悲しみを越えて−梓編Epilogue− 投稿者:


*あらすじ
千鶴が死んで3日後・・・
悲しみに沈む耕一。
そんな中「鬼」が再び出現した。
耕一は「鬼」を倒そう外に出ようとした時梓に呼び止められ買い物に付き合わされる。
その時梓に千鶴の死因を聞かれるが家に帰ってからと約束をした。
だがしかし、耕一はそのことを手紙で書いて1人で「鬼」を探しに出かけた。
そこで耕一は「鬼」を発見する。
その「鬼」はダリエリだった。
耕一はダリエリと闘うがその圧倒的な力に今まさにやられようとしていた。
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今にもダリエリの手が俺に達しようとした時
「何やってるんだ!しっかりしろよ、耕一!」
という梓の声と共に黒い影がダリエリの横に突撃していった。
ダリエリは少し飛ばされたものの、すぐに体勢を取り戻した。
「アズエルか・・・その性格は変わってないようだな・・・」
梓は怒った表情で
「ダリエリ、あんたが千鶴姉を殺したのか?それに耕一まで・・・・」
そう言った時梓の後ろに陽炎が出てきた。
そして梓はダリエリに飛び掛かっていった。
「許サナイ!許セナイ!ヨクモ・・・・ヨクモ千鶴姉ヲ、ヨクモ耕一ヲ!」
だめだ!梓、お前では勝てない!
そう叫ぼうとしても声が出なかった。
梓はダリエリにふき飛ばされながら何度もダリエリに飛び掛かっている。
俺は心底自分が情けなく思えた。
俺にもっと力があれば!
どうして俺はこうも非力なんだ!
もっと力が欲しい。
人並外れた力じゃなくて今は梓を救うだけの力が欲しい。
それだけでいい。
それさえあれば今はいい。
動け!動け!動いてくれ!
その時、梓がダリエリにふき飛ばされ、そのふき飛ばされた梓をダリエリが追っかけていった。
梓に止めをさすつもりだ!
俺の体は動かない。
もうだめかと思った時、梓のまわりに突風が吹いた。
そして、梓は空中で一回転してその場に着地してダリエリの攻撃をかわした!
「千鶴姉!」
と梓が叫んだと同時に
「ふん・・・・リズエルめ・・・余計なことを・・・」
とダリエリが言って、梓に飛び掛かっていった。
梓にはもう避けるだけの体力も気力も残ってないだろう。
くそ!体が動けば・・・
動け!動け!
俺の命が無くなってもいい。だから動いてくれ!
そして、俺は最後の力をふりしぼって立ち上がり、そして・・・
ダリエリの攻撃を体で受け止めた。
そしてダリエリの腹部に自分の鈎爪を突き立てる。
生暖かい液体が俺の顔にかかったように思った。
「一緒に行こうぜ・・・・俺1人では死なない・・・ぞ・・・・」
そう言った時に俺とダリエリは同時に倒れた。
梓は俺の元に駆け寄ってきて俺を抱き起こして
「耕一!しっかりしろよ!耕一!」
と叫んでいる。
ごめん・・・梓・・・俺は・・・もう
「なぁ、うそだろう?お願いだよ、うそだって言ってくれよ!耕一!」
俺の顔に生暖かい液体が落ちているように思えた。
「なぁ、目を開けてくれよ・・・・耕一・・・」
だんだん目の前が白くなっていく・・・・
俺はこのまま死ぬのだろうか・・・
その時、誰かが俺の心に語り掛けてきた。
「次郎衛門、私はお前を待ち続けた。だがしかしお前はまだ完全には覚醒していなかった。」
完全に覚醒?なんのことだ?
「お前にはまだ目覚めていない未知の力がある。なぜ使えないかもわかった。」
もういい・・・どちらにしてももう俺は死ぬんだから・・・
「お前は生きたくないのか?次郎衛門よ。」
生きれるものなら生きたいが・・・
「その力さえ引き出す事ができればお前は生き延びることができる。」
どうすればいいんだ?教えてくれ、ダリエリ!
「急に元気になりおって。簡単なことだ。お前が『生きたい』と思えばいい。」
俺は今でもそう
「思っているのか?次郎衛門。リズエルが死んで生きる気力を無くしたお前が!」
確かにそれは図星だった。
「ではな・・・俺がお前に話す事はもうない。生き霊のようなお前にはな!」
そう言ってダリエリの気配は消えた。
俺は「生きたい」と今でも思っているのだろうか?
「生きなければならない」ではなく。
俺は考えた。
その時梓の泣き顔が頭に浮かんだ。
生きたい。
俺の為に涙を流してくれる女がいる。
俺は梓に対して愛おしさが募った。
生きたい。
梓に俺の様な悲しみを与えたくない。
生きたい。
生きたい。
生きたい。
そして俺の意識は闇へと沈んでいった。
・
俺が目を開けると梓の顔が目の前にあった。
「耕一!」
そう、梓は言って俺に抱き着いてきた。
俺は梓の頭をなでて
「もう大丈夫。心配かけてごめんな・・・」
梓はただ泣きじゃくるだけだった。
「もう悲しい思いはさせないよ・・・梓」
俺は心の安らぎを感じていた。
俺は心の中でダリエリに
ありがとな・・・今度会った時は決着をつけような。
と言った時
「ふふ・・・楽しみにしてるぞ・・・次郎衛門・・・」
と頭の中に聞こえてきた。
俺はその時
「ダリエリ・・・」
とつぶやいた。
「えっ?どこにいるんだ?」
と梓が言う。
俺は
「もう消えたよ。俺の悲しみとともにね。」
と言って梓を強く抱きしめた。
「俺さ、本当はもう死んだかと思った・・・だけどさ・・・その時お前の顔が出てきたんだ。」
「えっ?」
「お前の為に生きたいって思ったんだよ。」
「耕一・・・」
二人の影が重なる。
俺達は長い長い口付けをかわした。
俺の心の痕は消えようとしていた。
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これにて梓編終了です。
もう時間がないので今日はこれにて。