------------------------------------------------------------------------------- この物語は、リ−フ殿の「To Heart」の設定をもとにした、二次創作物(Side Story)です。 内容は、サ−バ−のデ−タを、ZIPドライブにバックアップ取得する際に発生した トラブルと、その時の対処方法をノウハウにした話です。 人物および場所の設定は、すべて架空のものです。 ------------------------------------------------------------------------------- 『ロ−カルハ−ドディスクの罪』 第一章 おかしいな 「あれ?おかしいな」 俺は、大学の研究室で、誰に言うともなく、呟いた。 「お〜い、雅史〜」 隣に座って、同じく研究室のコンピュ−タをいじっていた雅史に、声をかける。 「なに?」 「サ−バ−のデ−タが、おかしいみたいなんだけど」 「どのデ−タ?」 相変わらず、にこにこしながら、雅史は俺の使っているコンピュ−タのディスプレイを見た。 「俺のディレクトリ下のファイル全部」 「え?どれどれ」 雅史は自分が使っているコンピュ−タで、ウィルスチェックを始めた。 数分後。 「どのファイルも、ウィルスに感染してないし、正常に起動できるよ」 「そりゃわかってるって」 「じゃあ、何がおかしいの?」 「バックアップが取れね−んだ」 「え?」 そう。 何故か、バックアップが取得できないのである。 俺は、ゼミのレポ−トや、卒業論文の下書きを、大学のサ−バ−上に置いている。 家に持ち帰る時は、自腹のZIPドライブでバックアップ(ファイルコピ−)を取り、家のノ −トPCとシリアル接続でやり取りしている。 だが、今日に限って、バックアップを取得しようとすると、コンピュ−タがハングアップして しまうのだ。 途中までは取得できるのだが、特定のファイルをコピ−しようとするところで、必ずと言って いいほど、WIN95の真っ青な画面になってしまう。 「ZIPのメディアが、くさってるのかな」 「それなら、新しいメディアでやってみれば?」 雅史が言う。 「やってみたけど、ダメだ。やっぱり青い画面になっちまう」 俺は、溜め息をついた。 「ロ−カルハ−ドディスクにコピ−してみたら?」 「そうか。そうすれば、ZIPが悪いかどうかの切り分けがつくな。よし、やってみよう」 数分後。 「どう?」 「う−ん、やっぱり途中で止まっちまう」 ロ−カルハ−ドディスクにコピ−している途中で、真っ青な画面になってしまう。 俺は、にっちもさっちもいかなくなった。 「コピ−されなかったファイルは、わかるんでしょ?」 「ああ」 「じゃあ、コピ−できなかったファイルを、全部サ−バ−から削除しちゃえば?」 「冗談じゃない。卒論のテ−マや、ゼミのレポ−トも入ってんだ。そう簡単に消せるか」 とんでもないことを言いやがる。人のデ−タだと思って。 「でも、コピ−できなかったファイルが、壊れてる可能性もあるんでしょ?」 「そりゃ、そうだけどさ」 「やってみようよ」 ううう、人が徹夜で作ったレポ−トが...。 数十分後。 「.....」 「.....」 「なんで、全然現象が変わんね〜んだぁ−!!」 ついに俺はキレた。 「わわっ、ちょ、ちょっと、落ち着いてよ、浩之」 立ち上がり、座っていた椅子を振りかぶって、ディスプレイに投げつけようとする俺にすがり つく雅史。 「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」 そりゃ、キレもする。 涙を飲んで、コピ−できなかったファイル(ゼミのレポ−ト、卒論のテ−マ、あかりと遊園地 に行った時に撮ったデジカメのデ−タ、アダルトサイトからダウンロ−ドしたGIFファイル やJPEGファイル...etc.)を、全部削除したのに、やっぱりコピ−の途中でハングアッ プする。 「こうなったら、長瀬教授に相談してみようよ」 雅史は、まだ俺にすがりつきながら言った。 「ううう、俺の、ゼミのレポ−トが.....」 「ね?」 雅史の提案に、俺は無言で頷いた。 第二章 消えたデ−タよ、いずこに 「...というわけで」 俺は雅史に付き添われ、研究室に戻ってきた長瀬教授に、助け船を求めていた。 「ふ−ん」 長瀬教授は、気のなさそうな返事をする。 「で?その原因究明と、削除したサ−バ−のデ−タを、僕に修復して欲しいと」 「はい」 俺はうなずいた。 「まったく。サ−バ−上のデ−タを、間違って削除したならまだしも、自分の意志で削除した んだろう?そこまで責任持てんよ」 確かに。 「まあ、できるだけのことは、やってみるがね」 そう言うと教授は、煙草を取り出すと、口にくわえた。 煙草に火を付けると、ゆっくりと煙を吐く。 「.....」 教授は、煙草をくゆらせながら、額に手を当てて、考え込んでいる。 俺と雅史は、ただただ待つしかなかった。 やがて教授は、灰皿で煙草をもみ消し、言った。 「削除してから、どの位時間が経っているかね?」 「...30分くらいです」 俺は、時計を見ながら答えた。 「どのサ−バ−?」 「いつも研究室で使っているサ−バ−です」 「サ−バ−名は?」 「『Leaf』です」 「ディレクトリの完全名称は?」 「\\Leaf\Sys\To_Heart\Fujitaです」 教授は、俺の答えた内容を、手もとにあったメモに書きながら、次々と質問してくる。 俺も、せっぱ詰まった状況からか、スラスラと答えていた。 「Netwareサ−バ−か。あのサ−バ−は、確か3.12Jだったな。他に、誰かこのサ−バ−を使っ ていた学生は?」 「まさ...佐藤だけです」 「藤田君の使っていたコンピュ−タで、ハングアップするんだね?」 「はい」 「そうか...。もしかしたら、救えるかも知れんな」 長瀬教授は、呟いた。 「ほ、本当ですか?」 俺は、藁にもすがる思いだった。 「じゃあ、まず、私のコンピュ−タで、やってみよう」 教授は、机の中から、ノ−トパソコンを取り出した。 ぶぅぅぅぅん...、ピポッ! 「Kurusugawa Bios Ver4.00 Plug and Play Searching... Card-01: OPL-3T Found FX-160T CD-ROM 」 「まず、ウィルスチェックをして...と」 長瀬教授は、俺の使っているディレクトリに、ウィルススキャンをかけ始めた。 「藤田君のディレクトリ内容を、私のコンピュ−タのロ−カルハ−ドディスクにコピ−して みよう。正常にコピ−できれば、サ−バ−上のデ−タは、生きていることになる」 そう言うと、教授は、サ−バ−上の俺のディレクトリごと、コピ−し始めた。 絶対、途中でハングアップする...と、思っていたのだが。 「おや、全部、正常にコピ−できたぞ」 げっ、本当だ。 念のため、ディスク容量と、ファイル数も確認してもらったが、完璧にコピ−できていた。 「ZIPドライブじゃないの?」 教授は、ジト目で俺を見た。 「で、でも、ZIPにコピ−しても、俺の使ってるコンピュ−タにコピ−しても、ハングア ップしてしまうんですよ。ZIPとは、考えにくいんですが」 「それもそうだな...。よし、君のZIPドライブを貸してくれ。私のコンピュ−タに接 続して、正常にコピ−できれば、ZIP以外の原因ということになる」 数分後。 「おや、全部、正常にコピ−できたぞ」 本当だ。 やっぱり、完璧にコピ−できていた。 「と、いうことは...」 そこまで言って、俺と長瀬教授の目線が合った。 「藤田君の使っているコンピュ−タに、問題があることになる」 そう。 教授のコンピュ−タでできて、俺の使っていたコンピュ−タでできないと言うことは...。 俺の使っていたコンピュ−タに、何らかの原因がある、ということになる。 「藤田君、君の使っていたコンピュ−タを、再起動してくれ」 俺は、真っ青な画面のまま、フリ−ズしていたコンピュ−タの、リセットボタンを押した。 ぶぅぅぅぅん...、ピポッ! 「Kurusugawa Bios Ver3.12 Plug and Play Searching... Card-01: PE405T Found FX-120T CD-ROM 」 『初音のないしょ!!』のCD−ROMに入っていた、琴音ちゃんの壁紙が表示される。 「じゃ、調べてみますか」 長瀬教授は、常駐しているウィルスチェッカ−を終了させ、スキャンディスクを起動した。 『標準スキャン』を選択し、『エラ−を自動的に修復(F)』のチェックボックスをはずす。 (作者注:うぃるすばすたあを起動したまま、スキャンディスクやデフラグを実行すると、 ハングアップすることがあります) 数秒後。 『このドライブにはエラ−は発見されませんでした』 「う〜ん、そうきたか」 教授は、俺の使っていたコンピュ−タに話し掛ける。 いつもながら、一種異様な光景だ。 今度は、『完全スキャン』を選択し、『エラ−を自動的に修復(F)』のチェックボックスを はずす。 「少し時間がかかるから、向こうで削除したファイルをしゅう...」 そこまで言って、長瀬教授の言葉が途切れた。 「どうしたんですか?」 俺が聞くと、教授は何も言わず、画面を指差した。 そこには...。 『384個の不良クラスタが発見されました。』 長瀬教授は、無言のまま、『ドライブのエラ−を修復』をクリックする。 すると、どこからか、「ガコン、ガコン」という音が聞こえてきた。 画面には、さらに...。 『16個の不良クラスタが発見されました。』 「...原因がわかったよ」 長瀬教授は、俺達に向き直って、言った。 「えっ?」 俺と雅史は、同時に感嘆の声を上げた。 「ロ−カルハ−ドディスクが、破損しているんだ」 「え?」 最初に教授の口から出たのは、そんな言葉だった。 「知っての通り、Win95は、メモリ領域が不足すると、ハ−ドディスクをメモリの延長と して使用する。だから、ファイルコピ−中にメモリ領域が不足すると、ハ−ドディスクに一時 ファイルを作成する。その一時ファイルを割り当てようとする領域が、破損している領域に 割り当てられた場合...」 「あっ!」 俺は、思わず声を上げた。 「そう。正常に読み書きができなくなっている領域に、一時ファイルが割り当てられた為に、 WIN95がハングアップしてしまったようだね」 「そ、それじゃあ...」 俺はそこまで言うと、絶句した。 「そう。おそらくサ−バ−上のデ−タは、全部正常だった。しかし、ロ−カルハ−ドディスク に異常があったために、おかしなことになったようだね」 「げ...」 「まあ、ロ−カルハ−ドディスクを修復して、それでも同様の現象が発生するようなら、ハ−ド ディスクごと交換したほうが近道だね」 その時、長瀬教授の目が光ったのを、俺は見逃さなかった。 このコンピュ−タを使っているのは、実質、俺だけだったのだ。 「...で、で、でも、俺は壊してませんよ。ロ−カルハ−ドディスクには、アプリケ−ション しか入れてませんし」 「いやあ、別に君が壊したなんて言ってないよ。でもハ−ドディスクなんて、いつ壊れてもおか しくないしね。そのために、常日頃から、『バックアップだけは取っておけ』と言っておいた だろ?」 「.....」 絶句する俺。 「まあ、ハ−ドディスクなんて、今は安くなってるしね。せっかくだから、セットアップの方法も 教えるから」 ずうううぅぅ〜ん...。 「さて、それじゃあ、僕のコンピュ−タで、藤田君のデ−タを修復しようか」 教授は、意気揚々と、自分の机に戻っていく。 俺は、今月の生活が、急激に質素になるのを感じていた。 第三章 復活した 「え〜と、Netwareのファイル回復のコマンドって、何だっけ」 長瀬教授は、WIN95からDOSプロンプトを立ち上げ、何やらコマンドを叩いている。 「『pconsole』だったか?いや、これはプリントコンソ−ルだな。『rconsole』だっけか?」 コマンドを叩く度に、真っ青な画面になる。 俺は、画面を見る度に、WIN95がハングアップしたのかと思っていたが、どうやらそうでは ないらしい。 「しっかし、Netwareって、箱は真っ赤なのに、なんで画面は青いんだろうな...」 訳のわからないことを言いながら、長瀬教授はキ−ボ−ドに向かっている。 「『syscon』だっけ?あ、違った。う〜ん...」 教授は、煙草を取り出すと、口にくわえた。 火は付けず、くわえたまま、器用に煙草でくるくると、円を描いている。 本当にシステム管理者か?このオッサン。 やがて、 「あっ、思い出した。『salvage』だ」 そう小さく叫ぶと、素早くコマンドを叩いた。 「おお、これだ、これだ」 画面には、何やら階層のような表が表示された。 「さるべえじ?」 俺は、惚けた声を出した。 「うん、そう」 長瀬教授は、俺に向き直った。 「どういう原理だか忘れたが、Netwareでは、ファイルを削除しても、メモリ上に削除されたファ イルが残っているんだ。簡単に言えば、間違って削除したファイルを、メモリ上にあるうちに復 活させれば、ファイルは元通りになる」 「へえ〜」 俺は思わず、感嘆の声を上げた。 「え〜と、さっき藤田君から聞いた内容を書き留めたメモは...」 教授は、おもむろに、ゴソゴソとメモを探し始めた。 「おっ、あった、あった」 先ほどのメモを見つけたらしく、机の脇に置く。 「何個ぐらい、ファイルは削除したんだい?」 「100個ぐらいです」 「100個ぉ?」 長瀬教授は、頭を抱えた。 「このコマンドは、ファイルを一度に1個ずつしか、復活できんのだぞ」 「え〜っ!!」 それから俺は、削除してしまったファイルを、一つ一つ、復活させる作業に追われることになった。 あとがき 今回は、サ−バ−のデ−タを、ZIPドライブにバックアップ取得する際に発生したトラブルと、 その時の対処方法を、「TO_HEART」に乗せて書いてみました。 今思い出してもぞっとするのですが、Netwareの『salvage』コマンドを思い出せなかったら、私は 卒倒していたかも知れません。 上記の時は、ロ−カルハ−ドディスクを修復しても、しばらくすると、また不良セクタが発生して しまったので、結局交換しました。 唯一の救いは、吹っ飛んだハ−ドディスクが、ブ−トディスクでなかったこと。 本気で自分の使いやすいように設定したり、アプリケ−ションをインスト−ルしてたら、まる一日 はかかってしまいます。 こ−ゆ−話だと、結構書けてしまうので、わずかなノウハウを、公開していこうと思います。 (追伸) 久々野 彰様 →CD−DAでお悩みとのことですが、詳細な機器構成、インスト−ルされているアプリケ−ション 等がわかれば、少なからず御協力できると存じます。 とは言っても、私がお答えできるのは、DOS/V機だけです。 お急ぎでしたら、私がいつも質問を投稿しております、「Web Board」というホ−ムペ−ジを御覧に なられるのが宜しいかと存じます。 アドレスは、以下の通りです。 WIN3.1、WIN95、WinNT、Mac、インタ−ネット、アプリケ−ション等、質問内容 に応じて「部屋」が分かれております。 可能な限り、詳細な現象、使用している機器構成、アプリケ−ションのバ−ジョン等を明記すること で、半日〜一日くらいで、その分野に強い方からの貴重な御意見を頂戴できると存じます。 久々野 彰様以外にも、コンピュ−タのことでお悩みの方がおられましたら、御検討下さい。 (ゲ−ムの投稿欄もありますが、非常に硬派な御意見ばかりですので、18禁ネタはまずいと思います) http://www.host.or.jp/home/board/default.htm