破伝−痕− 鬼狩伝 第二章「雷」 投稿者: HMR−28
激しい雷雨の中、二人の異形の者達が相対している。
片や忌まわしき鬼の力を受け継ぎし者、

柏木耕一。

片やその鬼を狩る宿命を受け継ぎし者、

デュルゼル。

あるいはそう名乗る者。
さらに、その二人の異形の者達を見守る者達が居た。

その者達の名は―
―柏木千鶴、そして柏木梓。


   第二章 「雷」


「千鶴姉! あいつは一体なんなんだよっ!?」

私の妹―梓が激昂した様子で聞いてくる。
無理もないだろう。
いきなり謎の黒覆面が現れて我が家を全壊させた上、
今度はその黒覆面が地上最強の生物である鬼――耕一さんと互角以上に張り合っているのだ。
私だって叫びわめきたいくらいだ。
しかし目の前の状況がそれを許さない。
あの男は耕一さんを狙ってやってきた。
それだけは間違いない。
つまりそれは耕一さんが危機に晒されているということだ。

 数刻前…

丁度夕立が激しく降り始め、梓が洗濯物を大慌てで取り込み始めたその時だった。

「柏木耕一を出せ」

 男はいきなり庭の松の木のてっぺんに現れるなり、そう言った。
まさに沸いて出たとしか言いようのない現れ方だった。

「――っていきなり人ん家の松の木の上に現れていきなり何言ってやがんだこの変質者!」

「えっとあの、そんなところに立たれるとご近所から丸見えでとても恥ずかしいのですが…」

梓と私が各苦情を叩き付けるが向こうは全く気にしてくれないようだった。

「ふむ、どうやらいないようだな
 ならば少し狼煙を上げさせてもらうか…」

「待ちやがれ! 少しは人の話を…」

 梓がさらに文句を言おうとしたその時だった。
男の手に一筋の刀が現れたかと思うと、それと同時に辺りに凄まじい音が轟いた。

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!

 空間自体を振動させるかのような音。
そしてその後に、衝撃。

スガァァァァァァァァァァァァァァァ!

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 抗うすべもなく私達は衝撃に吹き飛ばされた。
怪我が軽傷ですんだのは幸運だったと言って良いだろう。
何故ならその衝撃の直撃を受けた柏木家は、傷どころか一部の瓦礫を残して、
家そのものが消滅してしまったのだから。
それとほぼ同時に耕一さんは帰ってきた。

…耕一さん…

 二人は未だに相対したままだ。
出来れば私たちも加勢したいが…

「千鶴姉ぇ! 私は行くよっ!」

「待ちなさい梓!」

私は梓を制止する。

「なんでだよ!? 耕一が危ないんだぜ!?」

「私達が出ていっても耕一さんの足手まといにしかならないのよ…
 あなただって今の二人のやりとりを見たでしょ?」

「だからって!」

梓が制止を振り切って飛び出る。

「もう!」

こうなってはもうどうしようもなく、私も後に続いて飛び出る。

―黒覆面の男を目指して


…梓!?…

 俺は覆面の男から視線を逸らし、梓の声が聞こえてきた方向を見た。
そして少し離れた所からこちらに向かって駆けてくる従妹の姿を確認した。

「危ない梓っ! 離れていろぉぉぉ!」

 俺は精一杯叫んだ。
しかし黒覆面の方は梓を気にした風もなく

「馬鹿め」

 そう言い放ち、その刀を振り上げ俺に突進してきた。
完全に梓の方に気を取られていた俺はその刀を避けることが出来ない。
黒覆面の刀が俺の左肩に直撃する。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 直撃した左肩に凄まじい衝撃が走る。
俺は斬りかかってきた奴に対して右の爪を振り下ろす。
しかしそれよりも先に、奴は俺から距離を取って離れていた。
そして刀を構え直す。

「ほう、この衝刀【デュルゼル】の直撃を喰らってもまだ倒れぬか。」

 心なしか楽しそうに奴が言う。
まだ左肩に衝撃が走っている。

…もう刀は離れているのに…

 どうやらあの刀は斬ることを目的ろしたものでは無いようだ。
少なくとも左手が体から離れるような事態にはなっていない。
しかし受けたダメージは尋常なものでは無いようだ。
これで左手はもう使えそうにない。

「耕一……」

途中で足を止めた梓が心配そうにこちらを見ている。

「梓! 俺は大丈夫だから後ろに下がっていろ!
 千鶴さん、梓を!」

「はい!」

千鶴さんに梓を頼んで、目標を黒覆面の男に戻す。

「どうした、攻められてばかりではないか?」

息すら切らせずに黒覆面が言う。

「そのような戦い方では…死ぬぞ。」

俺は、戦慄した。


第三章「暴風」に続く


−−+++−−
なんとか三話目まで漕ぎ着けました(^^;
とにかくまだ話自体が決まってない(ぉので
これからどんな方向に流れていくか作者にも分かりません(笑)

あとは感想です〜
>まてつやさん
>保科組の智子さん
保科組長に全く違和感が無いところ凄いですね(笑)
理不尽、不条理とまさに暴風ヤクザ(ぉ
しかも策士で悪女と来たらもう(ぉぉ
個人的には本編とギャップの激しい岡田が好きです(笑)

>紫炎さん
>−究極超人マルチ・第2話夏休みであーーーる−
ぐぁぁぁぁ!やられました!
実は昔このネタで書こうと思ったんですが、見事につまんなかったので没に(^^;
というか詳しくは私のHN参照でし(笑)
しかし凄いキャスティングです(^^;
英二さんが入ってるというのがとってもステキです。
拷転号が拷転キングに変形するところなんかは是非見たいかも(^^;
というかやはりマルチはご飯を食べるんでしょうか…?

>くまさん
>外典・箱入り矢島(冷凍人間現る)
ビキニパンツを履いた冷凍マッチョを箱詰め作業とは随分と剛気なあかりですね(笑)
しかし箱が届いたとき中身が完全に冷たくなってたら(ぉ
後始末が非常に大変でしょう(ぉぉ
しかし矢島君大人気ですね(笑)
>志保ちゃんニュースはこうして作られる
「口出し」って単語がそこはかとなく専門用語っぽいところが良いです(笑)

>どぶねずみさん
>わるいマルチ
素晴らしいひねくれっぷりです(笑)
生まれた時から既にグレているとは、非常に将来が楽しみなマルチですねぇ(ぉ

>久々野 彰さん
>『Good Night』
いやぁ、梓はやっぱ良いですねぇ(個人的に梓好き(^^;)
個人的にはもっと耕一と梓をらぶらぶらぶこめもーどに放り込んで、
行くところまで行かせたいような気もしますが(笑)
乙女チックな梓というのはかなり私的に好きです(^^;
>あとがき
てっきり私は弥生さんはオメガの人かと思ってしまいました(笑)
えーと、「最後に」ってことはもしかして久々野さんはこれでSS書くのをやめてしまうんでしょうか?

>たろすけさん
>さすが『鬼の血』
オ、オキシジェント…
さすが千鶴さんの料理…南極条約で禁じられているだけはありますな(ぉ
奴を使いこなせるのはガトーだけということですか(謎)
あと、つるぺたと貧乳の違いを思い知らされた次第です(笑)

http://www.08.alphatec.or.jp/~kouhei/index.html