由綺のある一日 投稿者: Joe
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*  このSSは「WHITE ALBUM」の由綺シナリオ制覇を記念して創りました。 *
*  なお、ネタばれ等はほとんど無いと思いますので安心して        *
*  お読みください。(笑)                        *
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       由綺のある一日

                    Written by Joe

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5:00

…pipipipipipi…pipipipipipi…カチ

「…う〜ん…」
目をこすりながら、時計を見る。
《いつもの時間ね。》

「ん〜ん!」
体を起こして、軽くのび。
ベッドから抜け出て、カーテンを開ける。

再びベッドの方へ目を向ける。

「冬弥くん、おはよう。」
枕元の上にある写真立てに向かってあいさつ。
「今日もがんばろうね、冬弥くん。」

そのままシャワールームへ。
眠い体にお湯が心地よい。
《すがすがしい気持ちになれるこの瞬間が好き。》

ノブをひねり、お湯を止める。
ドアに掛けてあったバスタオルを胸に巻いて部屋へ戻る。
気がつくと、写真立てがこちらを向いていた。
「きゃっ!」
小走りで枕元まで行って、写真立てを伏せる。
「冬弥くんのH…。」
《恥ずかしい…。》
頬に手を当ててみる。
《熱くなってる。》
恥ずかしい気持ちを静めながら、バスタオルで体を拭く。
下着をつけ、ベッドに座って髪を拭く。

時計に目を移すと、すでに5時30分を回っていた。
「いけない、急がないと弥生さんが来ちゃう。」
ベッドから立ち上がり、クローゼットの引き出しを開けて、
セーターとスカートを取り出す。
「このスカートだと少し寒いかな?」
膝下まで裾が来る少し厚手のスカート。
《前に冬弥くんと買い物に行ったとき、買ったんだっけ。》


「ねえ見て。これなんかどう?」
「うん。いいんじゃないか。なんか似合いそう。」
「ほんとう?じゃあこれにしようかな。
 ね、冬弥くん。今度はこのスカート着てくるね。
 だから、次のお休みはまた一緒に遊ぼう。」
「ああ。そのときは電話してくれ。」
「うん!」


…ピンポーン…
と突然、チャイムが鳴った。

「おはようございます、弥生です。由綺さん、迎えに来ました。」
インターホンから弥生さんの声が聞こえた。

「あ、は〜い。今行きま〜す。」
慌ててスカートに足を通し、セーターを着る。
ソックスを履き、オーバーを出して、クローゼットのドアを閉める。
化粧台の前に置いてあるいつものバックを持って玄関へ行く。
靴を履いて玄関のドアを開けると、弥生さんがすぐ目の前に居た。
「おはようございます、由綺さん。」
「あ、おはようございます、弥生さん。」
「準備はよろしいですか?」
「あ、はい。」
「それでは行きましょう。」
弥生さんは前を歩いていく。
《いつものことだけど、弥生さんってすごいなぁ。》
《私もがんばらないと。》


7:00

TV局に着く。
《今日一日のお仕事が始まる。》
軽く深呼吸。
スタッフ専用の出入り口から中に入る。
「おはようございます。」
廊下ですれ違う人にあいさつ。
ADらしい人を見かける。
《今日は冬弥くんに逢えるかな。》

弥生さんが「森川 由綺様 控室」と書かれているドアを開ける。
弥生さんに続いて部屋に入る。
《今日もよろしくね。》
お部屋に心の中であいさつ。
「由綺さん、朝食へ行きましょう。」
「はい。」

朝食は、TV局の喫茶店。
トーストとハムエッグ、紅茶。
いつもと同じ。
弥生さんは、トーストとスープ、スクランブルエッグにコーヒー。
弥生さんもいつもと同じ。

「由綺ちゃん、弥生さん、おはよう。隣、いいかな?」
振り向くと緒方さん。
「はい。」
緒方さんは、朝食は取らないみたい。
いつもコーヒーだけ。

「今日は撮影だけ?」
緒方さんが聞いてきた。
「いえ、取材が入っています。」
答えたのは弥生さん。
「何の?」
緒方さんが聞く。
「月刊アイドルです。」
弥生さんが答える。
「ふ〜ん。内容は?」
緒方さんが聞く。
「発売される新曲についてのインタビューだそうです。」
弥生さんが答える。
「なるほど。で、由綺ちゃん、明日のオフ空いてる?」
「えっ?」
「明日のオフは空いてるって聞いたの。」
「えっ?…えっ?」
緒方さんが笑って見ている。
「あの…わたし…オフは…。」
「冗談だよ。わかってるって。彼と遊びに行くんだろ。」
「えっ…はい!」
元気よく答える。
「はっはっは、由綺ちゃんらしいよ。」
「…。」
《恥ずかしい…。》
うつむいちゃった。
「英二さん、あまりふざけないでください。」
「わかってるよ、弥生さん。じゃあ、仕事があるんで失礼するよ。」
緒方さんは席を立って出ていった。
弥生さんを見る。
弥生さんは何事も無かった様に食事を続けていた。


8:00

スタジオ入り。
《今日は新曲のプロモーションビデオ撮影…、ちゃんとできるかなぁ。》
「大丈夫ですよ、今までの練習通りにやれば。」
「弥生さん…。はい、がんばります。」
弥生さんは笑顔で送り出してくれた。
ADが何人か仕事をしている。
《冬弥くん、居ないかな?》
見渡してみたけど、居ないみたい。

「由綺ちゃ〜ん、スタンバイお願いしま〜す。」
「は〜い。」
返事をして、椅子から立ち上がる。
「がんばって。」
弥生さんの励まし。
「はい。」
返事をして、ステージの上へ。
ライトがまぶしい。
いつものステージ。
いつものスタッフ。
正面を見ると、ボックスのガラス越しに緒方さんが手を振って励ましてくれる。
《思いっきり歌おう、冬弥くんに届く様に。》
イントロが流れ始める。


12:00

「以上でカメリハ終了。15分休憩のあと、テイク1始めま〜す。」
緒方さんの声がスタジオへ流れる。

いよいよこれからが本番。
《のど乾いちゃった。》
スタジオ外の自動販売機へ向かう。

「由綺」
聞き覚えのある声。
「…冬弥くん。」
《冬弥くんに逢えた。冬弥くんが来てくれた。》
自然に笑顔になる。
「由綺、今日は新曲の撮影なんだって?」
「うん。冬弥くんは今日どこのスタジオ?」
「理奈ちゃんのところ。彼女の方はまだ準備中だけど。」
「そう。」
《それじゃ時間無いわね。》
ちょっと残念。
「でも、まだ時間あるな。」
「え? なら、わたしの撮影見ててくれる?」
「でも、今日は由綺のスタッフじゃないし、新曲の撮影じゃ入れてくれないだろ。」
「弥生さんに頼んでみる。」
「でも…。」
「お願い。冬弥くんに見てて欲しいの。」
「…わかったよ。由綺の歌声聞かせてもらうよ。」
「うん!」
《冬弥くんに聞いてもらえる。》
そう思うだけでさっきまでの不安はどこかへ行っちゃった。


12:15

「テイク1、始めま〜す。」
緒方さんの声。
「由綺ちゃ〜ん、ステージに上がって。」
「は〜い。じゃあ行って来るね、冬弥くん。」
「ああ、がんばれ。」
「うん、がんばるっ!」
ステージへ向かう。

ライトがまぶしい。
いつものステージ。
でもさっきと違う。
《そう、冬弥くんが見ていてくれるから。》
冬弥くんの居る場所を見る。
手を振ってくれてる。
イントロが流れ始める。
《冬弥くん、見ていて!》


「OK。由綺ちゃん、最高の出来だったよ。撮影終了。」
緒方さんの声。
「ありがとうございました!」
頭を下げて、大きくお返事。
「由綺ちゃん、よかったよ。おつかれさま。」
スタッフの人が声をかけてくれる。
「ありがとうございました。」
小走りで椅子のあるところへ向かう。
「冬弥くん、どうだった?」
「うん、よかったよ。すごいな、由綺。」
「ううん、冬弥くんが居てくれたから思いっきり歌えたんだよ。」
「由綺の実力だよ。」
「ありがとう。」
《うれしい。冬弥くんにほめられて。》
「由綺さん、次の仕事が待っています。行きましょう。」
弥生さんが言う。
「…はい。冬弥くん、ごめんね。もう行かないといけないの…。」
「いいって、仕事なんだし。がんばれ。」
「うん、がんばる。」
「じゃあ、自分の仕事に戻るから。」
「うん。」
冬弥くんが歩いていく。
《がんばろう、応援してくれる冬弥くんの為にも。》


14:00

雑誌の取材。
今朝収録した新曲のこと。
発売は2週間先。
いつも思うけど、何か不思議。
自分の歌った曲がCDとして店頭に並んでいるのを見ると。
まるでわたしの分身がいるみたい。

「…由綺ちゃん、今回の新曲についてだけど、どう?」
「はい、とっても気に入ってます。」
「そう、春先に似合いそうな曲だよね。」
「はい。」
「今回の作詞は由綺ちゃん自身だとか。」
「はい。緒方さんに進められて。」
「何かモチーフはある?」
「はい、自分の高校生時代を歌詞にしています。」
「そう。歌詞を見るとその情景が浮かぶようだね。恋愛とかした?」
「はい。」
《今も恋愛中です。》
これは言わない。

「…どうもありがとうございました。これからもがんばってね。」
「はい、ありがとうございます。」
「由綺さん、お疲れさま。次の移動は…。」
弥生さんは手帳を開く。
「由綺さん、TV局へ戻ります。TV番組の収録がありますので。」
「はい、弥生さん。」
《TV局へ戻る…。冬弥くんまだ居るかな。》


16:00

再び、TV局へ。
今朝と同じ入り口から入る。
「由綺さん、私は打ち合わせに行って来ますので、
 先に控え室へ行っていてください。」
「はい。」

「森川 由綺様 控室」と書いてある部屋に入る。
《今朝とは違うお部屋みたい。》
バックを置いて、鏡の前に座る。
鏡にわたしの顔が写っている。
《今朝は冬弥くんに逢えたけど、2度目は無いわよね。》
「逢いたいな、冬弥くんに…。」
言ってわたしは首を振る。
《何言ってるの、今朝逢ったばかりじゃない。だめよ、由綺。しっかりしなきゃ。》
控室のドアが開き、弥生さんが入ってきた。
「由綺さん、しばらくここで待機してくださいとのことでした。」
「わかりました。」
わたしの出番はまだ先みたい。
部屋が静かになる。
時々、廊下を行き過ぎる人の足音や会話が聞こえる。
《理奈ちゃん、まだ居るかな。》
「弥生さん。」
「何ですか?」
「理奈ちゃん、まだ撮影していました?」
「まだ居ました。若干時間が押しているようです。」
「そう…、あの、弥生さん…。」
「かまいませんよ。でも長居はしないでください。」
「はい。弥生さん、ありがとう。」
ドアを開けて撮影しているスタジオへ向かう。
《あ、どこのスタジオで撮影しているのか聞かなかった。》
すると、前からTV局の人。
《あの人に聞いてみよう。》
「すみません、理奈ちゃんの撮影スタジオはどこでしょうか?」
「え、あ、由綺ちゃん。理奈ちゃんはCスタジオですよ。」
「ありがとうございます。」
お礼をして、Cスタジオへ。

Cスタジオの入り口前。
「ON AIR」の表示は消えていた。
「…失礼します。」
言いながら、ドアを開けて中を見る。
スタッフが忙しそうに動いていた。
《撮影、終わったのかな?》
中に入って理奈ちゃんを捜したけど、どこにも居なかった。
《冬弥くんも居ないみたい。》
「あれ、由綺ちゃん、どうしたの?」
スタッフの人が話しかけてきた。
「理奈ちゃん、居ますか?」
「理奈ちゃんなら、自販機の前に居たよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
わたしはCスタジオを後にした。

「理奈ちゃん。」
自動販売機の前に居た理奈ちゃんに声をかける。
「由綺ちゃん。」
理奈ちゃんが微笑んで迎えてくれた。
「理奈ちゃん、撮影の方はもう終わったの?」
「ううん、もう少しかかりそう。兄さんが納得しないのよ。」
「緒方さんが?」
「そう。わたしの振りがどうの、照明の位置がどうのって、もう大変。
 スタッフもいい迷惑よ。」
「でも、それだけ真剣ってことなんでしょ、緒方さん。」
「まあね、でもスタッフは大変よ。その度に修正しなくちゃいけないんだから。」
「冬弥くん、大丈夫かな?」
ちょっと心配になる。
「冬弥くん? もう居ないと思うよ。」
と、理奈ちゃん。
「え?」
「このあと、エコースでバイトだって。ほんと、彼って働き者よね。」
《もう帰っちゃったの。…ちょっと残念。》
「残念そうね、由綺ちゃん。顔に出てる。」
理奈ちゃんはわたしを見て微笑んでいる。
「…うん。あ、でも今朝逢ってるし、用があるわけでも無いし…。」
「でも寂しいんでしょ?」
さらに聞く理奈ちゃんの顔は笑っていた。
「もう、理奈ちゃんったら。」
「でも、本当、彼って由綺ちゃんにお似合いね。わたしも冬弥くんみたいな
 彼氏が欲しいって思っちゃう。」
「理奈ちゃんにもできるわよ、きっと。」
「できるといいなぁ、わたしにも。」
「その時は応援するね。」
「相手が冬弥くんでも?」
「それはだめ。」
「ふふ、冗談よ。」
「もう、理奈ちゃん!」
「あはは、じゃあわたし、撮影あるから。」
「うん、またね、理奈ちゃん。」
振り向いて手を振ってくれる理奈ちゃん。
《理奈ちゃんって、ちょっといじわる。でもお話しできたし、楽しかった。》
「わたしも戻らないと。」


17:00

TVの撮影が始まる。
歌番組は好きだけど、見るのと出演するのは大違い。
いつも緊張しちゃう。
前に冬弥くんに言われたっけ。
『入場の際に転けるなよ。』
あの時は『演出よ』なんて言い訳したけど、本当は緊張してるの。
でも、歌い始めたら、もう平気。
歌うのが大好きだから。
歌っていれば辛いことなんて忘れちゃう。


19:00

「はい、リハーサル終了。10分後に収録を始めます。」
ディレクターさんの声。
いよいよ撮影。
《がんばって歌おう。わたしを見てくれているみんなのために。》
「由綺さん、がんばってね。」
弥生さんが声をかけてくれる。
「はい。」


20:00

「撮影終了。みなさんお疲れさまでした。」
ディレクターさんの声。
「お疲れさまでした。」
一緒にあいさつ。
小走りで弥生さんのところへ。
「由綺さん、お疲れさまでした。食事へ行きましょう。
 エコースでいいですか?」
「はい。」
《冬弥くんに逢える。弥生さんありがとう。》


20:10

…カラン…カラン
ドアを開けるとカウベルがお出迎え。
「いらっしゃいませ。」
聞き慣れた声。
《冬弥くんが居る。》
足早にカウンター前へ。
「こんばんわ、冬弥くん。ご飯食べに来たよ。」
「由綺、お疲れさま。仕事はもう終わったの?」
「ううん、まだラジオのお仕事が残ってる。」
「大変だな、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。冬弥くんの方こそ大丈夫?
 TV局の後にここでバイトなんて。」
「由綺ほど大変じゃないから大丈夫だよ。」
「席、よろしいでしょうか?」
弥生さんが話しかける。
「はい、どうぞ。」
「由綺さん、急がないと遅れます。」
「…弥生さん。ごめんね、冬弥くん。」
「いいって。注文は?」
「うん、いつものセット。」
「了解。弥生さんは?」
「由綺さんと同じものを。」
「かしこまりました。」
《よかった。冬弥くん、元気そうで。》

帰り際。
「冬弥くん、明日は何か用事ある?」
「明日?何もないけど。」
「わたし、明日オフなの。一緒に遊ぼう。」
「俺はいいけど、由綺は休んでなくていいのか?」
「いいの。冬弥くんと一緒に居る方が楽しいし、冬弥くんと一緒に居れば疲れなんか
 どこかへ行っちゃうから。」
「わかったよ。明日はうんと遊ぼう。」
「うん。」
「由綺さん、行きますよ。」
「あ、はい。冬弥くん、お仕事が終わったら電話するね。」
「ああ、待ってる。」
「それじゃ、さよなら。」
冬弥くんは手を振ってくれてる。
《明日は冬弥くんと一緒にデート。うれしいな。》


21:00

ラジオのスタジオ。
今月から、わたしのパーソナリティで始まったラジオ番組。
お手紙がいっぱい来て、好評みたい。
高校生の頃は、よく聞いていたっけ。
リクエスト葉書もよく出したし。
でも、まさかわたしがパーソナリティをするなんて、思ってもみなかった。

〜〜
「お手紙が来ています。ペンネーム『Joe』さんから。
 『由綺ちゃん、こんばんわ』
 こんばんわ。
 『2週間後に、由綺ちゃんのニューシングルが発売になりますね。
  予約もしましたし、すごく楽しみにしています。
  また、今年は全国コンサートツアーも行うと聞きました。
  絶対行きたいと思います。
  リクエストは「WHITE ALBUM」をお願いします。
  それでは、元気でがんばってください。』
 と言うお手紙をいただきました。
 そうなんです。今年は全国ツアーを行います。
 全国8会場で行いますので、是非見に来てください。
 それでは、Joeさんのリクエストで「WHITE ALBUM」聞いてください。」
〜〜
「そろそろ、お別れの時間となってしまいました。
 来週もまた聞いてください。
 お相手は森川由綺でした。それでは、また。」

「お疲れさまでした、由綺ちゃん。
 来週もよろしくね。」
ディレクターさんの声。
「はい、お疲れさまでした。」
「由綺さん、お疲れさま。」
弥生さんが声をかけてくれる。
「はい。」
「今日のお仕事はこれで終わりです。」
「お疲れさまでした、弥生さん。」
会釈して、笑顔。
《明日は冬弥くんとデート。》
そう思うだけで、顔がほころんじゃう。
「それでは、帰りましょうか。」
「はい。」


23:00

わたしのマンションの前。
弥生さんの車から降りる。
モーターの音がして、ウインドウが下がる。
「由綺さん、明日はオフです。ゆっくり休んでください。」
「はい、わかりました。」
「それでは、お休みなさい。」
「お休みなさい、弥生さん。」
ウインドウが締まり、車が動き出す。
それを見送るわたし。

鍵を開けて、部屋のドアを開ける。
「ただいま。」
返事はない。
誰もいない部屋。
ルームライトを点けて、化粧台の前にバックを置く。
いつもは寂しい部屋も、今日は違って見える。
《冬弥くんに電話しなきゃ。》
受話器を持って、ダイヤルする。
番号は指が覚えてる。

「…もしもし。」
「もしもし、由綺です。こんばんわ、冬弥くん。」
「こんばんわ、仕事終わったみたいだね。」
「うん。それで、明日のことだけど、行きたいところがあるの。」
「いいよ、由綺が行きたいところに行ってあげる。」
「ほんと? 前に一緒に行ったアクセサリーのお店。」
「了解。じゃあ、駅前に10:00でいいかな?」
「うん、わかった。冬弥くん、思いっきり遊ぼうね。」
「ああ、思いっきり遊ぼう。だから今日はゆっくり寝ろよ。明日あるんだし。」
「うん、もう寝る。」
「じゃあ、また明日。由綺、お休み。」
「うん。お休み、冬弥くん。」

シャワーを浴びて、パジャマに着替える。
ルームライトを消して、ベッドに横になる。
枕元の写真立てを取って、キス。
《大好き、冬弥くん。お休みなさい。》

了

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こん○○は、初めまして。
Joeと言います。

まずは、SSの説明を。

このSSは、由綺シナリオ終了後の由綺ちゃんのある一日を由綺ちゃん自身の
視点から書いたものです。
従って、登場人物も冬弥、由綺、緒方英二、理奈兄妹、篠塚弥生の5人しか
出てきません。
#エキストラでスタッフが数人出てきますが。

また自分が感じた由綺ちゃんの心を表現しましたので、
他の人には違和感を感じるかも知れませんが、その点はご容赦ください。

読んでいただければ、わかるとは思いますが、はっきり言って
ちょっとか弱い女の子になってしまいました。>由綺ちゃん
でも、好きな人と結ばれたらこのくらいは弱くなってしまうのでは
ないでしょうか。
#自分の願望かも知れませんが…。^_^;


このSS、書こうと思ってからできあがるまで期間は自己最短でした。
(都合2日)
#内容が短いといってしまえばその通りですが…。^_^;
そのくらい、「WA」は感動しました。
ここまで話の中に引き込まれて、主人公の気持ちに同化できたゲームは
初めてです。
今のところ、由綺、理奈、美咲シナリオしか見ていませんが、由綺エンディングでは、
思いっきり泣いてしまいました。
#今でも思い出すと目頭が熱くなります。

まだいくつか書きたい小説のネタがあるので、がんばって書いてみたいと
思います。

最後に、この作品を読んでの、率直な感想をお聞かせいただければ幸いです。