キ−ボ−ドの罪 投稿者:kurochan 投稿日:1月19日(土)10時56分
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この物語は、リ−フ殿の「To Heart」の設定をもとにした、二次創作物(Side Story)です。
内容は、会社で使用しているパソコンのキ−ボ−ドが、急に、ウンともスンとも言わなく
なってしまった時のトラブルと、その対処方法をノウハウにした話です。
人物および場所の設定は、すべて架空のものです。
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『キ−ボ−ドの罪』

第一章  おかしいな

バシン!バシン!バシン!
カァァァァン...。
バシン!バシン!バシン!
カァァァァン...。
バシバシバシバシ、バシバシバシバシ、バシバシバシバシ...。
カァァァァン...。

「ん?おかしいな」
俺は、大学の研究室で、誰に言うともなく、呟いた。
「お〜い、雅史〜」
隣に座って、同じく研究室のコンピュ−タをいじっていた雅史に、声をかけた。
「なに?」
「研究室のパソコンが、おかしいみたいなんだけど」
「どんなふうに?」
相変わらず、にこにこしながら、雅史は俺の使っているコンピュ−タのディスプレイを見
た。
「パソコンで、卒論に使う資料を作ってたんだけど、急に、キーボードからの入力が、全然
出来なくなっちまったんだ」
「え?」

俺は、いつも使っているパソコンを前にして、首をひねっていた。
俺は、藤田浩之。現在、大学3年生。
いつものように研究室に来て、インタ−ネットで6時間ブラウジングし、1時間かけて
メ−ルをチェックし、1時間だけ卒論の研究をする。
これが、俺のウィ−クデ−の日課だ。
同じ大学に進学した、あかりからは、
「そんなことしてると、そのうちきっと痛い目にあうよ」
などと、訳のわけらんことを言われたりするが...。
それはともかく、卒論の研究というのは、意外と、調べ物が多い。
いや、8割は調べ物...と言っても、過言ではないだろう。
本来ならば、自分で国会図書館に行って、本を借り、返却期限までに必要な資料を調べ終
えなければならない。
しかし実際には、そんなことをしているのは、あかりぐらいだ。
インタ−ネットを駆使することで、様々な情報を入手することができる。
やろうと思えば、外国の図書館に所蔵されている資料を、入手することも可能なのだ。
当然、パソコンの前に座って、キ−ボ−ドやマウスを操作する機会も多くなる。
そんな時に、急にキ−ボ−ドが反応しなくなってしまったのだ。
これは、はっきり言って、シャレになっていない。
この研究室の長である、長瀬教授に、
「また壊したのか、君は...」
などと言われかねないし、卒論の資料作成にも、支障が出てしまう。

...っと、いかん、いかん。
画面には、『えくせる97』で作成された、表形式の資料が表示されている。
「入力してる時に、『ScrollRock』ボタンを、押しちゃったんじゃないの?」
「いや、キ−ボ−ド上の、『ScrollRock』のランプは消えてるから、違うと思う」
俺の言葉に、雅史は、マウスで何やらカチカチと、俺の使っていたコンピュ−タの設定
やらを見ていたが、おもむろに、俺の方を向いて、
「マウスは、ちゃんと動くみたいだね」
「そうなんだ。だから、フリ−ズした訳じゃあ、なさそうだ」
雅史は、またしばらくの間、キーボードを叩いていたが...。
「ん?『Ctrl』と『Alt』と『Del』を、同時に押しても、再起動しないよ」
そうか。そうすると...。
って、おい。

ドガアァァァッッッ!!
ズッダダ−ン!!ズッシ−ン!!どんがらがっしゃ〜ん!!

「こら雅史、ドサクサに紛れて、なんちゅうことをしやがる」
研究室の隅で、資料の山に突き刺さっている雅史を横目に見ながら、俺は『えくせる97』
のデ−タを保存した。
ふう、危ない、危ない...。
苦労して作った資料を、そう簡単に、消されてたまるか。
「ち、因みに、ちゃんとケ−ブルは、接続されてるよな。抜けかかってたり、してないよな」
俺はそう言って、雅史の注意をそらす。
「あっ、その可能性はあるね」
ズボッ!!
雅史は、すばやく資料の山から抜け出すと、コンピュ−タの裏側を覗き込み、ケ−ブルの
チェックを始めた。
ま−ったく。人の大事な個人資産を...。

しばらくして、コンピュ−タの裏側を覗き込んでいた雅史が、
「ケ−ブル類は、きちんと接続されてるよ」
と言うではないか。
「じ、じゃあ、なんで急に、反応しなくなっちまったんだ?」
「さあ...」
雅史と二人で、考え込んでしまう。
「あっ、もしかしたら...」
しばらく考え込んでいた雅史が、マウスを使って、なにやら調べ始めた。
くどいようだが、マウスは正常動作する。キ−ボ−ドだけが、ウンともスンとも言わなく
なったのだ。
「ん?ちゃんと、キ−ボ−ドが、デバイスマネ−ジャで組み込まれているね」
「そうか...」
俺は腕を組み、しばし考え込んだ。
ちゃんと認識している...か...。
それなら...、よし。

「とりあえず、コンピュータを再起動してみよう」

ずべしゃあぁぁっ。
「...雅史、おまえ何でそこで、コケるんだ?」
「って、解決策にも何にもなってないじゃないかっ!!」
雅史が、血の涙を流しているが、そんなことはどうでもいい。
実は、この『コンピュータを再起動してみる』という手段。これが結構、うまくいったり
するのである。
「たま〜に、二度と『窓』が起動できなくなったりするが、背に腹はかえられん」
「全然、根拠になってな〜いっっっっ!!」
雅史が、何故か絶叫していたが、そんなことには構わずに、俺はコンピュータを再起動
した。

数分後。
「...」
「...」
「...やっぱり、キーボードが反応しないね」
状況は変わらず。
「キーボードだけ、他のコンピュータのやつと、入れ替えてみたら?」
「そうだな...」
雅史の提案に従い、キーボードを交換し、コンピュータを再起動する。

さらに、数分後。
「...」
「...」
「...キーボードが、きちんと反応してるよ」
「そうか...。そうすると...」
俺は、どこを見るともなく、研究室の中を見渡した。
雅史も、腕を組んで、考え込んでいる。
「やっぱり...」
「雅史、お前もそう思うか?」
俺は、自分の脳裏に浮かんだことを、口にするのが嫌だったのだが...。
まあ、仕方あるまい。
「いいか?」
「うん、いいよ。浩之」
「じゃ、いくぞ。せ〜の〜」
次の瞬間、俺と雅史の声が、見事にハモった。

「「キ−ボ−ドが壊れた!!」」

第二章  決裂

「...というわけで」
俺は、壊れたキ−ボ−ドと共に、研究室に戻ってきた、長瀬教授の前にいた。
何故か、正座させられているが、この際、気にしないことにしよう。
「そうはいかん」
いきなりの、長瀬教授の突っ込み。
「君は、この研究所の備品を、いくつ壊したら気が済むんだね?イ−サネットボ−ドに始ま
って、メモリ、ハ−ドディスク、フロッピ−ディスクドライブ...。そして、今度はキ−ボ
−ドときたもんだ。君が壊した部品を、一通り揃えたら、パソコンが1台、組み上がって
しまうよ」
...確かに。
「他のコンピュ−タに接続されているキ−ボ−ドで、動作確認をしたら、自分で買ってきた
まえ。これ以上、君の為に、研究室の部品を、提供する訳にはいかん」
「......」
俺は、体中から、血の気がサーッ...と引くのを感じていた。
「そ、そんな...」
俺の嘆願の言葉にも...。
「『そんな』も『こんな』も、ないだろう。君には、以前から、『キ−ボ−ドを叩く音が
うるさい』と、注意していただろうに。いつ壊れるかと思いながら、ヒヤヒヤしていた
私の気持ちがわかるかね?」
「.....」
「その挙げ句、『キ−ボ−ドが壊れたから、交換してほしい』なんて。そんなことが、まか
り通ると思うのかね」
「.....」
そう言われると、元も子もない。
「いいね?動作確認は認めるが、自分で壊したんだから、自分で調達してくるんだ」
教授は、そう言うと、くるりと、後ろを向いてしまった。

第三章  徘徊

「浩之、どうするの?」
雅史の問いにも、
「しょうがないだろう。研究室の長である長瀬教授に、引導を渡されてしまった以上、自分
で何とかするしか...」
そう答えるしかなかった。
俺は、雅史を引き連れ、新宿駅に来ていた。
何しに来たかって?
当然、壊したキ−ボ−ドの代替品を、調達する為だ。
『DOS/Vパ−ツを購入するなら、秋葉原だろうに』
と言うなかれ。
最近は、新宿駅周辺でも、DOS/Vパ−ツを売る店が、増えているのである。
中央線に乗っていけば、秋葉原なんてすぐなのだが、今日の場合は事情が違う。
すぐに、キ−ボ−ドを買って、大学に引き返さなければならないのだ。
と言うわけで、電車に乗って、一番近い新宿駅で、降りたはいいのだが...。
「.....」
「.....」
「...なあ、雅史」
「ん?なんだい、浩之」
「さっきから、ずっと思っていたんだけどさ...」
「うん」
「...なんでお前、歌舞伎町に向かって、歩いてるんだ?」
「えっ?ち、違うの?」
何をかくそう、雅史の後ろをついていった場所は、歌舞伎町のど真ん中だった。
「だって、『新宿駅で降りよう』って言ったのは、浩之じゃない」
「それが、どうして、歌舞伎町に向かうことにつながるんだ?」
「僕、てっきり、浩之のことだから、また女の子に飢えてるんだと思って」
「それはゲ−ムの中だけだ!!こんなとこにいるのを、あかりや琴音ちゃんに見られたら、
滅殺ものだぞ」
死活問題どころではない。
はっきり言って、生命の危機である。
「僕は、浩之となら、どこだって一緒なのに...」
「.....」
やばい。貞操の危機まで訪れている。
い、一刻も早く、ここから立ち去らねばぁぁぁっっっ!!
「い、いいから、さっさと来い!!」
俺は、雅史を引きずるようにして、歌舞伎町を後にした。
「あ〜ん、浩之、やさしくしてよ〜」
「訳のわからんことをいいながら、擦り寄ってくるんじゃねえっ!!」

第三章  調達

「ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ...」
...と、いうわけで。
...そう。ここは、新宿駅西口。
歌舞伎町とは、全く逆側である。
地理的には、さして離れていないのだが、たたずまいは、ずいぶん違う。
歌舞伎町が、繁華街そのものなのに対し、こちら側は、ビジネス街といった趣だ。
しかし、そんなことはどうでもいい。
一刻も早く、キーボードを探さなくては...。
しかし...。
「浩之、こんなビジネス街の、いったいどこに、パソコンショップがあるの?」
そう。
俺の前に立ちはだかるのは、都庁ビル。
周りを見ても、地上10階はあろうかという、ビルの大群ばかりである。
「ま〜さか、都庁の中に、パソコンショップがあるとも思えんが...」
仕方がない。
俺はいったん、新宿駅方面に戻ることにした。

その後、さんざん迷った挙げ句、駅前にあったパソコンショップを、見つけたのはいい
として...。
目に付くパソコンショップを、しらみつぶしに覗いていったのだが、覗けば覗くほど、
目の前が暗くなるのを、感じることになった。
何故かって?
キーボード自身は、販売されてはいるのだが...。
「なんで、俺好みの、昔ながらの、キーボードが見つからないんだぁぁぁっ!!」
気に入るキーボードが、なかなか見つからないのである。
俺の好きなキーボードは、昔ながらの106か、109キーボードである。
しかし、BabyATのマザーボードを使っている関係で、キーボードの口が、PS2か
AT用でなければならないのだ。
にもかかわらず、売っているのは...。
マルチメディア用の、いっぱいキーがくっついているやつか、USBポートのものばかり。
「キーボードなんて、二〜三千円も出せば、そこそこ納得のいくものが買える」(長瀬教授)
と聞いていたのだが...。
しかし、値段は、まあ二の次としても、実はもう一つ、重要な問題があったのだ。
それは、ズバリ。
『丈夫で長持ちすること!!』
ここだけの話だが、俺は、この数年で、何台ものキーボードを使い、壊してきた。(ヲヒ)
その理由のほとんどが、
「『Enter』キーの破損(支えている支柱が折れたり、キーがめり込んで返ってこなくなった)」
「『Enter』キーが割れた(真っ二つに、きれいに割れた)」
の、いずれかである。
今回のように、どのキーを打っても、全く反応しなくなってしまった...というのは、初
めてではあるが...。
そもそも、生まれて初めてさわったのが、英文タイプライターであるからにして...。
キータッチが強いのは、当たり前なのである(胸張って、言う言葉ではないと思うが...)。
にもかかわらず、キータッチに関しては、
「打ち込んだとき、エアークッションが入ったみたいに、フワッと受け止めてくれるような、
女性の肌みたいな感触のキーボードがいい」
などという、冗談にもほどがあるとでも言われかねないような、こだわりがある。
低価格のキーボードだと、打ち込んだ時の力が、そのまま指の第二関節あたりに跳ね返っ
てくるほど、キーアタックが強いものも多い。
しかも、あっという間に壊れるし...。
(俺は、そういうキーボードを、『カチャカチャキーボード』と呼んでいる。)
そんなキーボードを使った日には、一週間もしないうちに、キーボードが壊れるだけでは
なく、俺自身も、腱鞘炎になってしまいかねないのだ。

...とと、いかん、いかん。
さっさと買って、大学に戻らねば...。
そんなわけで、ショップ巡りをしていたのだが...。
実際に陳列されているキーボードを、試し打ちしていたら、
『壊れる!!買わなくていいから、出て行け!!』
と、店から追い出されたり、別の店で売っていたキ○ィちゃんキーボードを、
「『Enter』キーがハートマークで、かわいい」(雅史)
とか言われて、無理やり買わされそうになったり...。
まあ、いろいろあったが、なんとか最終的に、無難な、109キーボードを見つけること
ができた。
しかし...。
「な、なんじゃあぁぁぁ、こりゃぁぁぁぁぁっっ!!た、高いぃぃぃぃっ!!」
俺が選んだキーボードは...。
なんと、ごくごく普通の、無難なキーボードであるにもかかわらず、付いていた値段は...。
「ろ、ろくせんきゅうひゃくえんっっっっっっっ??」
いくら、『価格は二の次』とはいえ、今の俺には、とてつもなく高い金額である。
USBコネクタの、同じようなキーボードが、三千円を切っているのに...。
だが、背に腹は変えられない。
買わなければ、レポート提出が間に合わなくなってしまう。
仕方がない。
俺は、泣く泣く、その「ごくごく無難で、非常に高価なキーボード」を、買うことにした。
しかも、コネクタがPS/2形式だったので、AT用に変換するコネクタまで、買うはめ
に。
変換ケーブルが480円だったから...。
全部で、7380円。
...痛い。学生の身には、痛すぎる...。


第四章  接続〜オチ〜

「浩之、どうしたの?元気ないよ」
帰りの電車の中で、俺は、すこぶる落ち込んでいた。
何故かって?
確かに、お目当ての品物は、手に入った。
キータッチも、まあまあ、気に入った。
しかし...。
出費が、あまりにも痛かった。
ここまで自腹を切ってまで、大学の研究室に貢献する必要があるのだろうか。
自分でキーボードを破壊したことは、頭ではわかっていても...。

結局、買ってきたキーボードを研究室に持ち込み、接続したところ、正常に動作すること
が確認できた。
しかし...。
「な...、なんじゃあああぁぁぁぁっ!!こりゃあああぁぁぁぁっ!!」

やっぱり、オチがあった。
PS/2マウスを、AT用に変換するコネクタを、一緒に買ってきたのはいいが...。
なんと、変換コネクタが、キーボードに同梱されていたのである。
要するに、別途、変換コネクタを購入する必要は、なかったのだ。
...なんと、愚かな行為を...。
「ぢぎじょ〜、店員に確認したら、『変換コネクタを、別途購入する必要があります』って
言われたから、一緒に購入したのに...。二度と、S○FMAPでパーツは買わないぞ」
俺がボヤいていると、雅史が、
「いやあ、これじゃあ、無理だよ」
と、キーボードの空箱を指差した。
「...また、余計なことを...」
『変換コネクタが同梱されている』旨、箱には書いてあったのだが、ちょうどその部分に、
在庫管理用(と思われる)のシールが、デカデカと張ってあったのだ。
これでは、対応してくれた店員が見落とすのも、無理はない。
「ま〜ったく、今日は、踏んだり蹴ったりだぜ...」
キーボードの空箱を、グチャグチャに潰しながら、さらにムクレる、藤田浩之の姿があっ
た...。


あとがき

今回は、会社で使用しているパソコンのキ−ボ−ドが、急に、ウンともスンとも言わなく
なってしまった時のトラブルと、その対処方法を、「To Heart」に乗せて書いてみました。
上記の内容は、実際にパソコンショップに行った時のことを、可能な限り忠実に表現して
おります。
「今更、BabyATでも、なかろうに」
という声も聞こえてきそうですが、本体ケースを交換するのが面倒なのと、ATXケース
を買うお金がなかった...ことから、今回の話になりました。
別途、変換コネクタを準備すれば済むだけのことですし。

今更ながら、会社で仕事をする上で、自分がどのくらい自費をつぎこんでいるか、計算
してみました。
その結果...。
なんと、既に150万円を超えていることが、判明致しました。
...嘘のような、ホントの話です。
(自宅で使用するマシンや周辺機器、ノートPCなどは除いた金額です。純粋に、会社で
運用している自腹マシンや、それに伴うOS、周辺機器などの購入時点での金額を、足し
算していっただけです...。もちろん、上記の内容に伴うキーボードも、その中に含ま
れます。)

自宅で使用しているマシンを含めたら、気の遠くなるような金額が、DOS/V機のパー
ツ代になっているわけで...。
ほとんど、トホホの世界です。
さらに、上記の内容のようなパーツ交換もあるのですから、つくづく、「お金がかかるな
...」と、奇妙な感慨にふけってしまったりする、今日このごろです。

こ−ゆ−話だと、結構書けてしまうので、わずかなノウハウを、公開していこうと思います。