似非・東鳩 投稿者:Hi-wait
 皆さん、今晩は。
 案内役の岡田です。
 平行世界というものをご存じでしょうか?
 そこにあるのは、もう一つの世界。
 そこにいるのは、もう一つの自分。
 えーっと……
 今回は、そんなもう一つの世界を覗いてみましょう……
 え?
「えーっと」が余計?
 知らないわよ、そんなこと。


<CASE1 セバスチャン>

 坂下が止めを刺そうと、葵ちゃんに接近する!
「葵ちゃ……」
「かあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!」
 ずだんっ!
「……へ?」
 オレと綾香は、思わず顔を見合わせた。
 俺達の目の前にいるのは……
「ちょっと、セバス。あなた、出番間違えてるわよ」
「これは失礼いたしました、綾香様」
 突如現れた謎の爺さんは、一礼するとどこへともなく去っていった。
 坂下? 誰それ。


<CASE2 佐藤 雅史>

 デモ版の撮影当日。
「すいませーん、遅れました! ……あれ?」
 誰もいなかった。
 もう終わったよ、撮影。


<CASE3 神岸 あかり>

「ひーろーゆーきーちゃーん! 朝だよー!」
 あかりの奴が呼んでいる。
「ひーろーゆーきーちゃーん!」
 まだ呼んでいる。
「起きないと、遅刻しちゃうよ!」
 うるさいなぁ。
 ま、いいか。寝よ寝よ。
 オチ? ねーよ、ンなもの。


<CASE4 来栖川 芹香>

 そして、それは降ってきた。
「……あめ?」
 こくん。
「いや、確かにあめだけど……」
 飴だった。
 痛かった。


<CASE5 長岡 志保>

「ふっふっふ……ニュースよ! スクープよ!」
 志保が走ってくる。
 あ。こけた。
「ふっふっふ……スクープだな?」
 オレが言い返してやると、志保は黙って走り去った。
 その後、あいつの姿を見た者はいない……


<CASE6 宮内 レミィ>

「Hey! ヒロユキ!」
 どんっ……ぐしゃ。
 うつぶせに倒れたまま、浩之は動かない。
 なんだか、赤いものが流れている。
「……失敗は成功の母ネ!」
 それでいいのか、おい?


<CASE7 保科 智子>

「ええい、この! 何でとれへんねんや!」
 げしげし……ばきっ。
 あ。壊れた。
 おいおい。なんか中のぬいぐるみ取ってるぞ。
 あ。行っちまった。
 ……見なかったことにしよう。


<CASE8 姫川 琴音>

 浩之の手が、フェンスを離れた。
「藤田さんっ!」
 その時。
「くしゅんっ」
 琴音が、くしゃみをした。
 今は春の始め。
 ここは屋上。
 しかも夕方。
 寒い。
 かくして。
 一人の男子高校生が、投身自殺をした。
「オレってこんな役ばっかりかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 幽霊の声が聞こえる。
 ほっとこう。


<CASE9 松原 葵>

 目の前にはサンドバック。
 葵は、軽く呼吸を整え、構えを取った。
「はぁっ!」
 ずだんっ……すかっ。
 夢だった。
 次行こう。


<CASE10 HMX−12 マルチ>

 よーし、ここはこっそり後ろから……
「わっ!」
 くらっ……
「お、おい、マルチ?」
 オレはあわてて、マルチを抱き起こした。
 ま、まさか……
 ん?
 マルチの中から、時計の音が聞こえる。
 と、いきなりマルチが立ち上がった。
「ただいま、自爆装置がセットされました。爆発まで、後5秒」
 ……え?
「5、4、3、2、1」
 ……その日、町中に一つのクレーターが出来た。


<CASE11 雛山 理緒>

「あの……藤田くん」
「よお、ウラシナ」
「……え?」
「何かあったのか、ウラシナ」
「……藤田くん?」
「冗談はさておき、どうした、理緒ちゃん?」
 冗談だったのか。
「あ、あのね。弟の誕生日プレゼントを買いに行くの」
「じゃあ、オレも一緒に行くよ」
 (以下略)(ぉぃ)
「はい、誕生日のプレゼント」
「うわー、バトルッチかよー。こんなのもう、時代遅れだぜ、ねーちゃん」
 ……合掌。


 ……いかかでしたか? ……って、何よこれ!
 誰がこんないい加減なもの考えたの!
 ……あ。
 と、とにかく、えーと、そのー……
 もう! 終わり! おしまい!
 ……え? やり直せ? 最初から?
 ちょっと! いい加減にしてよ!

                    <ENDLESS>