イ−サネットボ−ドの罪 第二章 投稿者:kurochan
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この物語は、リ−フ殿の「To Heart」の設定をもとにした、二次創作物(Side Story)です。
内容は、自宅でタワ−型PCと、ノ−トPCを、インタ−リンクケ−ブルでケ−ブル接続
していたのを、HUBとTPケ−ブルでの接続に変更した際の、ちょっとしたボケをノウ
ハウにした話です。
人物および場所の設定は、すべて架空のものです。
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『イ−サネットボ−ドの罪  第二章』

第一章  おかしいな

「あれれ?おかしいな」
「浩之ちゃん、つながらないよ」
「本当だ。おかしいな。確かに設定はあってるのに」

俺とあかりは、2台のパソコンを前にして、首をひねっていた。
俺達は、現在同じ大学の3年生。
学部は違うが、毎日のように会っては、お互いの情報を交換していた。
卒論のテ−マについて、酒を酌み交わしながら、夜通し語り合ったり、互いに書いたレポ
−トを読んで、論じ合ったり...。
なんか違うような気もするが、そんなこんなで、情報交換をするうちに、互いに調べた資
料やデ−タを、受け渡す必要が出てきたのである。
そこで、登場したのが、志保にそそのかされて、あかりと一緒に買ったパソコン。
あかりとパソコンを、一緒に買ったわけではない。あかりと志保と俺で、秋葉原に行って、
志保に勧められるままに、あかりと俺がパソコンを購入したのである。念のため。
...誰に言い訳してるんだ、俺は。
その後、あかりは、毎日のように、俺の家に来るようになった。
俺の夕飯を作ってくれる代わりに、大学で調べてきたデ−タを、インタ−リンクケ−ブル
を使って、ケ−ブル接続であかりのパソコンに転送する。
まあ、ギブ・アンド・テイクってやつだ。
しかしこれが、いかんせん、限界に達してきたのである。
最初のうちは、デ−タ量が少ないこともあり、4〜5分で完了していたのだが、今やそれ
が1時間半もかかるようになってしまったのだ。
そもそも、200MB近くのデ−タを、ケ−ブル接続でやり取りすること自体、問題があ
るのだが...。

そんなわけで、ネットワ−ク環境(というほど大袈裟ではないが)を見直すことになったの
だ。
昨日、秋葉原の電器街に行って、以下のパ−ツを買ってきた。
(1)イ−サネットボ−ド(PCIバス)を1枚(俺のタワ−型パソコン用)
(2)イ−サネットカ−ドを1枚(あかりのノ−トパソコン用)
(3)HUBを1個
(4)TPケ−ブルを2本
しめて、約1万5千円。
意外と、安かった...というより、HUBだけ10BASE−T対応のものにしたので、
これだけでおさまったのだ。
あとは、俺のタワ−型パソコンの蓋を開けて(1)を取り付け、あかりのノ−トパソコンの
カ−ドスロットに(2)を取り付け、(3)と(4)で接続。
あとは、(1)と(2)それぞれに付属していたドライバ−をインスト−ルして...と。
最後に、ネットワ−クの設定をして、再起動すればOK...。
というほど世の中甘くはなかったのである。
あかりのノ−トパソコンは、正常にWin95の画面まで表示されたのだが、俺のタワ−
型パソコンの画面には...。

『WINDOWS保護エラ−です  コンピュ−タを再起動して下さい』

とりあえず、Safeモ−ドで起動したので、デバイスマネ−ジャ−を調べてみたのだが、
ここで、不思議なことが起こった。
取り付けたイ−サネットボ−ドのデバイスを削除すると、正常に起動するのだが、再度デ
バイスドライバ−を組み込むと...。
またしても、

『WINDOWS保護エラ−です  コンピュ−タを再起動して下さい』

となるのである。

違いといえば...。
(1)俺のタワ−型パソコンの窓95のバ−ジョンが、4.00.950aで、あかりのノ
−トパソコンが、4.00.950bってこと。
(2)まいくろそふとのサイトからダウンロ−ドした、サ−ビスパックやパッチの山を、俺
のパソコンには片っ端からインスト−ルしてある。
   あかりのパソコンにインスト−ルしたのは、TCP/IPと、パスワ−ドセキュリティのパ
ッチのみ

ぐらいなものだ。
(作者注:『ぐらいなもの』って...。)
それにしても...。
「なんで、イ−サネットボ−ドのドライバ−を削除すると、正常に起動するんだ?」
「なんでだろうね」
あかりは、自分のノ−ト型パソコンの設定が終わっていることもあり、俺の後ろから画面
を見ているようだ。
「パッチのドライバ−のバ−ジョンの方が、新しいからってんで、上書きしなかったのが
いけなかったのかな」
俺は、誰に言うともなく、呟いた。
「パッチをインスト−ルし直してみる?」
あかりが、俺に聞く。
「いや、それなら、イ−サネットボ−ドのドライバ−をインスト−ルする時に、古い方で
上書きしてからの方が、いいかもな」
「ふ〜ん」
そんな会話が続く。
俺もあかりも、いつの間にか、パソコンを一通りは使えるようになってきた。
以前は、『パッチ』とか、『ドライバ−』とか言われても、胸につける名札とか(それはバ
ッチ)、ネジを締め付ける工具とか(それはドライバ−)、頓珍漢なイメ−ジしか湧かなか
った。
しかし、「どす○いまがじん」を半年間、広告から誌面から何から、片っ端から読んで、頭
の中に叩き込み続けた結果、なんとか言葉の意味を理解できるようになったのだ。
「浩之ちゃん」
「ん?なんだ?あかり」
あかりに呼ばれ、俺は顔を上げた。
「思い切って、FDISKしちゃえば?」
ドッカァァァ−−−−−ンンンンッッ!!
唐突な、あまりにも唐突な、爆弾発言(別名『あかりギャグ』とも言う)。
「じょ、冗談だろう?ネットワ−ク接続ができないくらいで、おいそれとFDISKなん
かできるか」
当然だ。
FDISKからやり直したら、どんなにがんばっても、元の環境に戻すまでに、半日はか
かる。
しかも、ネットワ−ク接続ができないことを除けば、正常に起動しているのである。
なにが悲しゅうて、そんなことをせにゃならんのだ。
「だって、これじゃいつまで経っても、浩之ちゃんと情報交換ができないよ」
あかりは、頬をぶうっと膨らませている。
「ま、待て。もう少し調べてみる。どこか、設定が間違っていると思うんだ」
「浩之ちゃんのコンピュ−タのでしょ?」
情け容赦ない、あかりの突っ込み。
「ぐっ...。ま、まあ、そうだとは思うんだが、もう一度、全部調べ直してみよう。それで
も原因が判明しなかったら、FDISKするからさ」
...そうだ。何とかして、原因を突き止めてみせる。
このままFDISKするなんざ、コンピュ−タを使う者として、納得がいかないのだ。


第二章  挫折

数十分後。
「ネットワ−クの設定、あってる...。プロトコルのバインドも、あってる...。う〜ん、
わからん...」
俺は、キ−ボ−ドを叩くのをやめ、大きく伸びをした。
そう。
どうしても、原因が特定できなかったのである。
あかりのノ−トパソコンと、俺のタワ−型パソコンの設定を、首っ引きで調べたが、どう
しても、

『WINDOWS保護エラ−です  コンピュ−タを再起動して下さい』

となるのである。
取り付けたイ−サネットボ−ドのデバイスを削除すると、正常に起動するのだが、再度デ
バイスドライバ−を組み込むと、またしても、同じメッセ−ジが表示されてしまうのであ
る。
「浩之ちゃん、もう諦めたら?」
あかりが、さすがに『付き合いきれない』という表情で、俺を見た。
そりゃあ、そうだろう。もう、夜の十時だ。
「やむを得ないか...。」
俺は、誰に言うともなしに、そう呟くと、あかりを見た。
「あかり、すまん。どうしても、原因が特定できないんだ」
そう言って、頭を下げる。
「今日中にバックアップを取って、明日の朝、FDISKする」
「...そう」
あかりは、もう疲労困憊といった感じだ。
「付き合わせて、悪かったな」
「ううん、しょうがないよ。浩之ちゃんは、一生懸命やったんだもん」
あかりは、俺を慰めたつもりだろうが、俺自身は、どうしようもない挫折感を味わってい
た。
「もう遅いから、送ってくぜ」
「えっ?だ、大丈夫だよ。だって、すぐ近くだし」
「あ...。そうだったな。じゃ、またな」

あかりが玄関を閉めると同時に、俺は、玄関の鍵をかけた。
『戸締まりをきちんとする』というのは、表向きの理由。
「くそっ!!」
ドガッ!!
俺は、右手の拳で、思いっきり壁を殴りつけた。
「くそっ!!くそっ!!」
ドガッ!!ドガッ!!
自分自身に、はらわたが煮え繰り返っていた。
原因を突き止められなかったことに。
そして、あかりまで付き合わせてしまったことに。
「くそっ!!くそっ!!」
ドガッ!!ドガッ!!
...ううぅぅ、手が痛え...。
拳が、ズキズキと痛む。
今日は、もう寝よう。
俺は、そのままベッドに寝転がった。


第三章  作業

翌日。
拳の痛みで目が覚めた。
痛えな...。
俺は、痛みの原因である、タワ−型パソコンを睨み付けた。
(まったく、こいつのせいで...。)
しかし、いつまで睨んでいても、正常に動作するわけではないので、潔くベッドから起き
上がった。
パソコンの前に立ち、電源を入れる。

ぶぅぅぅぅん...、ピポッ!
「Kurusugawa Bios Ver3.12 
 Plug and Play Searching...

 Card-01: PE405T
 Found FX-120T CD-ROM 」

昨日のうちに、イ−サネットボ−ドのデバイスを削除しておいたので、コンピュ−タは正
常に起動する。
どれ、バックアップを取りますか。
接続されているMOドライブに、メディアをねじ込み、必要なデ−タをバックアップする。
実は、これがものすごく大変だったりする。
MOドライブには、大きく分けて、オ−バ−ライト対応のものと、非対応のものがある。
オ−バ−ライト対応のMOは、フォ−マットさえしてあれば、デ−タを上書きする形で、
どんどん記録できるので、書き込み時の処理速度が速い。
しかし、非対応のものは、たとえメディアがフォ−マットしてあっても、書き込む前に、
いったん記録面の削除処理が行われる。
そのため、非常に書き込み時の処理速度が低下するのである。
俺が持っているMOは、非対応のものなので、230MBのMO4枚分のバックアップを
行うだけで、50分くらいかかるのだ。
「時間がかかるから、バックアップを取るのが面倒になるんだよな...」
こういう時は、他の作業と並行した方が、効率がいい。
俺は、朝メシを食べ、シャワ−を浴びることにした。

戻ってきてみると...。
...終わっていない。
「ま、のんびりやりますか」
今日は、日曜日。
取り敢えず、これといった予定もはいっていない。
「一日、再セットアップで、つぶれそうだな...」

そんなこんなで、
(1)MOにバックアップ取得
(2)DOSのセットアップFDを使って、FDISK〜再起動
(3)FORMAT(システム転送を含む)〜再起動
(4)DOSのインスト−ル〜再起動
(5)CD−ROMドライブの、DOS上での認識作業(ドライバ組み込み)〜再起動

「あとは、窓95のセットアップし、必要なアプリケ−ションをインスト−ルすれば、
OK...と」
俺は、手慣れた手つきで、順に作業をこなしていった。
本当は、手慣れた...というふうには、なりたくなかったのだが、毎月FDISKをして
いた頃に、一通りの手順は、覚えてしまったのだ。
(作者注:『月に一度はFDISK』参照)
「さて、窓95のセットアップディスクは...と」
俺は、机の下に積んである、アプリケ−ションの箱の山を見つめた...つもりだった。
しかし...。
「ん?」
俺の目は、そのすぐ隣にある、コンセントに釘付けになっていた。
(電源ケ−ブルが...、1本、抜けてる?)
何の電源だ?
コ−ドをつまみあげ、たぐっていった先にあったのは...?
「HUB?」
げっ。
HUBの電源を入れずにおくのは、まずいんではないかい?
窓95をインスト−ルする前に、気付いてよかった。
俺は、コンセントにHUBの電源を入れ、窓95のセットアップ作業にかかった。

数時間後。
とりあえず、セットアップは終わり、ネットワ−クの設定を行った後、コンピュ−タを
再起動したら、正常に起動した。
「う〜ん、やっぱり、OSが、どっか吹っ飛んでたのかな...」
しかし...。
実は、ここにとんでもない落とし穴があったことに、俺はまだ、気付いていなかった。


第四章  オチ

さらに翌日。この日は月曜日。
授業も休講なので、俺は、セットアップし直したばかりのタワ−型パソコンで、提出する
ためのレポ−トを作ることにした。
パソコンの前に立ち、電源を入れる。

ぶぅぅぅぅん...、ピポッ!
「Kurusugawa Bios Ver3.12 
 Plug and Play Searching...

 Card-01: PE405T
 Found FX-120T CD-ROM 」

すると、パソコンの画面には...。

『WINDOWS保護エラ−です  コンピュ−タを再起動して下さい』

とりあえず、Safeモ−ドで起動したので、デバイスマネ−ジャ−を調べてみたのだが、
ここで、不思議なことが起こった。
取り付けたイ−サネットボ−ドのデバイスを削除すると、正常に起動するのだが、再度デ
バイスドライバ−を組み込むと...。
またしても、

『WINDOWS保護エラ−です  コンピュ−タを再起動して下さい』

となるのである。

「げっ、セットアップ、し直したばかりだぞ?」
俺は本気で、自分のタワ−型パソコンを蹴り飛ばしたくなった。
「また、FDISKか...?」
しぶしぶ、机の下に積んである、アプリケ−ションの箱の山を見つめた...つもりだった。
しかし...。
「ん?」
俺の目は、そのすぐ隣にある、コンセントに釘付けになっていた。
(電源ケ−ブルが...、1本、抜けてる?)
何の電源だ?
コ−ドをつまみあげ、たぐっていった先にあったのは...?
「HUB?」
げっ。
HUBの電源を入れずにおくのは、まずいんではないかい...って、えっ?
「まさか...。ひょっとして...?」
俺は、コンセントにHUBの電源を入れ、コンピュ−タを再起動した。

ぶぅぅぅぅん...、ピポッ!
「Kurusugawa Bios Ver3.12 
 Plug and Play Searching...

 Card-01: PE405T
 Found FX-120T CD-ROM 」

「...やっぱり...」
コンピュ−タが、正常に起動したのである。
つまり、HUBの電源が、パソコン起動前に入っていないと、『WINDOWS保護エラ−』と
なり、Safeモ−ドで起動してしまうのである。
「で、でも、何故あかりのノ−トパソコンでは、正常に起動したんだ...?待てよ、ノ−
トパソコン...?あっ!!」
そうか。
ノ−トパソコンのPCカ−ドによる接続の場合は、Plug&Playで、しかもホット
スワップが働くので、実際に使用する時まで、寝ているのである。
しかし、タワ−型パソコンで、しかもPCI(もしくはISA)スロットを使用している場
合は、ケ−ブルを抜いたり、スロットを差し替えたりすると、ハングアップしてしまう。
つまり、タワ−型パソコンを使用する場合は、周辺機器(HUBも含む)の電源を、全部入
れておかなければならないらしい。
「と、いうことは...」
そう。
俺は、大きな誤りに気付いたのである。
恐らく、FDISKなんぞしなくても、HUBの電源がパソコン起動前に入っていれば、
正常に認識されたであろうことに。
くらっ。
くらくらっ、くらっ...。
『お、俺の、休日を返せぇぇぇぇっっ!!』
朦朧とした意識の中で、俺は思わず、そう叫んでいた。


あとがき

今回は、自宅でタワ−型PCと、ノ−トPCを、インタ−リンクケ−ブルでケ−ブル接続
していたのを、HUBとTPケ−ブルでの接続に変更した際のボケを、「To Heart」にのせ
て書いてみました。

しっかし、こういうことって、あるんですね。
別に、イ−サネットボ−ドが接続されてるんだから、正常に起動しても、よさそうなもの
ですが。

なんか、『あとがき』が思い付かないので、こぼれ話を1つ。

<こぼれ話1:「雫」のディプレイ>
ディスプレイが火をふいた。
朝、電源を投入し、2〜3分使用していたら...。
急に、「雫」のごとく、画面が乱れ、「パチンッ」と音がして、真っ暗になること約1分。
さらに...。
な、なんと、ディスプレイの排気口から、モクモクと煙が上がったのだ。
「やばいっ!!」
すぐさま、ディスプレイの電源を切り、コンセントを抜いたので、事無きを得た。
2年半も、毎日のように使っていたので、そ〜ろそろ...とは思っていたが、
あまりにもあっけない最期であった。

こ−ゆ−話だと、結構書けてしまうので、わずかなノウハウを、公開していこうと思います。