スカウト 投稿者:JUN 投稿日:11月3日(金)22時23分
              DR2ナイト雀鬼 SS


                                  JUN

                 スカウト




 それは夕暮れ時の頃でした。
 私はルミラ様のお供として、街中を出歩いていました。
 野暮用とはいえ私のような下級魔族が、ルミラ様のお供を務めさせてもらえると
いうのは身に余る光栄です。ルミラ様のお手を煩わせないよう、しっかりと務めな
ければならないと気構えていました。


  たま 「アレイ、また図々しくもナレーター役やってるニャロメ」
  アレイ「そんなこと言われても、お供をしていた私が説明しないと」
  たま 「夕食の買い出しくらいで気張るなんて情けないニャア」」
  エビル「……スーパー特売。タイムセールスで惣菜100円引き」
  イビル「聞いてて情けないよな。魔界の名門デュラル家の当主ともあろうお
      方が」
  フランソワーズ「お使いはもともと私の役目ですが」
  アレイ「ええん、いいじゃありませんか。私ごときがルミラ様のお供させて
      もらえるなんてめったに無い事ですから」
  メイフィア「はいはい。アレイいじめはそこまでにして、続き聞きましょ」


 そんな私の前を歩いていたルミラ様に、声をかけてきた男がいたのです。
「ちょっと、そこのお姉さん。ちょっといいかな」
「ん。お姉さんて、私の事」
「そう、そこのお姉さん。いやあ遠目に見ても美人だったけど、近くで見るともっ
とお奇麗ですね」
「あら、ありがと。でもナンパにしてはちょっと下手ね」
 そう言ってルミラ様は、男を置いてスタスタと歩きだそうとしたのです。
「ちょっ、ちょっと。ナンパじゃないんだ。話を聞いてもらえないか!?」


  イビル「どう聞いてもナンパじゃんか」
  アレイ「ええ、私も始めはそう思ったんです」
  たま 「ルミラさまに声を掛けるとは命知らずだニャー」
  フランソワーズ「ルミラ様をエスコートするには、明らかに役者不足と思わ
      れます」
  エビル「……干物にされたのならせめて魂は運んでやろう」
  アレイ「だからナンパじゃなかったんですってば」
  メイフィア「ということは他には何があるのかしら」


 その男は名刺を見せると、有名どころの芸能プロダクションを名乗りました。
「緒方プロダクション? なに、それ」
「緒方プロダクション……って、あの!?」
「そう、多分その緒方プロダクション」
「あら、知ってるの。アレイ」
「知ってるも何も、元ミュージシャンの緒方英二が興した芸能プロダクションで、
あの森川由綺や緒方理奈もそこの出身ですよ、ルミラ様」
「ふ〜ん。で、その緒方プロダクションが何のよう?」
「はっはっはっ、きついなあ。芸能プロダクションの人間が声をかけたら、用件は
決まっているじゃないか」
 その男の人はルミラ様の目を覗くようにして言いました。
「芸能人になる気ない?」


  イビル「なんだ、スカウトだったのか」
  アレイ「そうなんです。君なら絶対スターになれるってルミラ様に」
  たま 「ルミラ様がアイドルにニャるのか? アイドルになればお金ががっ
      ぽがっぽ儲かるニャロメ」
  メイフィア「それは確かにいいアイデアね」
  エビル「……ルミラ様はアイドルという柄じゃないと思う」
  フランソワーズ「しかし私たち魔族が人間界で公に名前を売るような行為は、
      ステュクス条約で戒められていたのではないでしょうか?」
  アレイ「はい。私もそう言おうと思ったのですが、ルミラ様はすっかりその
      気になられてしまって」
  イビル「それでどうなったんだ。まさか本当にアイドルになるのか」
  アレイ「いえ、それがその……」


 スカウトの男の人は、ルミラ様を説得するのに入れ込んでしまいました。
「いや、ルミラ君と言ったっけ。君ならいけるよ、絶対。その完璧なまでに整った
美貌と、それにもかかわらずにじみ出る庶民くささ……いやいや、親しみやすさは、
まさしく僕がイメージしたとおりだ、うん」
「あらー、ちょっと引っかかる言い草だけど、私がスターか。悪く無いわねー」
「うん、絶対。僕が保証するよ。君なら確実にビッグスターになれる」
 ルミラ様もすっかりその気になっていました。
 しかしその次にスカウトの人が出した言葉が、ルミラ様の決心を変えてしまった
のです。
「そう、僕に任せるんだ。君を絶対に『陽のあたる場所』に導いてみせる!」


  イビル「あちゃー、それは決定的だな」
  エビル「禁句だな」
  フランソワーズ「それでルミラ様は機嫌悪かったのですね」
  アレイ「はい、ルミラ様はその場でスカウトを断ってしまいました」
  メイフィア「吸血鬼には確かに禁句よね」
  たま 「でもルミラ様、昼までも平気な顔して外出てるニャロメ?」
  メイフィア「いくらルミラ様が太陽光線に耐性があるからといって、吸血鬼
      が太陽を苦手とする事には変わりが無いわ。それにルミラ様は、昼
      に出かける時はいつも日焼け止めクリームとカラーコンタクトを使
      っているの、気付かなかった?」
  アレイ「あら、そうだったんですか?」
  イビル「って、お前も知らなかったんかい!?」

  ルミラ「あなたたち、何駄弁ってるの!? 食事が済んだらさっさと夜の
      バイトに行くわよ!」

  たま 「はーいニャロメ」
  イビル「お前はバイトはいいんだっつーの」
  メイフィア「あらあら、まだ機嫌悪そうね」
  フランソワーズ「皆様、早くお食事をしないと後片づけができません」
  エビル「……ごちそうさま」


 私たちのバイト生活は、まだまだ続きそうです。


  たま 「って、最後までアレイがナレーターやってるニャ〜」
  イビル「生意気な、こうしてやる」
  アレイ「えーん、申し訳ございませーん」



                スカウト (終)


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 うーん、一発ネタでしたがちょっと長くなってしまいました。




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