誰も登校していない早朝。 校舎の一角、生徒会室に、一組の男女がいた。 男は、正面に座る女を見据え、ただ黙っている。 女は、そんな男を悠然と見やり、口を開いた。 「実は、あなたにやってもらいたいことがあるのよ」 「ほう……それは、こんな朝早くに呼び出してまでの頼み事なのか、生徒会長殿?」 冷ややかに、男が応じる。 「まあね」 生徒会長と呼ばれた女……太田香奈子は、手に持っていた資料を見やり、 「近頃、生徒会の意向を無視する生徒が多すぎるわ。あなたにいぶり出してもらいたいの」 「僕が了承する確信でもあるのか?」 「あるわ。何せ、あなたは『正義の使徒』ですものね?」 「ふん……」 男……Hi-waitは、ゆっくりと席を立ち、 「多少引っかかるところはあるが……いいだろう。やってやろう」 そういって、生徒会室を出ていこうとする。 「方法、ターゲットその他は、全てあなたに任せるわ。ただし、あくまでも行動は 極秘裏に。いいわね?」 彼の背中から、香奈子の声が追ってくる。 「もとよりそのつもりだ」 そういい残し、Hi-waitは生徒会室を後にした。 「これでいいわ……こちらとしても、そろそろ手を打っておかないと……」 後には、目を閉じて独り言を呟く香奈子だけが残された。 Hi-waitは、困っていた。 あくまで極秘裏に。 それが、生徒会長からの指令だ。 となれば、顔を見られてはまずい。 (まずは、正体の隠蔽工作だな……) そうして、彼は第二購買部に足を向けた。 「あれ? Hi-waitさん、珍しいですね」 彼を迎えたのは、beakerの挨拶だった。 「ちょっとものがいるんでな」 それだけ答え、物色を始める。 「何を探してるんですか?」 「……いや、いい」 それだけ言って、Hi-waitは第二購買部を後にした。 「……?」 beakerが『ある物』がなくなり、その代わりに1000円が置いてあることに気 付くのは、もうしばらく後である。 所変わって、ここは科学部。 「ふっふっふ……今日もいい天気だ! さてジン君、今日の改造メニューは?」 「はいっ! ついに登場! ゼ□システムです!」 「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 いつも見慣れた光景が繰り広げられていた。 「じたばたするな、空君! さあっ! 改造準備だ!」 「はいっ!」 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 と、その時! 「そこまでだ! ショ○カーの怪人ども!」 実験室の入口の方から、誰何の声がする。 「誰がショッ○ーだ!」 突っ込みつつジンが振り向いた先には…… 「……Hi-wait君、何をやっているんだ?」 びしぃっ! と中に指を突きつけたHi-waitがいた。 サングラスを掛けている。 「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁう!」 Hi-waitが叫ぶ。 「僕は、Hi-waitではない! そう、僕の名は!」 びしぃっ!(決めポーズを取った音) 「正義の戦士、仮面ヤーミィだ!」 ……どこが仮面なんだ? そう思ったが、ジンも柳川も、口には出さなかった。 なんだか疲れたからだ。 しかし、Hi-wait……じゃなかった仮面ヤーミィは、そのまま柳川を指さして続ける。 「嫌がる一般生徒に改造を強要し、自らの欲望を満たそうとするとは、それ即ち 悪! 覚悟っ!」 そのまま懐に手を入れる。 「ヤーミィキィィィィィィィィィィック!」 声と共に投げられた棒手裏剣が、空の額に突き刺さった。 「……ってどこがキックだ!」 「僕がキックと言えばそれはキックだ!」 「なるほどっ!」 納得するな。 「おのれ……人質を盾にするとは、なんと卑怯な……!」 仮面ヤーミィが歯ぎしりする。 「おいおい……」 「仕方あるまい! 勝負はお預けだ、○ョッカーども!」 そのまま実験室を出ていくと、 「サイクロン!」 下水ワニに乗って走り去っていった。 「………………」 「………………」 残されたジンと柳川は、顔を見合わせる。 「……ところでジン君」 「はい?」 「空君は、見てのとおり手術に耐える状態じゃないな?」 「はあ……そうかもしれませんね」 「そこでだ! このゼ□システム、君につけようと思う!」 「……へ?」 「喜びたまえっ!」 「勘弁してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 実験室に、ジンの叫びがこだました。 ま、それは後の話。(ってゆーか誰か書いてくれないかなぁ……) 場面変わって、ここは家庭科室。 コンロの前には、柏木千鶴が陣取っていた。 「………………………………!!」 その後ろに、シュリンプ状態にふん縛られた柏木耕一もいる。 「さあ、耕一さん。今日は、わたしの手料理を、心ゆくまで楽しんでもらいますか らね(はあと)」 ゆっくりと鍋の中身をかき混ぜながら、千鶴が嬉しそうに言う。 耕一の顔は、それとは対照的にひきつりまくっている。 勘弁してくれ、と言いたげな顔だ。 だが、何も言わない。いや、言えない。 猿ぐつわをかまされているから。 「あ、そうだ。お皿はどこかしら?」 そういいながら千鶴が鍋の前を離れたとき、天井から何かの粉が落ちてきた。 それは、寸分違わず鍋の中に入っていく。 しばらくして、千鶴は何も持たずに戻ってきた。 皿が見つからなかったらしい。 鍋を持って、耕一の猿ぐつわを解く。 「さあ、耕一さん、召し上がれ☆」 鍋の中身を、そのまま耕一の口に流し込んだ。 ……………… 「hg;rhfr:;rmfw@あうtrtぬmtr;えqえおwjqうr;q!?」 耕一が、文字通り飛び上がる。 「どうです、耕一さん?」 千鶴のその問いに、耕一はぜへーぜへー言いながら、 「ち……千鶴さん……俺……幸せだよ……」 なぞと言っている。 「ほ……本当ですかっ?」 千鶴の表情が、歓喜に変わる。 だから、千鶴は、自分の後ろに、一枚の紙が落ちてきたのを知らなかった。 それには、こう書かれてあった。 『仮面ヤーミィ参上』 仮面ヤーミィは、上からその光景を見て、呟いた。 その手には、怪しげな袋が握られている。 「これも一つの正義だ……」 (注:<セイカツハンテンダケ> 口にした者の生活価値観を逆転させる、毒キノコ。つまり、これを口にする と、不幸のどん底にいる者が幸福の絶頂を味わえるという、画期的な毒キノ コである。あくまで逆転するのは価値観のみで、生活環境そのものが変わる わけでは断じてない。Hi-waitが、正義のためと称して栽培しているらし い) 仮面ヤーミィの猛威はまだまだ続いた。 曰く。逃走中の生徒A(「オレは主役だ!」)に止めを刺した。 曰く。矢島と高橋をサイクロンの燃料(エサ)にしようとした。 曰く。その他いろいろ。(ぉぃ) そんな中、香奈子は一人、生徒会室で頭を抱えていた。 「あの……馬鹿……」 そーゆーものだ。(火○功調) <完> 次回予告!(あるのか?) 今日も正義のために戦う仮面ヤーミィ! しかし、その前に、新たなる改造人間、ミグが現れた!(そりゃ戦闘機の名前だ) 仮面ヤーミィに、ショッ○ーの魔の手が迫る! 戦え! 仮面ヤーミィ!(大嘘)http://www.geocities.co.jp/Playtown/8067/index.html