すまあとどらいぶ 投稿者: kurochan
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この物語は、リ−フ殿の「To Heart」の設定をもとにした、二次創作物(Side Story)です。
内容は、WIN3.1マシンの電源を投入したら、「SMARTDRV.EXE」読み込み時にフリ−
ズするというトラブルに遭遇した際の、対処方法をノウハウにした話です。
人物および場所の設定は、すべて架空のものです。
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『すまあとどらいぶ』

第一章 おかしいな

「あれ?おかしいな」
俺は、大学の研究室で、誰に言うともなく、呟いた。
「お〜い、雅史〜」
隣に座って、同じく研究室のコンピュ−タをいじっていた雅史に、声をかけた。
「なに?」
「研究室のパソコンが、おかしいみたいなんだけど」
「どんなふうに?」
相変わらず、にこにこしながら、雅史は俺の使っているコンピュ−タのディスプレイを見た。
「電源入れたんだけど、立ち上がらね−んだ」
「え?どれどれ」
画面には、何やら英語で、訳のわからない文字が並んでいる。
「何度か電源を入れ直してみたんだけど、必ずこの『SMARTDRV.EXE』ってところで、止まっちまう」
俺は、画面の下の方に表示されている文字を指差した。
そこには、
「 LOADHIGH /L:1;16400 C:\WINDOWS\SMARTDRV.EXE 」
と表示されていた。
「DOSがおかしくなったのかな」
雅史は、誰に言うともなく、呟いた。
「さあ...。ところで、この『SMARTDRV.EXE』って、何だ?」
俺は、腕を組んで首をひねっている雅史に、聞いてみた。
「僕も、知らないよ。でも、ヘルプを見れば、わかるんじゃない?」
「ヘルプ?ヘルプって何だ?」
俺は、雅史を見た。
「僕も最近、教授に教わったんだけどさ。なんでも、『HELP』って打つと、使い方が表示される
らしいよ」
なるほど...って、おい。
「そんな事言ったって、キ−ボ−ドから入力しようとしても、何も受け付けないんだぞ。どうやって
調べればいいんだ?」
「だったら、別のコンピュ−タで調べればいいじゃん」
雅史の言葉に、俺は、はっとした。
「そうか。言われてみれば、マシンは1台だけじゃね−しな」
「でも、このマシンって、Win3.1がインスト−ルされてるんじゃなかったっけ?いつも浩之が
使ってるマシンは?」
ぎくっ。
「あ、ああ。あのマシンな。今、別の処理を実行中なんだ」
しどろもどろになりながら、俺は答える。
「ふうん、そうなんだ」
さして疑問も持ったふうでもなく、雅史は納得した。
ううう。やばいやばい。
このマシンをどうしても起動しなければならない理由はあるんだが、その理由を知られたら...。

数分後。
とりあえず、『SMARTDRV.EXE』の意味は、わかった。
なんでも、「ディスクキャッシュ」というもので、これを使用することで、パソコンの処理速度を、
飛躍的に高めることができるらしい。
しかし...。
「だ〜か〜ら〜、どうすりゃ、ええんじゃ〜!!」
そう。
そんなことがわかっても、実はどうにもならなかった。
何度リセットしても、さっきの、
「 LOADHIGH /L:1;16400 C:\WINDOWS\SMARTDRV.EXE 」
というところで、止まってしまう。
これでは、DOSが起動する以前の問題である。
「DOSのインスト−ルから、やり直してみる?」
雅史が、俺の顔を覗き込むようにして、言った。
「冗談じゃない。バックアップも取ってないのにそんなことしたら、長瀬教授に殺されるぞ」
「でも、『CONFIG.SYS』と『AUTOEXEC.BAT』さえあれば、DOSをインスト−ルし直しても、問題は
ないと思うよ」
「こんふぃぐしす?お−とえぐぜっくばっと?」
なんじゃ、そりゃ。
「コンピュ−タの電源を投入直後に、自動的に実行させるプログラムを制御する仕掛けなんだって。
日本語環境や、CD−ROMドライブを使えるようにしたり、マウスやキ−ボ−ドの動きを制御する
プログラムも、ここに記述しておけば、使えるようになるんだって」
「へえ」
雅史のやつ、いつのまにそんなこと覚えたんだ?
「でも、ドライバがインスト−ルされていることが、前提だけどね」
「ドライバ−?」
俺は、惚けた声を出した。
「あ、今、ネジとかしめる、プラスやマイナスのドライバ−を連想したでしょ」
雅史は、俺を見て、くすくすと笑った。
「当たり前だ。俺の辞書には、ドライバ−って言ったら、それしかね−ぞ」
雅史の言った意味がわからない俺は、思わずむっとする。
「ちがう、ちがう。コンピュ−タの世界で言うドライバ−ってのは、デバイスドライバ−のこと」
「でばいすどらいばあ?」
「コンピュ−タ本体と、周辺機器−たとえばキ−ボ−ドやマウス、サウンドボ−ドとか−との制御を
行う為のプログラムのこと。最低限のデバドラは、DOSのセットアップフロッピ−に入ってるか
ら、それ以外の周辺機器を接続する時は、別途、周辺機器メ−カ−から提供されるデバドラをイン
スト−ルするんだ。コンピュ−タって、不思議なものでね。一度起動しちゃうと、起動後にデバイス
ドライバをインスト−ルしても、すぐに有効にならないんだってさ。コンピュ−タの電源を投入した
時に、インスト−ルされてるデバドラを全部、OSが見に行くかららしいよ」
「.....」
俺は、目が点になっていた。
雅史は、さらに、
「Win95の世界では、『CONFIG.SYS』と『AUTOEXEC.BAT』が存在しなくても、コンピュ−タは
起動できちゃうけどね。DOSの世界も、面白いよ。デバイスドライバ−を上位メモリに持ってって、
コンベンショナルメモリが1KB空いた時の感動と言ったら...。中には上位メモリに持ってくと、
正常動作しないドライバがあったりして...。特にLANマネ−ジャは、メモリ喰いだから、あま
りお勧めできないね。でも、CD−ROMをDOS上で使うんだったら、『MSCDEX.EXE』を起動して
おく必要があるけど、あんまりデバドラ使いすぎると、メモリ足りなくなっちゃうし...。やっぱ
り、『MEM』コマンドで、思い通りにコンベンショナルメモリが空いてるのを確認できた時は、本当
に、生きててよかった...と思うもの。『MEMMAKER』で最適化するだけだと、どうしても満足でき
なくってさ。何とかして、『もっとコンベンショナルメモリを空けるには、どうしたらいいだろう』
って考えて...。マルチコンフィグって方法もあるけど、僕はまだやったことがないんだ」
ウットリとしながら、雅史は、HELPを起動したマシンの、DOS画面を見ている。
や、やばい。
既に、アブナイ状態になっている。
こ、これは、俺の貞操の危機だ。
「わ、わかったわかった。取り敢えず、その『こんふぃぐしす』と、『お−とえぐぜっくばっと』
だっけ?それだけバックアップ取って、DOSをインスト−ルし直してみよう」
俺はそう言うと、DOSの画面を見てウットリしている雅史を、コンピュ−タから引き剥がした。
「あ〜ん、あずさせんぱ〜いっ」
訳のわからないことを口走りながら、雅史が悶えている。
「気色悪いことすなっ!!」
俺は、思わず雅史に突っ込みを入れていた。

数十分後。
「.....」
「.....」
俺と雅史は、硬直していた。
「なんで、全然現象が変わんね〜んだぁ−!!」
ついに俺はキレた。
「わわっ、ちょ、ちょっと、落ち着いてよ、浩之」
立ち上がり、座っていた椅子を振りかぶって、ディスプレイに投げつけようとする俺にすがり
つく雅史。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
そりゃ、キレもする。
雅史が言った通り、FDからブ−トして、『CONFIG.SYS』と『AUTOEXEC.BAT』をバックアップ取得。
その後、DOSを全部インスト−ルし直した後、バックアップ取得してあった『CONFIG.SYS』と、
『AUTOEXEC.BAT』をCドライブのル−トディレクトリにコピ−し直した。
さて、再起動。
.....。
現象は、まるで変わらず。
やっぱり、
「 LOADHIGH /L:1;16400 C:\WINDOWS\SMARTDRV.EXE 」
というところで、止まってしまうのである。
念のため、『CONFIG.SYS』か『AUTOEXEC.BAT』の内容を、1ステップずつ確認しながら起動してみた
が、結果は同じ。
同じところで、ハングアップしてしまう。
「こうなったら、長瀬教授に相談してみようよ。ね?」
ああ...、また教授に怒られる...。
別に、いいんだけどさ...。
雅史の提案に、俺は無言で頷いた。


第二章 起動方法

「...というわけで」
俺は雅史に付き添われ、研究室に戻ってきた長瀬教授に、助け船を求めていた。
「ふ−ん」
長瀬教授は、気のなさそうな返事をする。
「で?その原因究明を、僕に行って欲しいと」
「はい」
俺は頷いた。
「まったく。研究室でマシントラブルを起こすのは、いっつも君なんだから...」
長瀬教授は、ブ−ブ−文句を言いながら、机の引き出しを開けた。
「取り敢えず、フロッピ−からブ−トしてみるか」
フロッピ−を1枚、取り出すと、俺が『起動できない』と騒いだコンピュ−タの前に立った。
ラベルには、
『DOSのセットアップフロッピ−1枚目』
と、書かれている。
「さて、と」
フロッピ−を挿入し、電源を入れる。

ぶぅぅぅぅん...、ピポッ!
「Kurusugawa Bios Ver3.12
Plug and Play Searching...

Card-01: PE405T
Found FX-120T CD-ROM 」

ガ−ガ−ッ、ガ−ッ...。
フロッピ−ディスクの内容が、読み込まれていく。
やがて読み込みが終わり、DOSのインスト−ル画面が表示された。
教授は、キ−ボ−ドで「F3」キ−を押して、DOSプロンプトの画面にする。
「どれどれ...」
『 SCANDISK C: 』
と入力し、Enterキ−を押す。
画面が真っ青になり、黄色い帯が表示された。
数秒後。
『 このドライブにはエラ−が発見されませんでした 』
「う〜ん、そうきたか」
教授は、俺の使っていたコンピュ−タに話し掛ける。
いつもながら、一種異様な光景だ。
「ならば、これはどうだ?」
『 SCANDISK D: 』
と入力し、Enterキ−を押す。
再び画面が真っ青になり、黄色い帯が表示された。
数秒後。
『 このドライブにはエラ−が発見されませんでした 』
「う〜ん、そうきたか」
再び教授は、俺の使っていたコンピュ−タに話し掛ける。
「ならば、これでどうだ?」
何やら教授は、キ−ボ−ドからコマンドを叩き始めた。
そして、フロッピ−を抜くと同時に、
「いっけぇぇぇっ!!」
一声とともに、「CTRL」+「ALT」+「DEL」を押す。
再起動。
すると...。
画面にパラパラと、英語の文字が表示される。
そして、
「なるほど。そ−ゆ−ことか...」
長瀬教授は、今度は一人でウンウン頷き、ディスプレイをなでなでした。
その光景は、いつもにも増して、異様だった。

「...原因がわかったよ」
長瀬教授は、俺達に向き直って、言った。
「えっ?」
俺と雅史は、同時に感嘆の声を上げた。
「どうやら、スワップファイル領域が、破損していたみたいだね」
最初に教授の口から出たのは、そんな言葉だった。
「すわっぷふぁいる?」
俺は、惚けた声を出した。
「君も調べたようだが、ディスクキャッシュのことだ。WIN95と同様、WIN3.1の場合でも
ディスクキャッシュは自分で割り当てるんだが、どうやら、この領域が何らかの原因で破損していた
ようだ」
「そ、それじゃあ...」
俺はそこまで言うと、絶句した。
「そう。この前と同様の現象だ。ただ今回は、明らかに割り当てられた領域が破損していたようだが
ね」
「げ...」
「取り敢えず、スワップファイルを削除したら、DOS自体は起動できるようになった。これで、同様
の現象が発生するようなら、ハ−ドディスクをフォ−マットしてインスト−ルし直すか、それでもダメ
なら、ハ−ドディスクごと交換したほうが近道だね」
その時、長瀬教授の目が光ったのを、俺は見逃さなかった。
俺の脳裏に、あの時の記憶が、鮮明に蘇った。
結局、ロ−カルハ−ドディスクを1台、秋葉原まで買いに行って、その後、インスト−ルされていた
アプリケ−ションを、同じようにインスト−ルし直したんだっけ...。
その後1ヶ月、俺はパンの耳をかじるような生活を強いられたのである。
(作者注:「ロ−カルハ−ドディスクの罪」参照)
あんな生活は、もういやだぁ!!
ちっくしょ〜、何としても、お金をかけずに直してみせるぞ〜!!


第三章 完了

結局、スワップファイルを、DOSプロンプトからDELコマンドで削除し、再起動後、Win3.1上
で割り当て直したところ、正常に起動するようになった。
しかし...。
「なんでWin3.1のマシンを、急に使おうと思ったんだね?」
長瀬教授の思わぬ突っ込み。
「い、いえ、ただ、なんとなく...」
特に理由のなかった俺は、しどろもどろになっていた。
「いまさら、16ビットでもあるまい。それとも、Win3.1でなければならない理由でも、あった
のかね?」
や、やばい。
誰も使っていないマシンというのをいいことに、エッチなサイトからダウンロ−ドした、GIFファ
イルが入っているなんて、口が裂けても言えないぞ。
「い、いえ、ただ、Win3.1のマシンを、急に使ってみたくなって...」
しどろもどろになりながら、俺が長瀬教授の突っ込みをきりかえすのに、それから三十分の時が必要
だった。


あとがき

今回は、WIN3.1マシンの電源を投入したら、「SMARTDRV.EXE」読み込み時にフリ−ズするという
トラブルに遭遇した際の対処方法を、「TO_HEART」に乗せて書いてみました。
上記の現象は、会社で使っているサブマシンで、実際に起きた現象です。
いまさら、WIN3.1か...という意見も聞こえてきそうですが、結構、企業では現役で使用さ
れています。
WIN95の不安定さを理由に、導入を躊躇った、システム管理者の方々の意向なのでしょうか。
余談ですが、最近、いろんなOSで、いろんなアプリケ−ションを使うことが多く、環境を作るのに
頭を痛めております。
一口に、
「Windowsと、MSOffice」
と言っても、Win3.1かNTか95か、同様に、Office4.3か95か97か、といった
具合に、いろいろな組み合わせが考えられるのです。
特に、NTの場合、16ビットアプリケ−ションをインスト−ルすると、動作が不安定になる場合も
あるそうで...。
さすがに、OSをインスト−ルし直すのはしんどいので、システムコマンダ−でブ−トを切り替えよ
うかと考え始めています。
「MSOffice」は、その都度アンインスト−ルしてから、再インスト−ルを行うということで。

こ−ゆ−話だと、結構書けてしまうので、わずかなノウハウを、公開していこうと思います。