、極
端に減ってきているのだ。
前から、おかしいな...とは、思っていたのだが...。

「なんか、大きな文書を作ったとか?BMPを貼り付けた、わ−ど文書を作ったとか」
雅史が、俺に聞いた。
「俺も、そう思ったんだが、そんなデカい文書を、作った覚えがね−んだ」
「ふ−ん」
雅史はそう言うと、何やら、コンピュ−タをカチャカチャいじり始めた。
「ロ−カルハ−ドディスクに入ってるデ−タは、全部必要なんだよね?」
「当たり前だ。FDISKとか、ゆ−んじゃね−ぞ」
「そこまではしないけど、いらないデ−タや、使ってないアプリケ−ションがあるなら、
それを削除するのが、先決だと思うよ」
雅史は、ニコニコ顔で、俺に言う。
ま−ったく、こいつには、悩みとかはね−のか?
中世的な顔立ちといい、スポ−ツ万能なところといい...。
まあ、それはいいとして。
「わかった。とりあえず、いらないものを削除してみるぜ」
俺はそう言うと、コンピュータに向き直った。

第二章  減らない

数十分後。
「.....」
「.....」
「...だめだ。削除できるのは、これが限界だ」
俺は、誰に言うともなく呟くと、腕を組んで、椅子にもたれかかった。
そう。
不要と思われるアプリケ−ションや、フリ−ソフト、それにデータを探し出して削除して
いたのだが、どうしても、40MB以上の空き容量が確保できなかったのだ。
「どう?浩之」
まるでタイミングをはかっていたかのように、雅史が、反対側の席から顔を出した。
「だめだ。40MB以上の空き容量が、どうしても確保できね−んだ」
「本当に?」
その時、雅史の目が鋭く光ったのを、俺は見逃さなかった。
「おい雅史。『ハードディスクのシェイプアップ』とか言って、FDISKするとか、抜か
すんじゃねーだろーな」
「そ、そ、そんなことしないよ」
「...やたらにドモッるぞ」
ジト目で睨み付ける俺のことなど、意に介さないかのごとく、雅史が言う。
「じ、じゃあ、僕が調べてみようか?」
「そうだな...。じゃ、頼むぜ」
俺はそう言うと、席を立った。
代わりに雅史が、俺が座っていた席に座る。
「ファイルを削除するときは、必ず、俺に言うんだぞ」
「わ、わかったよ」
雅史の後ろに立ち、一挙手一投足に目を光らせる。
しばらくして...。
「浩之、こんなに、いらないファイルがあるじゃない」
と、雅史がディスプレイを指差した。
「ん?」
俺も、つられて画面を見る。
そこには...。
エクスプローラの検索機能で抽出された、ファイルの群れがあった。
「なんだ、こりゃ?」
と、検索する文字列を見てみると...。

"*.TMP *.LDB *.GID *.chk"

と、指定されていた。
「雅史、この検索文字列に、何か意味はあるのか?」
俺が聞くと、雅史は、
「うん。これは、削除しても問題ないファイルなんだ」
と言うではないか。
「どういうことだ?」
俺が再び聞くと、
「じゃあ、教えてあげるね」
雅史はそう言うと、コホンと咳払いをした。

第三章  減らそう

「最初に、"*.TMP"って入力したけど、これは、Windowsやアプリケーションが作成する、
一時ファイルなんだ。普通は、使い終わった時点で、勝手に削除されるけど、希に、削除
されずに残っちゃうことがあるんだ。だから、削除しても、何も支障は起きないよ」
「へえ...」
俺は思わず、感嘆の声を上げた。
(作者注:厳密に言うと、最も新しい日付および時刻のTMPファイルは、削除しないほうが
いいです。これは、コンンピュータを再起動した時点で、Windowsが新たな一時ファイル
を作成し、使用するため...らしいです。)

「次に、"*.LDB"だね。これは、MicrosoftのAccessっていうアプリケーションを使用した
場合に作られるんだ。実際には、『レコードロック情報』とか、『ロックDB』って呼ばれて
る。これも、Accessを使い終わった後だったら、削除しても大丈夫だよ。次に、もう一度
Accessを起動すれば、また作成されるしね」
な・・・、なんだって?
「ということは、Accessは、自分が使い終わった、この"*.LDB"っていうファイルを、その
まま残骸として、残したままにしちまうってのか?」
俺が聞くと、雅史はクスッと笑って、
「16ビット時代の、Access2.0のころまでは、確かにそうだったけど、今のAccess97や
Access2000では、プログラム終了時に、ちゃんと消してくれるんだ。だけど、Accessの
プログラムを使ってる時に、コンピュータがフリーズしたりすると、やっぱり残っちゃう
んだ。だから、定期的に、こうしてチェックした方が、いいんだよ」
「へえ...」
俺はさらに、感嘆の声を上げた。

「次に、"*.GID"だね。これも、Windows上で動作するアプリケ−ションのほとんどで作ら
れる、一時ファイルみたいなものなんだ」
「って、言うと?」
俺は、雅史を見た。
「浩之は、ヘルプ画面って、見たことある?」
「へるぷ?」
俺は思わず、惚けた声を出した。
「うん。メモ帳でも、何でもいいんだけど、ソフトウェアを使っている途中で、操作方法が
わからなくなった時に、使うやつ」
「ああ、使ったことはあるぜ。確か、前に教授が、『F1』キーを押すと、ヘルプが表示さ
れるから、わからなかったら使ってごらん...って、言ってたし」
俺は、長瀬教授の言葉を、思い出しながら言った。
「そう。そのヘルプ画面だよ。厳密に言うと、まいくろそふとが提唱してて、他のメーカー
がそれにあわせて作ってる...っていう側面も、あるんだけどね。話を元に戻すけど、こ
の"*.GID"は、ヘルプ画面を起動すると、勝手に作成されるんだ。しかも、使い終わっても、
そのまま残っちゃう。アプリケーションにもよるけど、4MBぐらいの大きさになること
も、あるんだ」
な...、なんだって?
「お、おい...。ヘルプ画面なんて、そうそう使うものじゃねーぞ。それに、さっきも言っ
たけど、自分が使い終わったファイルを、そのまま残骸として、残したままにしちまうっ
てのか?」
俺が聞くと、雅史はまた、クスッと笑って、
「まあ、そういうことになるね。この"*.GID"っていうファイルを削除しても、またヘルプ
画面を起動したときに、『ヘルプファイルの準備中...』っていうメッセージが表示されて、
また、作成されるんだ。この時、多少待たされるけど、たいした時間じゃないし、ディス
ク容量のことを考えれば、削除したほうが、いいかもね」
「へえ...」
俺はさらに、感嘆の声を上げた。

「最後に、"*.chk"だね。これは、スキャンディスクとかを実行して、破損したファイルが
見つかった時に、一時的に『FILE0001.chk』とか、『FILE0002.chk』とかいう名前が付けら
れて、保存されるんだ」
な...、なんだって?
「じ、じゃあ、やろうと思えば、そのファイルから、破損する前の状態に、戻すことも可能
なのか」
俺が聞くと、雅史はちょっと、困ったような顔をした。
「現実には、その可能性は、皆無に等しいんだ」
「ど...、どういうことだ?」
「『メモ帳』とかで、"*.chk"の内容は、見ることができるんだけど、ほとんどの場合、壊
れたファイルの内容が書き込まれてるだけだから、見ても、何が何だかさっぱり...って
いうことがほとんどなんだ。内容も、文字がバケてたり、解読不可能な文字になっててね。
だから、そういうときは、あっさりあきらめた方が、精神的にもラクなんだ」
「そ、そんなこと言ったって、壊れた内容が書かれていれば、その壊れたファイルを復旧で
きる可能性は、あるってことだろ?」
俺がそう言うと、雅史はさらに、困った顔になった。
「まあ、『可能性がある』ってことは、否定はしないけどね。実際には、まず無理なんだ。
だったら、『メモ帳』とかで、"*.chk"の内容だけ見て、削除しちゃった方が、手っ取り早
いよ」
(そーゆー問題か?)
そんな俺の考えなど、意に介さないというように、
「じゃあ、とりあえず、削除してみよう」
雅史は、俺の同意も得ずに、「Delete」キーを押した。
「あ〜〜〜〜」
画面に、『削除しています...』という、無情なメッセージが表示される。
雅史は、なぜか嬉々としながら、今度は『ごみ箱』を空にする。
「わ〜〜〜〜」
俺の悲鳴もむなしく、ごみは塵となって、消えていった。

「でも浩之、こんなにハードディスクの空き容量が、確保できたよ」
雅史が、エクスプローラを起動しながら、言うではないか。
どれどれ...。
「...マジ?」
当初、40MBしかなかった空き容量が、102MBになっているではないか。
「たまには、こうしてハードディスクを掃除するのも、いいもんでしょ?」
まあ、確かに一理あるが...。
俺は、何か釈然としないものを感じていた。

第四章  もっと減らそう

「今まで話した以外にも、ディスク容量を空ける方法は、あるんだよ」
雅史は、そう言いながら、俺に向き直った。
「...まさか、使ってないアプリケーションを削除するとか、使ってないデータファイルを
削除するとか、ゆーんじゃねーだろーな」
俺は、雅史を見た。
この際言っておくが、コンピュータに関しては、雅史のやることを、俺は今一つ信用して
いないのだ。
少しでも、コンピュータの調子が悪くなると、
『FDISKしちゃえば?』
とか、さらりと言ってのけるし。
しかし雅史は、そんなことはおかまいなしに、
「そんなことはしないけど、不要なファイルを探し出して、削除することはできるよ」
と、のたまうではないか。
「どうする気だ?」
俺が聞くと、雅史は、
「『ディスククリーンアップ』を、使うんだ」
な...、なんだって?
「窓98だと、『アクセサリ』の中の、『システムツール』に、『ディスククリーンアップ』
っていうのがあるんだ。これを使えば、不要なファイルを、簡単に削除できるんだ」
「どういうことだ?」
俺が再び聞くと、雅史はまた、コホンと咳払いをした。

「浩之は、インターネットとか、する?」
「当たり前だ。俺がこのゼミに入ったのは、それが目的だといっても、過言じゃないぞ」
そう。
我が研究室の長である、長瀬教授のゼミに所属したのは、ほとんどこれが目的だったのだ。
「それなら、やっぱり、『ディスククリーンアップ』をしたほうが、いいと思うよ」
雅史の言葉に、俺はさっきから、釈然としないものを感じていた。
「なあ、雅史」
「なんだい?浩之」
「なんで、インターネットをしているのが、その『ディスククリーンアップ』につながるんだ?」
「ああ、そのこと?」
雅史は何故か、クスッと笑った。
「ブラウザ上で表示されるホームページとか、バナーの内容は、いったんハードディスクに
書き込まれるからなんだ」
な...、なんだって?
「インターネットに接続して、いろんなホームページを見てると思うけど、Webサーバー
に表示される内容を、直接見ているわけじゃないんだ。見ているホームページ...という
か、Webサーバーに接続すると、そこにあるコンテンツが、今、自分が使ってるパソコ
ンのハードディスクに、いったん書き込まれるんだ。実際には、DOS/V機だと、
『C:\Windows\Temporary Internet Files』っていうフォルダに書き込まれる。これを、ブ
ラウザがもう一度読み込んで、画面に表示する...って寸法さ」
「へえ...。でも、なんでそんな...」
雅史の言うことは、確かに納得できるものではあったが、釈然としないものが残るのも、また
事実なのだ。
「まわりくどい方法を取るのか...って、思うでしょ?でも、この方が、より素早く、ブラ
ウザ上に表示できるからなんだ」
「どういうことだ?」
俺は、雅史を見た。
「確かに、一番始めに見たときは、ハードディスク上に何も書き込まれていないから、全部
書き込むのに時間がかかるけど、一日に、同じホームページを何度も見に行く時とかは、
前に書き込んでおいた内容のうち、更新されたところだけを書き込めば済むでしょ?だか
ら、2回目以降に見にいった時は、ブラウザ上に表示される時間が短縮できるんだ。その
結果、体感的な速度は上がる...っていう寸法さ」
な、なるほど。
言われてみれば、確かにそうだ。
「でも、たまにしか見ないサイトの場合でも、ハードディスクに書き込まれちゃう。そうす
ると、インターネットでネットサーフィンすればするほど、ハードディスクの空き容量が
減ることになるんだ。だから、たまには『ディスククリーンアップ』を使って、古い情報
を消したほうが、効率はいい...ってことになるね」
「へえ...」
俺はさらに、感嘆の声を上げた。
(作者注:Internet Explorerの場合、プロパティの設定で『ブラウザを閉じたとき、自動
的に[Temporary Internet Files]フォルダを削除する』のチェックボックスをオンにする
ことで、対応することも可能です。)
「じゃあ、とりあえず、削除してみよう」
雅史は、俺の同意も得ずに、『ディスククリーンアップ』の「OK」ボタンを押した。
「あ〜〜〜〜」
俺の悲鳴もむなしく、ごみは塵となって、消えていった。

「でも浩之、こんなにハードディスクの空き容量が、確保できたよ」
雅史が、エクスプローラを起動しながら、言うではないか。
どれどれ...。
「...マジ?」
当初、102MBだった空き容量が、162MBになっているではないか。
「さっきも言ったけど、たまには、こうしてハードディスクを掃除するのも、いいもんでしょ?」
まあ、確かに一理あるが...。

第五章  さらに減らそう

「あと、ディスク容量を空ける方法としては、最も単純な方法があるんだけど、結構忘れがち
なことがあるんだ」
雅史は、とうとう膝を乗り出してきた。
...ダメだ。もう、こいつの勢いは止められない。
「他に、どんな方法があるんだ?」
俺は、貞操の危機を感じつつも、説明に付き合うことにした。
もはや、自分が雅史に質問していたことさえ、どうでもよくなってきた。
「『えくせる』や、『わあど』の保存形式や、保存方法を工夫すれば、ファイル容量を小さ
くできるんだ」
な...、なんだって?
「どういうことだ?」
俺は、思わず雅史を見た。
今まで、かなり長い間(といっても、せいぜい4〜5年だが)パソコンを使い続けているが、
俺は、そんなこと、考えてもみなかったからだ。
「実際に、やってみるね」
雅史は、コンピュータに向き直り、『えくせる』を起動した。
「画面の一番上にある、『ファイル(F)』を選んで、その中の『プロパティ(I)』を選択する
んだ」
雅史が使っているパソコンの画面を見ると...。
『Book1のプロパティ』というメニューが、表示されていた。
「この中にある、『プレビューの図を保存する』っていう項目のチェックを、オフ、つまり
レ点がついていない状態にするんだ。これだけでも、保存した時のディスク容量を、かな
り減らすことができるんだ。『わあど』にも、同じ設定があるよ」
「...」
『えくせる』文書のプロパティなんて、見たの、初めてだぞ。
「この、レ点がついていない状態にすると、何か、いいことがあるのか?」
俺は、思ったことを、そのまま口に出していた。
「作った文書の1ページ目に、図とか表を組み込んだ時に、ここのチェックがオンになって
ると、図表の内容が保存されるんだ。保存された図表は、プレビュー表示されるときに使わ
れるんだけど、保存した『えくせる』ファイルの容量が、その分だけ増加しちゃうんだ。
だから、ここのチェックは、オフにしておいたほうが、容量も小さくできるんだ」
「へえ...」
俺は思わず、感嘆の声を上げた。
「『わあど』の場合は、もうひとつ設定できる項目があるんだ」
雅史は、再びコンピュータに向き直り、『わあど』を起動した。
「画面の一番上にある、『ツール(T)』を選んで、その中の『オプション(O)』を選択する。
さらに、その中の『保存』を選択するんだ。この中に、『高速保存(F)』っていうのがある。
これをオフにすることで、作った文書のディスク容量を削減できるんだ」
「...」
『わあど』文書のプロパティなんて、見たの、初めてだぞ。
「な、なんで、レ点がついていない状態にすると、ディスク容量が削減できるんだ?」
俺は、思ったことを、そのまま口に出していた。
「『高速保存』を使うと、文書の保存にかかる時間を短縮できるんだ。その代わり、文書を作
っていたときのままの状態で、保存されちゃう。そうすると、文書のディスク容量が、膨大に
なってしまうんだ。逆に、『高速保存』を使わないようにすると、保存にかかる時間は長くな
るけど、ディスク容量は減らせるよ。だから、文書を作っている最中に、定期的に保存する時
は、『高速保存』を使う。帰る時に、『高速保存』を使わないようにすると、保存にかかる時
間は長くなるけど、ディスク容量が削減できる。僕は、そういうふうに切り替えて、使ってる」
「へえ...」
俺はさらに、感嘆の声を上げた。

第六章 エピローグ

「・・・・・・」
俺は、雅史に言われた通りに、『えくせる』と『わあど』の設定を変更し、今まで作りためた
資料を、片っ端から保存し直してみた。
すると、本当に文書の容量が減るものだから、さあ大変。
文書にもよるが、中には1MB以上も、容量が減るものもある。
こうなると、欲が出てくるのが、人情というもの。
「じゃあ、『えくせる』で作った、卒論用の資料を、保存し直してみようっと」
因みに、この卒論の資料は、尋常ではなくデカい。
なんてったって、元ネタであるデータから始まって、それらを集計した表、それにグラフまで
入っている。
ディスク容量も、60MB以上という、つわものだ。
読み出すだけでも、かなり時間がかかる。
「・・・・・・」
よし。読みこめた。
おっと、その前に、何ヵ所か、内容を修正しておこう。
いくつかのシートを切り替えながら、データを修正していく。
よし、ここを直せば完了だ。
最後のセルに値を入力して、「Enter」キーをパシン!と押した・・・ところまでは、よかったが。

『ジャン!』
研究室に、不気味なエラー音が響き渡った。
画面には・・・。

『このプログラムは不正な処理をおこなったため強制終了されます。』

「・・・・・・」
凍りつく、俺。
「な、なんで、いつもこうなるんだあぁぁぁぁぁっっ!!」
悲痛な叫び声が、研究室に響き渡った。

あとがき

今回は、所有しているノ−トパソコンの磁気ディスク容量が、知らないうちにどんどん減って
いった時のトラブルと、その対処方法を、「To_Heart」に乗せて書いてみました。
上記の内容は、現在勤務している会社で、実際に起こった現象です。

それにしても・・・。
『強制終了されます』のメッセージは、いつ見ても、心臓によくありません。
NTServer4.0とかの、ブルーサンダー(STOPエラー画面)に比べれば、まだマシかもしませんが。

こーゆー話だと、結構書けてしまうので、わずかなノウハウを、公開していこうと思います。